⑪ゆるっと恐怖体験
考え無しに書いたらめっちゃ短いけど、どうしても一旦ここで切りたい、の回。
ミヒャエルさんが部屋に戻っていったので、タオルと替えの下着と寝間着にしているお下がりシャツを籠に入れ、それとランプを持って、シャワーを浴びにいく。
外では雷雨が未だ激しく続いているようだが、やっぱりシャワーの熱源も石なのだろう。停電の心配がなくて安心だ。
シャワーを浴び終えて着替え、濡れた髪をタオルで適当に拭っていると、ふいにホットミルクのカップを片付けていなかったことを思い出した。
ミヒャエルさんの話は興味深く、時間を少し過ぎるまで話を聞いてしまったので、ウッカリしてしまったようだ。
朝片付けてもいいが、気付いたらサッサとやってしまいたいタイプである。
だが私はカップを持ってから、少し悩んだ。
(今……何時だろう)
日付が変わる時刻になると、ロード夫妻は裏口から使用人住居の方へ帰ってしまうのだ。
常夜灯の薄明かりのみの、誰もいない本棟1階…………
──怖い。
ハッキリ言って、超怖い。
私は幽霊やお化けの類が苦手である。
こういうことを言うと『そんな非科学的な』などと言う人がいるが、私はそんな人達に問うてみたい。科学で解明できていることが、世の中にどれだけあるというのかを。
所詮そんな言葉は気休め程度にしかならない。世界は今も昔も、謎に満ち満ちているのだから。
現に私は今、異世界にいる。
つまり、幽霊もいないはずが……
(あああああ余計に怖くなってきたぁぁぁ)
薮へびとはこのことである。
『…………』
「──ッッ!!?」
誰かの微かな声が聞こえた気がして、ヒッと息を飲む。
心臓がばくばくする。
恐怖で振り向くことができず「ミヒャエルさん?」と声の方に背を向けたまま声に出してみる。そう、ミヒャエルさんかもしれない。むしろそうに違いない。
雨音が凄いから2階の彼の部屋に繋がる扉が開いたのにも、階段から降りてきたのにも、気付かなかった、それだけに違いない。
言い聞かせても心音は落ち着かない。
それでも恐る恐る振り向くと、タイミング良く閃光──
誰もいない筈の塔の中には、やはり人影などなく……ホッと息を飲んだ、その時。
『…………よ』
「!!?!?!」
な ん か い る 。
見えないけれど、なんかいる。
私は声もなく叫び、服とランプの入った籠と、カップを手から落とした。