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第二十一話 告白が甘すぎる

校舎の中に入る。


僕が、はぁはぁと息を切らせながら階段を登っていると、教室の扉の前に見覚えのある人物が立っていた。


菅野さんだった。


菅野さんは、僕を見るなり、驚いたように目を見開く。


そりゃそうだ。だって、今の僕は汗だくだし、髪はボサボサで、制服もヨレヨレになってる。


菅野さんに声を掛けようとすると、菅野さんは人差し指を口元にあてた。

そして、菅野さんの視線が教室の中に動く。

菅野さんは僕に近づくと、ぽんと肩を叩き、帰って行った。


僕は、教室の入り口に立つ。


放課後、教室には誰も居なかった。

いや、一人。机に突っ伏しているストロベリーブロンドが見えた。


「すぅ……すぅ……。」


吹井田さんが、教室で寝てた。

吹井田さんは、多分、誰かに何かを伝えようとしていたのだろうピンクの便せんが枕になっている。あの紙使えないだろうな、ビショビショだ。


教室とはいえ、寝てるのは不用心だ。

ただでさえ、モテる吹井田さんだ。あの兜だって狙っている。

あわよくばキスでもと考える男子がいたらどうする? あの兜とか。


僕? 僕は身の程を弁えたクソ雑魚モブ雑魚男子だ。大丈夫、しない。


僕に今出来ることは、吹井田さんの幸せを願いながら、起こしてあげるだけだ。


「あの、吹井田さん? 吹井田さん?」

「んにゃ? 池木くん~?」

「うん、同じクラスの池木です。あの、起きた方がいいんじゃない?」


寝顔が死ぬほどかわいい。見ながら、ごはん三倍はいける。

だが、僕はクソ雑魚モブ雑魚オブクソ雑魚モブ雑魚男子、そんなことをする勇気もごはんもない。

ただ、モブの役割を果たし起こすだけだ。


「起きて、吹井田さん。」

「ごめんね、ごめんね、池木くん」


何を言っているんだ? なんで吹井田さんが謝るんだ。

夢の中で僕とイケメンが隣り合ってるのだろうか。

イケメンが吹井田さんに大好きって言うのを僕は間近見させられているのか?

かわいそう! 夢の中の僕! でも、


と、僕がうめき声をあげていると、急にパチッと吹井田さんの目が開く。


「あ、あ、あ……池木くん?」

「お、はようございます。吹井田さん。」

「んぎゃあああああ! ち、違う! 違うの! あのね、あのね、」

「いや、大丈夫。僕は大丈夫だから」


理解している勘違いはしていないと必死に伝えようとしているんだけど、吹井田さんは聞こえていないようで必死に何かを誤魔化そうとバタバタしてる。かわいい。


「違うの! その、わたし!」

「吹井田さん、聞いてください」


僕がそういうと、吹井田さんは「はい……」と直ぐに大人しくなってくれた。


「僕は一日一回甘い言葉を摂取しないと死んじゃう病気です」

「え……?」

「しかも、最近どんどん病気が酷くなってきたんです」

「え、え……?」

「どんどんどんどん声が聞きたくなって、どんどんどんどん甘いのを欲しがって」

「……」

「でも、やっと、気付いたんです。僕は、このままだと死んでしまう」

「……」

「そして、この病を治す方法を」

「……」

「吹井田さん、いや……いちご」

「……な、なに、しょうと?」

「好きです」


吹井田さんは、ぶるりと震え、息を荒くしながら、少し潤んだ瞳で僕を見ていた。

そして、吹井田さんは、僕の腕にしがみ付いて、


「好き」


僕を見て、


「好きです」


涙を溢しながら


「好きなの、池木くんが、しょうとが、好きなの、好き……好き、ほんとに、好き」


こんなに言われたら、僕はいつになったらこの甘さを全部お返しすることが出来るんだろうか。

僕は彼女の頭を撫でながら困り果てていたら、ふと思い浮かんでつい言ってしまった。


「あの、これは飽くまで治療行為であって、告白とカウントしない方がいいのかな?」


ぽかりと殴られた。


「じゃあ、本当に好きになったりしてないの?」

「してます(美声)」


吹井田さんを見つめ、はっきりと答える。

すると、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。かわいい。


まあ、さっきのは、あくまで吹井田さんを安心させる為のものだ。


こんな可愛い人を好きにならないことがあろうか、いや、ない(反語)


