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第十九話 嫉妬が甘すぎる

「…………じー」


何故だろう、今日一日視線を感じる。しかも、刺すような視線だ。

相手は分かっている。吹井田さんだ。

吹井田さんが僕を睨んでいる。

僕、何かした?


昨日の帰り際に挨拶をした時は普通だった。

その後、僕が夜にメッセージを送った時の返事も別に怒っている様子は無かった。

なのに、何故こんなにも僕の方を見ているのだろうか。

しかし、考えてみても分からないものはわからない。

なので、僕は吹井田さんに聞いてみることにした。


「吹井田さん」

「なに?」


吹井田さんはぶっきらぼうに答える。

なんなんだ一体。


「えっと、なんか怒ってる?」

「べっつにぃー」


明らかに不機嫌だ。僕が戸惑っていると、吹井田さんはいきなり顔を近づけてきた。


「……ねぇ、池木君。今日もウチ来てくれる?」

「え、いや、ごめん無理なんだ。今日予定があって、だから、例のは放課後に……」

「ふーん、どんな予定?言えない予定?」

「え?」


なんか今日の吹井田さんはいつも違う取り調べの刑事みたいだ。

それに目がなんかすわってる。

怖いんだけど。


「いや、その、言えないっていうか、なんていうか……」

「へぇ、そうなんだぁ。ふぅーん」


彼女は腕を組みながらそう言った。


「じゃあ、お昼も忙しいのかな?」

「え?いや、お昼は……」

「いや、忙しいんでしょ。いいよいいよ、わたしなんかと過ごすよりもっと幸せな人がいるでしょ」

「いや! 吹井田さんと一緒がいいよ!」


声がデカくなってしまった。


「あ、あの、その、吹井田さんのお弁当食べたくて、その何も準備してないし、ね?」

「あ、あわわ、あの、そっか、そうだね、うん、ごめんね」


二人して真っ赤になってその時間は終わり、お昼休みも二人して無言で食べた。

放課後、吹井田さんと目が合うが、すぐにそっぽを向かれる。


どうやら、今日はアレなしらしい。


仕方ない。吹井田さんがそれいいなら。今日はなんだか機嫌悪そうだし。

ちょっと、残念だけど。仕方ない。


僕は小さく頭を下げて、教室を出て行く。


刺さるような視線を感じる。吹井田さんだよね。


ついてきている。確実に。

えっと、まあ、いっか。


僕は待ち合わせ場所に急ぐ。校門の前を見るともう来ていたみたいだ。


「おっそい! ちょこ何時間待ったと思ってるの」

「悪い悪い。っていうか、何時間も待ってたわけないだろ」


赤茶色のポニーテールを揺らしながら怒るちょこを宥めながら、僕は先を促す。

なんか、吹井田さんの視線がさらに鋭くなった気がする。


「ねえ、アレなに?」

「頼む。気にしないでくれ」


まあ、そのうち吹井田さんも分かってくれて帰ってくれるだろう。

……と、思っていた時期が僕にもありました。


「じー」


吹井田さん全然帰らないんだけど! ずっと僕達についてきてる。

怖いから、本当に。


「おい、早く行こうぜ」

「寄り道しないの?」

「今日はなし。さっさと本屋に行こう」


そして、僕達はちょっと早歩きで、駅前の大きい本屋に向かう。

あれ? 吹井田さんついてきてない。帰ったのか。


「さっきのひと、帰ったのかな?」

「みたいだな。よし、今の内に」


そして、僕達はそのまま本屋に入り二手に分かれる。


「じゃあ、頼んだ」

「貸し1ね。今度パフェ奢って」

「分かったよ」


僕はちょこと別れ、物色していると、突然背中をつつかれた。

振り返るとそこには吹井田さんがいた。


「なっ!? 吹井田さん、いつの間に」


僕が驚いていると、眉間に皺を寄せた彼女は僕の耳元で囁いた。


「……ねえ、あの子誰?」

「え?」


見ると吹井田さんがほっぺた膨らませている。

なんだこのかわいい生き物は……。

いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

恐らく吹井田さんは怒っている。だけど、僕には心当たりがない。

ない以上は説明するしかないか。


「え、と、妹、です」

「はえ?いもうと?」

「はい」


僕がそういうと吹井田さんは目をぱちくりさせながらこちらを見つめてきた。


「え、でも、似てない、よね?」

「ああ、僕は父親似、妹は母親似。池木緒瑚いけきちょこ。正真正銘僕の血のつながった妹」

「ええ……!?」


吹井田さんは顔を押さえて座り込む。


「ちょっと!吹井田さん、ここお店……!」


しかし、なんでまた吹井田さんは……。

もしかして、嫉妬? いやいや、まさか。いや、でも嫉妬してくれてるのではなかろうか。

もしそうだったとしたらとても嬉しいんだけど。

まあ、あまり期待はしないでおこう。


そんなことを思いながら、僕は吹井田さんに手を差し伸べる。

すると、吹井田さんはゆっくりと手を伸ばし、僕の手を取った。

僕はその手を握り返し、立ち上がるのを手伝うと、吹井田さんはそのまま僕に抱き着いて来た。そして、そのまま何故か頭をぐりぐりこすり付けられた。何故?


