プロローグ
(やばいやばいヤバイ!!)
夜の街を10代後半、キツメのパーマと黒縁メガネが特徴の男が、怯えるように必死で走っていた。
しかし、残念な事に男の運動能力は高くは無いようで、早くも無ければ持久力も無さそうに見える。
(無理だ! こんな糞みたいな能力で戦えるわけがない!!)
「おい待てよ。止まらなねーと殺すぞ」
「ひぃぃっ!! と、止まったら殺さないでくれますか!?」
「いや、そりゃ殺すだろ」
「どっちみち殺すんじゃないですか!!」
追いかけている男の方は運動能力が高いようで、少しずつ2人の距離が近づいて行く。
だがパーマの男の方が何かにつまずき転倒した事で、あっさりと追いつかれてしまう。
もっとも、転倒しなくても逃げきれたようには思えないが。
「てめぇ、止まれって言ってんのに逃げやがって、2回殺すぞ」
追いかけてきた男の姿が月明りと街灯に照らされる。
夜なのにサングラス、耳にはピアス、髪は金髪で天辺だけ黒くなっている所謂プリンだ。
20代前半くらいで容姿は整っているが、どこから見てもガラの悪いチンピラだ。
「ひぃぇっ! 命は1人につき1つなので、2回も殺さないでください」
怯えたパーマの男が、震えながら当たり前の事を口走る。
そんな姿をチンピラの方は何かを見極めるようにジッと見つめ、更に周囲を見渡し警戒を強める。
(ああ、なんでこんな事になってしまったんだろう)
まるで走馬灯のように昨日の事を思い出す。
男の名前は佐藤 健で、大学受験に失敗し現在は浪人生だ。
悪い事は重なるようで、昨日は唐突にバイトをクビになり、自転車を盗まれた。
嫌な気分のまま帰る気にはなれず、公園のベンチに座ってボーっとしてると警官が話しかけてきた。
健は気づかなかったが、ベンチには酒の空き缶と煙草の吸殻が散らかっていたのだ。
住民から苦情や通報があったようで、間が悪く健が疑われてしまった。
当然アルコールは検出されなかったので、疑いは晴れたのだが、釈然としないものがあった。
今日は厄日だと、もう家に帰って寝ようとしたのだが、彼の不幸ラッシュは止まらない。
不良に絡まれ、暴行を受けた挙句、財布まで奪われた。
健は本気で何もかもが嫌になった。
そうして彼は自分の人生を変える為、〝ブラックゲート〟へ行く事を決めた。
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