本当は、好きだと言いたい気持ちでいっぱいだった。


僕は、彼女に何度救われたか分からない。


彼女が居なければ、僕は……。

吹井田さんはじっと僕を見つめる。綺麗な瞳だ。

吸い込まれてしまいそうなほどに。


「僕、池木翔斗は、死ぬまで、いや、死んでも君を、吹井田いちごを愛し続ける事を誓います」


恥ずかしくて死にそうだ。

僕は今、人生で一番緊張しているかもしれない。

だって、目の前には、ずっと思い描いてきた、大好きな女の子がいる。


「……私、吹井田いちごは、死ぬまで、いや、死んでも君を、池木翔斗君を愛し続けることを誓います。」


甘い匂いと一緒に近づいた彼女の唇がそう言うと、ぶるぶると震え始め、教室のカーテンに飛び込み、ぐるぐるとクレープみたいに包まれた。いちごクレープだ。


「あの、吹井田さん?」

「どう!? 摂取できた! 十分!?」

「え? ああ、うん。十分……じゃないかも」

「ええ!?」


驚いた吹井田さんが、いちごクレープの中から出てきた。

そこに僕がとびついて、ふたりでくるくるクレープの中に入った。


クレープの中は周りの音が小さくて、別世界のようで。心臓の音も聞こえてきそうで。


「毎日甘い言葉を聞かないとたくさん死んじゃうかも」


僕がそう言うと、吹井田さんは笑った。

僕もつられて笑う。


そうして、僕と吹井田さんの『甘い言葉を一日一回摂取しなければ死んでしまう病』の治療法が発見された。


 こうして僕の声で甘い言葉を言って欲しくて病にかかった(振りをする)吹井田さんと、吹井田さんに甘い言葉を言ってほしくて病にかかった(振りをする)僕、池木翔斗の甘すぎる日々が始まり、


そして、甘すぎる日々はあっという間に過ぎ、


「ダメダメダメー! 翔斗の甘い台詞は私のものなんだから! みんなはリクエストなんかしちゃダメー!!」


いちごが相変わらずかわいい声で、叫んでいる。


クソ雑魚モブレジェンドこと、僕、池木翔斗は、無事病が完治したらしい吹井田いちごさんと付き合っている。


色々あった。死ぬほど甘い台詞を言わされたし、言ってもらった。


そして、今では学校の誰もが知るあまあまカップルとなっている。


ストロベリーブロンドの髪を振り乱し、こちらを向いていちごは口を開く。


「ねえ、翔斗! 言って! 僕の甘い言葉はいちご専用だよって!」


おげえええ!?


「え、今?」

「今、言わないと私死んじゃうかも!」


結論から言うと、いちごの『甘い言葉を一日一回摂取しなければ死んでしまう病』は悪化した。

事ある毎に僕は甘い言葉を言わされている。


依存症がすごい。


けれど、こんなかわいいいちごのお願いを断ることが出来ようか、いや、出来ない(反語)


「……僕の甘い言葉はいちご専用だよ」

「にゅへへへ~♪ わたしも~」


かわいい。


周りはいちごさんの甘い空気に砂糖吐いている。


そして、教室の隅で、


「や、やめてくれ! 脳が……脳がぁあああ! 吹井田さんんんんんん!」


あまりの甘さにメンタル全虫歯になり、脳破壊され、頭を押さえる兜の姿が。


「ねえ、翔斗」


毎日聞いても飽きることない、それどころか、どんどん聞きたくなる彼女の声。


「ん?」


耳元に近づき、しっかり伝わるように言ってくる。


「だいすき!」


甘い言葉を。


うん。


糖分の摂り過ぎも心臓には良くない、死んじゃうかも。


でも、こんなかわいい彼女にお願いされて断れる男がいようか、いや、いまい(反語)


僕はストロベリーブロンドの髪に負けないくらい甘い声の彼女を見ながら、そう思った。



完結しました! お読み下さった皆様、ありがとうございました!

数話だけ、おまけを書くかもしれませんが、ひたすらに甘々作品は書いていて楽しかったです!

よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


作者のお気に入り登録もしてもらえたら嬉しいです!


その他の連載作品もよろしくお願いいたします!

『クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~』https://ncode.syosetu.com/n6472hv/

『金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~』https://ncode.syosetu.com/n1900hw/


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