七話
「ずっと同じ景色も飽きてきたな・・・」
町を出て3日。始めこそは景色を眺めながら馬車での移動を楽しんでいた。しかし、同じような風景ばかりで3日で飽きてしまった。
「(モンスターも盗賊も出ないし・・・平和だな・・・)」
この3日、特に問題なく順調に進んでいる。そのため、俺としては少し物足りない気分だ。
「(まあ、問題が起きないことはいい事なのだが・・・)」
俺は、暇なので目を閉じイメージトレーニングをすることにした。
「(そう言えば、オリジナル魔法作成につて検討するか。結局、取得するだけして、今まで試したことがない。)」
オリジナル魔法はイメージから実践に使えそうな魔法を作ることと言い、俺の場合は聖属性のみなので、この聖属性の魔法からオリジナル魔法を作らなければならない。
「(聖属性って基本、回復と強化などのサポート系なんだよな。一応、攻撃魔法は存在するが、他の属性魔法より少ない。取りあえず、ホーリーランスから何か実戦で出来そうなことはないか・・・)」
ホーリーランスは光の槍を自分の周りに作り、相手に向かって放つ技だ。
「(技自体は単純だ。まあ、形状を剣に変えて放つことも可能だろう。ん?待てよ。何も相手に向かって放たなくてもいいのでは?)」
俺はホーリーランスを自分の周りに固定する形で形状を槍ではなく鎖にして相手に伸ばす感じで相手の動きを封じることはできないのか考えた。その苦労もあり
オリジナル魔法:ホーリーチェーン
自分の周りもしくは、目の入る範囲に複数の鎖(最大6個)を展開し、相手の動きを封じることが可能。但し、相手のスキル、能力によっては数秒程度で破壊される。
「(一応、オリジナル魔法が完成か。後は実戦で試してみる必要があるが、今は人が多い、実験はまた今度だな。)」
俺は出来る限り魔法は他人に見せなと決めているため、オリジナル魔法の練習は、別の機会にすることにした。
「よし、今日はこの辺りで野営しよう。」
馬車を運営している商会の責任者がそう言った。
「(もう、そんな時間か。)」
どうやらオリジナル魔法作成に結構時間をかけてしまったようだ。
「(本当はもっと時間がかかったりするのかもしれないが、イメージするのは俺は得意だからな・・・)」
俺はそんなことを思いながら馬車を降りた。その後、見張りは商会の護衛と、冒険者がしてくれるそうだ。俺は、今はただの客なので見張りはしなくていいので適当な場所を見つけテントを立てた。
「こんなものか・・・」
俺がテントを立てている間に冒険者の方は守り石を設置していた。そして、食事に関しては二通りあり、一つは商会が用意した食事を貰うか(有料)、もう一つは自分で用意するかである。
「当然、俺は自分で用意する派だな。」
テントなど人目につくものは袋にいれて持ち歩いている。そして、食料などはアイテムボックスに入れてある。アイテムボックスの中なら時間が経過することはないため、いつも買ったばかりの物が出せる。
「さて、俺はテントに入って、食事にでもしようか。」
俺はそのままテントに入った。正直食事は不要だが、一応食べている。
「あんちゃん、居るかい?」
外から声が聞こえた。
「ん?」
俺は、食べ終わった料理をアイテムボックスに入れ外に出る。
「何か用?」
俺は外にいた冒険者に声をかける。
「いや、たまには皆で一緒に食べないかって思ってな。ほら、この2日ずっとテントで一人で食べてたろ。」
どうやら、この冒険者は一緒に食べようと誘ってきたようだ。
「気持ちだけもらっておくよ。それにもう食べてしまった。」
「そうなのか?早いな。」
「ああ、それにこの3日野営以外ずっと座っていたから疲れてるんだ。」
「そうか、悪かった。ゆっくり休んでくれ。」
それだけ言って冒険者は離れて行った。それを見送った俺は再びテントの中に戻った。
「正直、たった20日しか一緒にいないのに、仲良くなる必要もないだろう。それに、正直あまり人とは関わりたくない。」
料理に睡眠薬や麻痺薬を入れられたらたまったもんじゃない。アイリスには一服、盛られたしからな。それ以来、俺は基本自分で用意した物、または露店で買った物しか食べないことにした。勿論食べる前に鑑定している。
「とは言っても、固定の効果で睡眠も麻痺も関係ないが・・・」
それでも、異世界の一番最初の料理が睡眠薬入りだったからトラウマになるわ。
「・・・とはいえ、明日くらいは顔を出すか。」
流石にずっと一人というわけにもいかないだろう。俺自身は別に一人でもいいが、またさっきの冒険者が来るかもしれない。俺はそう思い寝ようと思った、そのとき
「盗賊だ!」
冒険者の声が響いた。
「イベントか!」
イベント発生と思ったが、ここは現実。一瞬で興奮が冷める。
「・・・とりあえず、こっそり見守ろう・・・」
俺はテントの中から冒険者たちの戦いを見守ることにした。