第1話-3
side:????
ツイてる。
今の俺には流れが来ている。
昨日で8人目を殺し、後2人殺す事で俺のギフトは進化する。
そんな時に弱そうな獲物をちょうど2人見つけた。
見つからないよう、笑いを堪えるのに苦労するぜ。
俺のギフト『死と平和の象徴』で出せる鳩の数は最大12。
飛行能力と射撃能力に加え、数もいるので当たりのギフトだ。
弱点としては、豆の威力と射程距離がそこそこ、命中精度と連射力がイマイチなくらいだ。
2羽は昨日の戦いで修復中で、2羽は常に俺の側に控えさせている。
つまり、残りの8羽で襲わせているのだが、十分だろう。
アイツらが二手に別れた時、どちらか1人を確実に仕留めるべきだったか?
……いや、あんな直ぐに死にそうな奴らを逃がすなんて勿体無さすぎる。
この世界で生き残るコツは、何よりも相手のギフトを見極める事だ。
相手の見た目に惑わされず、臆病なくらい慎重に動く。
だからこそ俺は生き抜いているし、次のステージまで後2歩の所まで来ている。
最初に鳩が撃った際、あいつらは『武装』も『守護者』も出さなかった。
この時点で2つは選択肢から外れる。
そして、いまだに反撃が無く、逃げようとしたが失敗に終わっている。
この事から、『魔法』と『強化』も選択肢から外しても良いだろう。
つまり、あいつらのギフトは『理』もしくは、戦闘系じゃ無いギフトだ。
リスクも無く狙える獲物だ、絶対に両方仕留めてやる。
だが、雑魚とはいえ、夜に4羽で1人を狙うのは難しかったのかもしれん。
1人を見失ってしまった。
どうする?
諦めて残りの1人を確実に殺すか?
いや、まだ遠くまで逃げきれてはいないはずだ。
そんな力があるなら、最初から逃げている。
残った方を人質にして呼びかけるか?
いや、俺の居場所がバレるし、仲間を気にするなら1人で逃げたりはしないだろう。
くそっ!
逃げる力も無い残った方は、3羽いれば十分だろう。
……いや、逃げたふりをして、数が減った所で仲間を救出に来るかもしれない。
ああ、くそっ!
何をどうするのが正解だ!?
美味しい獲物、ギフトの進化、2つの魅力的な誘惑に負け、普段は慎重な男が危険な賭けに出る。
男は健の方に2羽残し、残りの6羽に自分の側にいる1羽も加えた7羽で逃げた方を探させる。