最早、恋ってやつ?
一目見てから、"彼"は私の推しになった。
毎日、学校から家への往復。
友達もいるし目立った問題も起こしていない。
つまらなくもないし特別楽しいわけでもない。
平々凡々な日々。
そんな私にも大事なものがあった。
学校から帰るとすぐに起動ボタンを押す。
ローディング画面を経て流れ出す明るいポップな音楽。
早く早くと見慣れた画面を眺める。
こういうときって特に意味もなくボタンを連打してしまうのは私だけじゃないよね?
(今日でハーレムルート終わらそ)
ゲームなんて興味なかった。
ただ、なんとなく寄った本屋で"彼"の姿を見つけた。
人気ゲームの特集が組まれた雑誌。
それから私の行動は早かった。
ゲームは即購入、グッズも"彼"が少しでも載っていたら集めた。
今では自室の一角は"彼"だけのコーナーがあるほど。
ゲームのキャラにここまで執着するとは思わなかった。
最早、恋ってやつ?
その為、目的であった"アレン様ルート"は早々に終わってしまった。
他のキャラはあまり興味がなかった。
目的のルートの全エンドをコンプリートし、なんとなく攻略サイトを眺めていた時、"ハーレムルート"が存在することを知った。
ハーレムって苦手。
全員と幸せになんてなれっこないのに。
する気になれないルートをぼんやりと眺めていただけなのに私の知らない"彼"が存在することを知った。
その瞬間からまた、私は『青薔薇の奇跡~リーンハルト皇国編~』を起動していたのだ。
(ああ~ん!今日も推しがかっこかわいい~~!!)
身悶えしつつ逸る気持ちを抑えながらお目当てのキャラ以外はスキップする。
攻略サイトを隅から隅まで見て最短のハーレムルートクリアは押さえてある。
後はクリアするだけ、簡単だ。
『アレン様、これからもお傍に使えさせて頂きます。』
『ああ、もちろんだ。これからはカレンとミハエル、そして皆で国を守っていこう』
このゲームでいうところの王道キャラは"アレン様"だ。
難易度もさほど高くはないがゲームの顔でもある。
彼の人気は高いし、そのおかげでグッズ収集も捗った。
画面上で"アレン様"が言葉を発したのを皮切りに、攻略対象キャラがそれぞれヒロインに愛を囁く。
そして最後にヒロインが攻略対象キャラに囲まれ笑顔のままエンディングが流れ出す。
もうすぐだ。
エンディングが終盤を迎えた頃、1人のキャラが映し出される。
待ちに待った"私の推しの姿"
亜麻色の髪の優し気な表情で右手を差し出す。
エンディングの曲が終わり彼は口を開く。
『貴女様が次の私の主でしょうか?』