表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

彼女の可愛さが天才的すぎる件。

作者: Nakk

 

「倉田、どうすればいい?」

「何がです?」


 いつものお昼休み。社内食堂での部署の先輩である大河原(おおかわら)先輩のその問いかけに、私はつい反射的にそう聞いてしまって、すぐ後悔した。

 この後に先輩が言うのは決まっている。


「俺の彼女......可愛すぎる......」


 先輩は自分で頼んだ食事には手をつけず、真剣な表情で私にそう伝えてきた。


 またか。今日もまた先輩はあの彼女の話をするのか。


 この先輩、彼女を溺愛している。可愛くて仕方ないらしい。

 少し分かる気もする。先輩が語る彼女は、聞いている私も可愛いと思う。


 先輩は今日もまた彼女の可愛さを語るために口を開いた。


「昨日の事だ。いつもどおり、俺は風呂に入った」

「はあ......」

「風呂から上がると、彼女、どうしたと思う?」

「さあ?」

「ドアを開けたら、背中を向けて座っていたんだ! 声を掛けても反応してくれない!」

「はあ」

「俺が少しの間離れてて、寂しくなって拗ねてたんだよ!」


 ダンッと先輩がテーブルを腕で叩きつけた。


「か、可愛すぎるだろ......ちょっとの間、離れてただけなんだぞ? それで拗ねるとか」


 悶えているみたいだ。「しかも」と先輩は言葉を続けた。


「その後がやばかったんだ」

「はあ」

「俺は彼女に謝った。土下座して謝った」

「はあ?」

「だってそうだろ? 俺が離れたせいで寂しい想いをさせたんだぞ。罪悪感で一杯だった」

「さようで」

「そうしたら彼女、どうしたと思う?」

「さあ?」

「許してくれて、俺の膝の上に座ったんだ! さらに上目遣いで見つめてきたんだよ!!」


 先輩はその時のことを思い出しているのか、打ち震えているようだ。

 私もついその様を想像して、それは確かに可愛いかもしれないと思ってしまった。


「か、可愛すぎるだろぉよぉ! 天才! あの可愛さ、天才!」


 どんどん先輩の口調がヒートアップしてきた。


「もうやばい! 全部の仕草が可愛いんだ!」

「はあ」

「さらにコテンと頭を預けてきて、無言で見つめてきたんだぞ!? 縋るような目をして! もう俺無理! たまんないだろ!」


 分かる。確かにそんなことされたら可愛いよね。打ち震えるよね。

 私は箸を止めて、ジトっと先輩を見つめる。


 でもさ、先輩。


「先輩......()()()()()()()()が可愛いのは分かりますけど、いい加減、人間の女性に興味持ったらどうです?」


 さすがに毎日聞いていると、飽きます、先輩。


 けど先輩がきょとんとした顔を向けてきて、これは無理だなって今日も思った。


お読み下さりありがとうございます。

最近、猫の動画を見て、その可愛さにやられている作者です。

空行は1000文字に含まれるか分かりませんが、書いて良かったとは思っています。1000文字にまとめるのは難しいと知れたので、いい勉強になりました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] かわいいです。 [気になる点] え、なんでこの作品、見逃されてるの……? [一言] 姿が目に浮かぶような、かわいらしい文章でした^^
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