五話
「ヒール。はい、これで大丈夫でしょう。」
「ありがとう。レイちゃん。」
負傷していた男がそう言った。
「(ちゃん付けとか鳥肌立つんだけど・・・)」
俺はそんなことを思いながら、今日も回復魔法で負傷者を手当て居ていた。ここ数日で、負傷者が増えだした。
「(まさか、帝国軍が予想以上に多かったとはね・・・)」
当初、予想されていた数より多かったようで、後方に配置していた冒険者や軍が前線に向かう事になってしまい、こうして負傷者が多くなってしまった。
「(とは言っても、俺の方が多くないか・・・)」
実際、回復魔法が使えるのが5人と少ないのが原因だろう。簡単な擦り傷くらいなら衛生兵でも問題ないが、重傷者などがこちらに運ばれてくる。さらに回復魔法でも、高度な魔法が使えるのが俺だけなので、必然的に俺の方に流れてくる。とは言っても・・・
「(他の人の所は比較的少なくないか・・・)」
実際、5人のうち4人は男だからだろうか・・・
「(まあ、俺も男より女の方がいいけれど・・・)」
男装して参加すればよかったかなと少し後悔した。
「はい、次の人!」
俺はエイを連れて次の人の元に向かう。実際、魔力が尽きない俺が他の人より多いのは仕方ない事なのだろう。本来は回復魔法も魔力を消費するので、中には魔力切れの人も出てくる。そのときは俺が人一倍頑張らなければいけない。
「(本当に、負傷者が多くなってきたな・・・)」
俺はそう思った。
その夜
「ご主人様。お疲れ様です。」
エイが水を持ってきてくれた。
「ああ、ありがとう。エイもお疲れ様。」
「いえ、私は大したことはしていません。」
「そんなことないさ、エイがいなければ助けられなかった人も出てきていただろう。」
実際、エイが負傷者の人数と状態をみてくれたおかげでスムーズに運ぶことが出来た。これには感謝している。
「主様。エイ。お疲れ様。」
そこにアリサがやってきた。
「アリサもお疲れ。」
俺はアリサに手を上げた。
「今日はもういいのか?」
「はい、本日の巡回は終わりましたので今日は自由です。」
「そうか。」
俺はそう言って二人を連れて、食事をすることにした。と言っても、軍から支給されるものではなくエイの手作り料理だけどね。勿論、他の冒険者たちが来ないようテントの中で食べることにしている。本来、テントの中で料理を作るのはどうかと思うが外だと寄ってくる人がいるからな。
「(大きめのテントを買っていてよかった。)」
匂いが外に出ないよう、俺が結果を張ってある。
「魔法って便利だな・・・」
「何か言いましたか?」
「いや、何でもないよ。」
俺はエイにそう言って食事をした。
翌日
「ようやく見つけたぞ!」
俺は声がした方を見ると、いつかのお偉いさんがいた。
「・・・何ですか?」
「相変わらず口の利き方がなっていないな。これだから冒険者は!」
相変わらず偉そうな態度で話してくる。
「もう一度だけ言ってやる。配下になれ!」
「お断りします。」
「貴様!!」
お偉いさんが剣に手をかける。それに合わせて周りの兵も剣に手をかける。
「・・・剣を抜けばこちらも対応しますよ。」
俺だけじゃなくエイ、そして、今日は非番のアリサまでもが剣に手をかけた。
「貴様。私に剣を向けることがどういうことかわかっているのか!」
「・・・またか。そうやって権力や暴力で他人を言いなりにしようとするとは。本当に救いようがないな。」
本当に権力を持つ人はまともな人がいないのかって思ってしまう。
「(いっそうのこと殺すか!)」
アリサとエイを巻き込んでしまう事を考え、二人を見るが。
「(二人とも今にも剣を抜きそうだな。)」
どうやら要らない心配だったようだ。
「(最悪二人を連れてどこかでひっそり暮らすのもありかもな・・・)」
その場合は自分の身体を取り戻す目的が叶えられないが、二人を危険にさらすくらいなら、このままでもいいと思えてしまった。
「そこまでだ!」
俺たちの間にブラッドが割って入ってきた。




