第1話-2
【守護者】
名前の通り自分を護り、戦ってくれるものを召喚するギフトだ。
その特徴としては、差異はあれど、意思があり、召喚者から離れて行動も出来る。
守護者が傷を負っても、召喚者にはダメージは無い。
ただし、守護者の破損具合によっては修復に時間を要する為、一定時間召喚できなくなる。
召喚者自体は現実と変わらないスペックなので、隠れて守護者だけを戦わせる場合が多い。
今現在、健と浩市は鳩の守護者に襲われているが、そう遠くない位置に召喚者は隠れているはずだ。
2人は今、木を壁にして鳩の豆鉄砲を防いでいる。
銃弾並みの威力は無い様なので、木でも十分に盾として活躍してくれている。
「ひぃぃっ! ど、どうしましょ、このままじゃいずれ、殺られちゃいますよ!?」
「………1つ作戦を思いついた」
「な、なんですか!?」
「バカバカ撃ってるし、弾切れには期待できそうに無い。だが、アレにそこまで貫通力は無いようだ」
「そうですね、それで?」
「お前を盾にして進み、召喚者をぶっ殺す」
「鬼か!?」
可能不可能で言えば可能な作戦だが、人権を無視した鬼畜の所業だ。
「冗談だよ」
(いや、かなり本気だったろうが!)
「お前を誰かに殺させるつもりはねーよ」
(僕には分かる。この言葉は本当だ……浩市さん!)
吊り橋効果に近いものがあるのか、健は浩市の言葉に感動していた。
つい先ほどまで、自分を殺そうとしていた相手だという事は、忘れてしまったのだろうか。
「お前は、俺にとって大事な」
(浩市さん、会ったばかりの僕の事をそこまで!)
「大事な1点だからな。誰かにやるなんてもったいない」
「……浩市さん………」
健は、親以外から大事だと言われたのは生まれて初めてだったが、
ここまで言われて嬉しくない大事という言葉は、そうは無いだろう。
「そうだ! 守護者とはいえ、鳩なんだし、夜はトリ目で見えないのでは?」
「よし、試してみるか」
実際、頭の悪いAIでは無いので、鳩達は永遠に盾にされた木を撃っているだけではない。
隠れた2人を逃さぬように、包囲網を敷きつつあった。
2人はタイミングを合わせ、2手に別れて飛び出す。
しかし、守護者だからという訳では無く、夜に鳩の目が見えないという知識は間違っている。
鳩は昼行性だが、人並みには見えているのだ。
夜に飛ばないのは、夜行性の猛禽類等に襲われないようにする為だからである。
つまり、小さな獲物なら見失うかもしれないが、人サイズなら見失う事は無いだろう。
「チッ、おい、これ見えてるじゃねーか」
「ですね! どうしましょ!?」
「……お前、後で1回殺すからな」
「一回でも殺されたら死んじゃいます!!」
2人は何発か撃たれつつ、また木の陰に隠れる。
2手に別れた際、鳩側も2手に別れてくれたので、集中砲火を浴びずに済んだ。
もしも、どちらかに集中していたのなら、狙われた方は無事では済まなかっただろう。
「そうだ、お前の頭鳥の巣みたいなんだから、帰巣本能に語り掛けろ!!」
「あんた、ひとの天パを何だと思ってるんだ!?」
「お前、それ……天然だったのか……かわいそう」
「やかましいわっ! 同情するならストレートヘアーにしてくれ!!」
ちなみにだが、健の両親も、その親も天パだ。
つまり、健はハイブリッドでエリートな一流の天パである。
天パ具合で言えば、その辺の天パなど相手にもならない。
……まあ、戦闘においてはなんら関係ないので普通にピンチである。