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外 その頃、他所では

元パーティの現況・近況もたまに描写する必要があるらしいな。

――ハアマの町――



「うぎゃあぁぁ!」

 かつてガイが在籍していたパーティのリーダー・戦士タリンの悲鳴が火の粉とともに空へあがる。

 町は燃えていた。


 タリンの乗っていたケイオス・ウォリアー、使い古されたBソードアーミーは敵の矢を食らって膝をついた。行動不能に陥り、背中が開いて、脱出装置が作動する。

 座っていたシートごと外に射出されたタリンは、しかしシートにかけられた浮遊呪文【レビテイト】の効果でゆっくりと街路へ落ちる事ができた。

 転がる座席のシートベルトをなんとか外し、慌てて物陰へ駆け込むタリン。

 数秒遅れて機体に魔王軍の砲撃が着弾。爆発を起こして吹き飛んだ。


 崩れた壁の陰で震えるタリンへ、パーティメンバーの三人が駆け寄る。

 女魔術師のララが燃える町を見渡した。

「防衛隊は全滅みたい。少しは残っているかもだけど、ここまでやられたらもう意味ない」


 タリンは泣き叫んだ。

「なんで急にこんなメタクソにやられてんだよぉ!」

「まともに奇襲を受けたからだと思う」

 平然と言うララ。


 タリンは泣き叫んだ。

「なんで敵の大軍に誰も気づかねぇんだよぉ!」

「警戒とか哨戒とかが甘々だったみたい」

 平然と言うララ。


 タリンは泣き叫んだ。

「なんでその役目する奴が足りねーんだよぉ!」

「軽視してたからじゃないかな。私達みたいに」

「うす」

 平然と言うララ、横で頷くウスラ。


 四人揃って思い出したのは、パーティから追い出されたガイの事である。


 タリンは泣き叫んだ。

「でもシロウ様だって戦闘力の低いクラスは要らないって言ったしよぉ! 俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」

「ガイ一人がいても、この状況が変わったかどうかはわからないけど。シロウ様の事だから、同じように戦闘員以外は軽視して追い出してたのかもね」

 平然と言うララ。

「そのシロウ様は……どこ?」

 恐る恐る訊く女神官のリリに、ウスラが呟いた。

「あそこっす」



 指さしたその先、領主の館。

 そこで一際大きな剣を持ったBソードアーミーが、炎を浴びて火を吹いていた。

 巨体で圧し掛かるように襲うその相手は、ずんぐりした体と手足を持つ赤い甲虫の怪獣だった。

『うぎゃあぁぁ!』

 断末魔が外部へのスピーカー越しに響く。もちろんそれは聖勇士(パラディン)・シロウの声だ。



 タリンは泣き叫んだ。

「あっさり死ぬなー!」

 リリも泣き叫んだ。

「アッー! 三日前の夜、せっかく私のオトコになって貰ったのにー!」

 ララは特に動じず呟いた。

「相手は遊び相手の一人止まりだとしか思ってないよ。絶対」

 ウスラが頷いた。

「うす」


 そんな四人の後ろで瓦礫に蹴躓(けつまず)く音がした。

 びくりと震えてから振り向く四人。


 衣服がボロ雑巾になったカゲウス子爵だった。

「こんな突然圧倒的にやられたらどうしようもないのう……」

 そう呟くと彼は力尽きて倒れ、動かなくなる。


 怪獣が咆哮し、魔王軍のケイオス・ウォリアーが町のあちこちを景気よく破壊し続けた。


 タリンは泣き叫んだ。

「うおーくっそーざけんなー!」

 リリも泣き叫んだ。

「あんあんアァー! もうダメー! 逝くぅ!」

 ララは特に動じず呟いた。

「うん。じゃあ逃げようか」

 ウスラが頷いた。

「うす」


 奇麗に揃ってくるりと振り向き、一糸乱れぬ呼吸で駆けだす四人。

 この日、ハアマの町は燃え尽きた。

 それでもこの四人はなんだかんだで生き残ったのだから、まだ運は尽きていないのだろう。

 なおこの話の主人公はパーティを追い出されてから色々と手に入れた奴なのだが、もし元のパーティにいても山へ素材探しには出かけていたし、そこで妖精のイムを拾っていたであろう。

 だから追い出しさえしなければ、主人公が得た物をパーティで共有はできていた筈なのだ。

 そうなるともうちょっと違った展開になっていたと思うが……まぁ物語はこのまま進む。

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