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プロローグ2


 1999年に空から恐怖の大王が来ると後世に残した〝ノストラダムスの大予言〟を知っているだろうか?

 2000年以降に生まれた者達からすれば、知らなくても何ら困らない情報だ。


 だが結果から言えば、恐怖の大王と呼ばれた者は宇宙から地球へと、誰にも知られず降り立っていた。

 『アンゴゥ』と『ルゥーモア』の2名の宇宙人は、見た目を合わせ、人類に紛れ込んでいたのだ。

 

 世界中を旅しながら各国の文化を学びつつ、目的を忘れるほどに地球を満喫していた。

 特に食文化と、彼らの星には存在しない芸術と文学に彼らは惹かれていた。


 しかし、彼らも本来は地球へ旅行に来たわけでは無い。

 2020年頃になると、上を騙し騙し誤魔化していたのにも限界を迎える。

 

 必要なら増援を送ると提案されるが、もしも増援が来てしまえば、彼らがサボっていた事がバレる。

 科学技術や特殊技術においては、比較にならない程に彼らの星が勝っているからだ。


 彼らは必死に考えた。

 どうすれば、サボって遊んでいた事がバレないか、仮に疑われても怒られずに済むかを。

 

 彼らは、机の上に雑に積まれた漫画を見て閃いた。

 どうせこの星の技術レベルを知れば、どうして時間がかかったのか疑われる。

 ならば、時間をかけた理由を作れば良いのだと。


 彼らが参考にした漫画のテーマは〝デスゲーム〟だった。

 時間が掛かったのは準備期間で、母星にエンターテインメントを届ける為だったと。


 漫画で面白いのだから、これを実際にやらせて映像を届ければ、きっと満足してもらえるはずだと。

 彼らはそうと決めると、同じく他の漫画を参考にしつつ、楽しみながら詳細に決めていった。

 ふざけた話ではあるが、彼らにはそれを実現するだけの力が有ったのだ。


 ルールが決まると、世界196ヶ国の国々に自分達の映像を届けた。 

 赤いタコと白いイカみたいな姿に擬態したのは、彼らなりのユーモアだ。


「我々は宇宙人だ。本日より、この星は我々が管理する。まずは多すぎる人口を減らす事にした」


 突如それを見た一般人の反応は大きく分けて2つだった。

 電波ジャックを装った新作映画の宣伝か、一流のハッカーによる悪戯かと。

 

 面白がる者や、SF好きな者たちがお祭り感覚で盛り上がったりはした。

 だが、当然ながら誰も本気で宇宙人が攻めて来たとは思わなかった。


 だが、各国のトップ達の反応は違う。

 厳重にハッキング対策はしているし、ここまで大規模な物となると、少数で行える範囲を超えている。


 直ぐに、ふざけた映像の停止と犯人の確保を命じるが、映像は止まらず、犯人の居場所も掴めない。

 友好国に連絡を取ると、同時に他国でも同様のジャックが行われている事が分かる。


 結局どの国も最後まで映像を止める事はできなかった。

 そして彼らの話をまとめると、以下の通りだ。


 1.人類を絶滅させる気は無いが、まずは半分の40億人程度まで減らしたい。

 2.我々からは攻撃しないので、人類同士で殺し合ってほしい

 3.環境を汚したくないので、我々の作った亜空間で戦ってほしい。

 4.亜空間に入る際、武器類の持ち込みは禁止とする。

 5.亜空間に入る際、誰でも平等に1人1つの能力(ギフト)を与える。

 6.ギフトは5種類の中からランダムに選ばれ、自分で選ぶ事も変更する事もできない。

  『武装(ウエポン)』『魔法(マジック)』『強化(リインフォース)』『守護者(ガーディアン)』『(ルール)

 7.亜空間に入った後、100人殺さなければ元の世界には戻れない。

 8.亜空間には、本人の意思でのみ入る事ができ、それを邪魔する事を禁じる。

 9.亜空間内で100人殺した者の願いを1つだけ叶える。


 『アンゴゥ』と『ルゥーモア』は満足してたが、少しだけ見落としていた事がある。

 国の場所によっては深夜だったり、そもそも映像を見れる環境が無い所もある。


 その為、複数回映像を届ける羽目になり、彼らの暮らす無人島の位置がバレてしまった。

 しかし、各国が送った兵は全滅、ミサイルですら傷1つ付けられずトップ達を大いに悩ませた。

 

 ここにきて彼らが本当に宇宙人かはともかく、自分達以上の技術を持つ事を認めざる得なくなった。

 

 技術で負けている為、ウェブ上ではなく、直接各国の代表が集まる話し合いの場が設けられた。

 だが、そんな極秘の場に『アンゴゥ』と『ルゥーモア』が当然のように現れた。


 予想外の増員はあったものの、予定通り会議は行われた。

 どのようなやり取りが行われたのかは不明であるが、結果を言えば人類は敗北を認めた。

 

 こうして各国にて、亜空間に渡る為の〝ブラックゲート〟の設置が行われた。

 アメリカは最初、実験や調査の為に、死刑囚や無期懲役といった重犯罪者を送った。


 報酬として、有益な情報を持ち帰った者には自由と金を約束した。

 だが、結果から言ってしまえば、これは悪手だった。


 囚人達には小型カメラやマイク等も持たせたが、中の様子は一切分からなかった。

 数日後、ありとあらゆる犯罪を楽しんだ1人の死刑囚が、アメリカの大統領になった。


 その男は同じ境遇の仲間とも言える者達を含め、100人を殺し、願いを叶える権利を得た。

 男は、本気で願いが叶うとは思っていなかった。

 どうせ死刑になるならと、最期に楽しもうと遊び感覚で殺しまくったのだ。


「さあ、あなたの願いを1つだけ叶えましょう」 

「おいおい本気か?」

「なんでも良いですよ」

「なんでもねぇ……ハッ、なら俺を大統領にでもしてもらおうか。どうせ、できねーだろうがっ」

「では、その願いを叶えましょう」

「あ?」


 男が亜空間から自国へ戻ると、本当に大統領になっていた。

 大統領、いや、元大統領は何処へ消えたのか不明であるが、願いは叶えられた。


 男の犯したこれまでの罪が消えたわけでは無い。

 しかし、何故か男は大統領として認められていた。


 この事実に対し、アメリカを除く各国のトップ達は背筋が凍る思いだった。

 明日は我が身だし、今後も自分だけが無事である保証など無いのだから。


 なんでも願いが叶うなら、このデスゲームを終わらせればいい。

 各国は軍を送ったり、ゲームを終わらせた者への莫大な賞金を掲げたが、ゲームは終わらない。


 当然の事だろう。

 どんな願いでも叶うなら、莫大な賞金とはいえ、それにどれだけの価値があるものか。


 

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