五話
「海!海!楽しみです。」
エイが気分よく言う。
「私も海は見たことがありません。」
アリサも見たこと無いようだ。
「そうなのか?まあ、俺もこの世界の海は見たことないな。」
現在、俺たちは王都を出て、馬車の中にいる。エピロ共和国に入る際、身分証が無いため、アリサとエイはお金を取られるのかと思ったが、アリサが言うには
「奴隷は主様の所有物となりますので、お金はかかりませんが、問題を起こすと、主様の責任になってしまいます。」
そうアリサに言われ
「冒険者登録は可能ですが、一定のランクまでしか上がれません。また、奴隷の指名依頼なども出来ませんので、実際はDランクが限界ですね。」
「なるほど、まあ俺も指名依頼とか嫌だから、おそらくDランク以上は目指さないと思う。」
「そうですか。わかりました。」
アリサがそう言った。
「そうだアリサ、今日から俺たちに稽古をつけてくれないか?」
「以前、おっしゃってたことですね。構いませんよ。」
「ありがとう。じゃあ休憩中などに少し頼むよ。」
「かしこ参りました。」
「私も強くなりたいです。」
「ええ、構いませんよ。エイ。」
こうして俺たちは休憩中にアリサに稽古をつけてもらう事にした。稽古と言っても簡単な動作や構えなどになるが・・・さすがに昼休憩ではこれくらいしかできない。
「(本格的な稽古は夜かな・・・)」
俺はそう思った。
「今日はここまでにしましょう。」
アリサがそう言った。
「ああ、ありがとうござました。」
「ありがとうございました。」
俺に習ってエイも頭を下げる。あれからしばらく経ち、今日もアリサに剣の練習をしてもらっていた。アリサは奴隷だが剣の先生という事で、練習では彼女が上だ。
「主様。私に礼など不要ですよ。」
アリサにそう言われるが、そう言うわけにもいかない。
「すまないが、これに関しては譲れない。」
「はあ、主様の変なところで頑固ですね。」
アリサが頭に手を当てる。
「しかし、随分とよくなりました。初めての時は動きが単純で読みやすかったですが、今は少しずつですが改善していっています。」
アリサにそう言われた。確かに初めの方はスピード任せで軌道も読みやすく刀の振りも単純だった気がする。今では少しだけだが自分でもマシになったような気がした。エイの方も短剣術が3になっていていい感じに仕上がっている。
そんなある日
「なあ、ちょっといいか?」
馬車の警護をしていた冒険者から声をかけられる。
「何?」
俺は冒険者にそう言った。
「いや、そっちのエルフの女性。すごい剣裁きだと思ってな。お前たち毎日稽古つけてもらっているだろ?」
「まあ、そうだね。」
「なあ、お金払うから俺たちにも稽古つけてもらえないだろうか?」
冒険者がそう言った。
「アリサはどう?」
「私は別に構いませんが。」
「そう、無理をしない範囲であればアリサに任せるよ。」
俺はそう言った。
「ありがとうございます。主様からの許しも出ましたので、私でよければお付き合いします。」
そうアリサが言った。その日から冒険者たちもアリサの稽古(有料)に加わった。一応、護衛と言う形なので、簡単な手ほどきくらいになるけれど・・・
「(まあ、それでも多少はいい経験になれたらいいかもな・・・)」
俺はそう思い冒険者たちの練習を見ていた。
「そう言えば、あんたレイって言うんだよな?」
訓練が終わった後、冒険者に声をかけられた。
「ああ、そうだけど。」
「そうか、なんとなく話と一致していたからそう思ったよ。」
「話?」
冒険者が言うには、レイという冒険者が剣の腕がすごく、何と聖属性の魔法が使えるとギルドで噂になっているようだ。
「君を勧誘したいパーティーが結構いるみたいだよ。」
「そうなのか?」
「ああ、実は俺たちもって思っていたけど、彼女たちを見ているとその気が無くなったよ。」
アリサたちがいる今、パーティーに誘おうとは思わなくなったようだ。
「それに、アリサさんの方が俺たちより強いしね。」
「ああ・・・」
「そう言えば彼女、奴隷のようだけど・・・」
「そのあたりは聞かないでくれると助かるよ。」
「そうだな、他人の情報を聞こうとするのはマナー違反だよな。」
冒険者がそう言った。その後、しばらく話をして、俺たちは休むことにした。