ふわっとストロベリーブロンドが揺れ、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。

僕が何もできずにいると吹井田さんは顔を真っ赤にして離れてしまった。


「ご、ごめんね。バランス崩して」


僕の理性が崩れそうなんだけど。

いや、違う。何も違わなくはないけど、違う。

今は、そんなことを考えてる場合じゃない。


僕は咄嗟にさっき思いついたアレを吹井田さんに提案する。

吹井田さんはキョロキョロと見回して、少し考えた後、小さくコクリとうなずいてくれた。

それを見て僕はほっとする。


「じゃ、お願いします」

「『なんであの子といる方が楽しそうなの?』」


嫉妬。これは、良くない。嫉妬させるなんて良くない。

でも、これは台詞だからイイよね。ああ、嫉妬してくれる恋人とかかわいいよね。

僕が夢見心地でいると、吹井田さんが不思議そうに首を傾げて、こちらを見つめていた。


はぁ、かわいすぎる……。


そして、何かを思いついたように耳打ちしてくる。


「え?」

「お願い」


吹井田さんのお願いに、僕は頷かざるをえない。

吹井田さんのかわいいお願いを僕如きが断ることが出来ようか、いや、出来ない(反語)


吹井田さんは、僕の服の裾を掴み、上目遣いで言う。


「『なんであの子といる方が楽しそうなの?』」


う。二回目でも耐性が出来ていない。僕は必死になって言葉を絞り出す。


「『君といる方が楽しいよ。世界で一番君の隣が楽しい』」


吹井田さんは幸せそうに笑う。

その笑顔は反則だと思う。


「えへへ、ならいい」

「よかったです(美声)」


ほんとうに、よかったです。嫉妬させるのはいくないけれど、よかったです。


「なにしてんの?」


その瞬間、背後からかけられる声、ちょこだ。

僕と吹井田さんは慌てて距離を取る。


「な、なんでもない」

「だれ?この女」


ちょこが詰めてくる。あれ? 刑事増えた?


「お、同じクラスの吹井田さん」

「あー、池木緒瑚いけきちょこです。よろしくオネガイシマス」

「……吹井田です」


……え?なんか雰囲気悪くないですか? この二人相性悪い感じ?


「私はお兄ちゃんの妹だよ?」

「……おにいちゃん」


お前、おにいちゃんなんて言った事ないじゃん!


「じゃあ、どうも、行こ。翔斗」

「……しょうと」


そうそう。ってなんか


「ちょこ?」

「何?」

「今、俺の名前強めに呼んだ?」

「呼んでない」

「え?」

「私のことも名前で強めに呼べば?」

「え?」

「早く」

「ちょこ、さん?」

「違う。もういい、帰るよ」


ちょこは不機嫌そうな顔をしながら僕の手を引いて歩き始めた。


一体どういうことなんだ。って、あれ?


吹井田さんは、手を振りながら、


「翔斗、ばいばーい!」


そう言った。


ええええええええええええええ!?


よ、呼捨て?! なんで今!?

いや、でも、もしかして、色んな考えが一番甘い考えを振り払おうとおそってくる。

吹井田さんはじっと僕の方を見ている。

甘い考えでいい、夢見てもいいじゃないか。


「い、いちご! ばいばい!」


吹井田さんは大きな目を更に大きく見開いて嬉しそうに頷いてくれた。かわいい。


「ねえ、彼女?」

「違う」

「ふーん、帰ろ、翔斗おにいちゃん」


その日は、なんかちょこがやけに絡んできた。

なんだ、コイツ……。もしかして、嫉妬かなと思って聞いたら殴られた。

嫉妬って……なんだろな。


次の日だった。


「おい! 池木! お前、本屋で吹井田さんのこと呼捨てで呼んでたらしいな! まさかとは思うけど付き合ってるわけじゃないよな!?」


兜がデカい声で聞いてきた。

クラスのみんなはこっちを見てる。


ほんと、嫉妬ってなんだろな。良くないな。うん。


お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


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