閑話
「姫様?」
アリシアが言った。
「アリシア。今はジンと言いなさい。」
私はアリシアにそう言った。
「失礼しました。ジン様。」
アリシアが謝罪し言い直す。今、私は彼との戦闘を終え、城に戻ろうとしていた。
「しかし、ジン様。少し辛そうなお顔をしていますな。」
騎士団長のロン・リバイスが言う。騎士団長のロン・リバイス。長年ローベル国に仕えてくれている騎士で、現在40歳を超えているにも関わらず、その実力は未だに健在。
「・・・大丈夫ですよ。」
「そのように見えませんがな。」
そう言ったのは宮廷魔術師長のルイ・ブライド。彼もまた、ロイと同じく長年ローベル国に仕えてくれている宮廷魔術師長。歳は60を超えたあたりと聞いている。
「はあ、そうですね。わかっていましたが、堪えてしまいました。」
私は正直に話した。
「しかし、ジン様。この選択は・・・」
「ええ、わかっています。」
アリシアに言われ私は答えた。今、この国は帝国と戦争中。多くの兵を失い。国土の4分の1を奪われてしまった。それだけでなく、兄上たちも戦場に赴き帰らぬ人となってしまった。この状況を変えるには圧倒的な力が必要だった。そんなとき、ドラゴンを一撃で倒せる彼に出会った。初め私は、これは神が遣わせた奇跡だと思った。できればこの国に引き込みたい。自分を犠牲にしてでも。そのため私は彼に積極的にアピールするも、彼の反応はイマイチだった。正直、女としてはそれなりに自信はあったのですが、彼は私が好みではなかったのかもしれません。
「(もし、他国に行ってしまうかもしれない。)」
そう思った私は彼を篭絡するのを辞め、彼の力を自分の物にすることにした。幸い私の固有スキル。魂の交換を持っていた。このスキルは対象の人物の魂と自分の魂を交換することが出来るというスキル。但し、一度限りのスキルでもある為、使うのをためらっていた。しかし、ドラゴンを一撃で倒せる人間が果たして、この世界に何人いるだろうか?もしかしたら、いない可能性もある。
「(なら、考えるまでもありませんね。)」
そう考えた私は彼に近づき唇を合わせた。スキルの使用には対象との接触が必要なためにこのような行動をとった。
「貴方の身体。いただきます。」
そして私は魂の交換を発動した。
「・・・」
「姫様?」
アリシアが聞いてきた。
「ええ、うまくいきました。」
この日、英雄ジンの誕生した瞬間だった。私は彼の身体を奪う事に成功した。
「アリシア、申し訳ありませんが、彼をお願いできますか?」
今、彼は魂の交換の効果で気を失っている状態だ。いつ目が覚めるか分からない。なので、せめてもの罪滅ぼしに安全な状態にしておかないといけない。
「わかりました。」
そう言ってアリシアは彼のもとに向かい。いろいろと作業を始めた。
「少し、この場を離れます。この身体の力を確認してきます。」
「姫様。危険です。私も一緒に・・・」
アリシアがそう言いうも
「不要です。貴女は彼の方をお願いします。それにまだこの身体の力加減が出来ない状態です。この状態だと貴女まで巻き込んでしまいます。」
私はそれだけ言って、離れた。
「さて、少し身体を動かしてみますか。」
私はそう思って身体を動かすも
「これは、予想以上ですね。」
私の想像以上にこの身体は出鱈目な力を有していた。少し拳を突き出すだけで突風が吹く。地面を蹴ると軽くクレータが出来る。
「これは制御に時間がかかりそうですね・・・」
私はそう思う。
「姫様?」
声が聞こえたので振り返ったら、そこには目を丸くしたアリシアがいた。
「・・・どうやら力の制御には時間がかかるようです。そちらの方はどうですか?」
「はっ。こちらの方はすでに終わりました。」
アリシアの話では、守り石よりも上のランクである結界石を使用したとのこと。この石は一定時間(ランクによっては数日ほど)効果があり、魔物などを引き寄せない効果がある。
「今回使用した結界石は隠蔽効果もありましたね。」
ランクによっては様々な効果を付与することが出来る。
「はい、また衣服や金銭。武器なども用意しておきました。しかし、よかったのですか?」
アリシアが聞いてきた。
「構いません。これくらいの事はしないと。それにこの身体の対価としては安すぎですね。」
「宝剣を渡しても、ですか?」
「ええ。」
正直、宝剣はこの国の国宝でもあるが、この身体に比べれば微々たるものである。
「それとアリシア。これより私の事はジンと呼びなさい。」
「ジンですか?」
「ええ、アイリスは今日死にました。これより、私・・・いえ、僕はジンとしていきます。」
私はアリシアにそう言った。
これにて一章は終わりです。現在二章に向け作品を作っていますので、しばらく休載します。よろしくお願いします。




