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第1話



(なんとか殺されずに済んだけど、これからどうなるのだろう……) 


 健は、この亜空間に来てから、もう何度目になるのかも分からない後悔をしていた。

 『ウォッチ』から水の入ったペットボトルを取り出し、水分補給をする。

 散々逃げ回って(逃げきれていないが)喉がカラカラだったのだ。


「おい、お前その水どっから出した?」

「え? どこからって……普通にウォッチからですけど」


 浩市の質問の意図が分からず、健は困惑する。

 ゲーム参加者には、『ギフト』と『ウォッチ』の2つが与えられる。


 そのどちらも亜空間に移動した際、頭の中に情報を流し込まれる。

 だから誰に説明を受けるでもなく、自分のギフトとウォッチについて理解しているのだ。


 ウォッチは、腕時計の形をしているが、当然ただの腕時計ではない。

 現代社会では再現不可能な様々な機能が備わっている。


 ・水や食料、ナイフにロープなどが入っており、念じるだけで取り出せる

  (水と食料に関しては、深夜0時になると、自動的に1日分が補充される)

 ・登録した参加者と連絡しあえる機能

 ・地図

 ・ゲームマスターにメールできる(返信が来るとは限らない)

 

 他にもあるが、簡単に言ってしまえばスマフォに道具を仕舞える機能がついているようなものだ。


 健は、知らないはずが無いのだがと思いつつも、怖いのでウォッチについて説明する。


「便利だな」

「そうですけど、なんで知らないんですか?」

「……俺は、ゲームは説明書を読まずにプレイする派なんだ」

(どうしてだろう、嘘かどうか分からない)

「もしかして、まさかとは思うんですが、記憶喪失だったりします?」 

「は?そんなわけねーだろ、証拠でもあんのかよ?」

「えぇ、なんで直ぐにバレる嘘をつくんですか!?」


 健のギフトにより虚偽が判定され、浩市が記憶喪失だという事が分かる。

 名前は憶えている様なので、何も分からない訳では無さそうだ。

 

 これで兄妹について判定できなかった理由が分かった。

 本人が分かっていないのであれば、嘘か真実か判定しようがない。


「チッ、誰かに喋ったら殺すからな」

「いや、こんな場所に知り合いなんかいませんし、喋りはしませんけど」

「なら良いが」

「そういや、浩市さんのギフトは何なんですか?」

「……俺のギフトは使えねぇんだ」

「いやいや、僕のギフトより使えないギフトなんて無いでしょ」

「そういう意味じゃねーよ……まあ、気にすんな」

「えぇ………」


 気にはなるが、あまりしつこく聞いて怒らせるのも怖いので、諦める。

 余裕ができて来たので、あらためて周囲を見渡すと本当に現実と変わらない。


 亜空間と言っても、ここは現実世界をコピーした空間だ。

 大きな違いは、虫や動物なんかの他の生物が存在していない事。

 

「お、鳥がいるぞ、焼いて食うか」 

「ははは、この世界に動物はいませんよ」

「ほら、あれ」


 浩市が指差した先には、確かに1羽の鳩がいた。

 鳩が鳴き声をあげると、2羽、3羽と続々と集まってくる。


「あんだけいたら、腹一杯になりそうだな」

「鳩見てそんな感想抱く人初めてみましたよっ! あれ、誰かの守護者(ガーディアン)ですよ!?」

「……食えないのか」

「なんで、ちょっとへこんでるんですか!」


 浩市はウォッチの使い方まで忘れていたのだ。

 つまり、とてもお腹が空いていた。


「早く逃げましょう」

「たかが鳩だろ?」

「ただの鳩なわけないでしょ!?」


 鳩が鳴き声をあげると、何かが健の頬をかすめ飛んで行く。

 切れた頬から血が流れる。


「鳩の豆鉄砲だな」

「………」


 痛みと恐怖に、健は返事もできないのであった。


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