息子
ある世界の神界にて新たな生命が誕生しようとしていた。
この世界では今までにいなかった存在である創造神の息子である。しかし息子には人間として生きて行ってほしいが人の子が神界にいる事はよろしくない事なので、下界である地球のある家族のもとに送ることにする。
しかし、初めての息子であるために過保護になりすぎた創造神は地球で生きていく上で必要が無い力を授けてしまう。
その力は神界にいる上位の神たちすら凌駕してしまう力であった。
「本当は私の手で育てたいのだけど、仕方ないのかな」
産まれたばかりの赤子を抱きながら慈愛の目を向ける創造神。
「あなたが行く家はある道場で子供が産まれなかった老夫婦の所なの。2人とも優しい人達だから安心してあなたを託せるわ」
腕の中で、すやすやと眠る我が子に言い聞かせながらしばしの別れとして愛情をそそぐ。
「強くて優しい人に育つのよ。さてと、そろそろお別れかな。それじゃあ元気でね」
腕の中の赤子が光に包まれ、今まさに旅立とうとしている。
光がおさまるとそこにほ今までいた赤子の姿が消えていた。
「ばいばい…………利久」
――――――――――――――――――――
ある道場の老人の男が日課である朝の鍛錬をしようと稽古場にきていた。
しかしその腕の中には赤子が抱かれている。
「60年近く生きてきたが、これは流石におどろくのう。なぜこんな所に赤子がおるのやらわからんわい。これは、ばあさんに相談せにゃいかんだろうの」
老人は赤子を連れて相談相手が居るであろう場所に向かうため赤子を抱えたまま立ち上がる。そのとき、何かが落ちた気配がしたが老人は見た目からは想像出来ない速さでその物を掴む。
「ふむ、紙であったか。何か書かれているのかの。」
老人は掴んだ紙を広げて書いてある文字を読む。
「利久……この赤子の名前のようじゃの。しかし男の子だったんじゃのう。可愛らしい顔じゃから女の子かと思っとったわい」
するとそこへ、足音が近づいてくる。
「あなた朝ごはんの準備が…できま…………あなた、子供に恵まれなかったからといって人攫いはまずいんじゃないかしら?」
老人を呼びにきた女性が腕に抱かれている赤子を見ながら問いただす。
「いや、違うわい。稽古場に行ったらおったんじゃ。ほれ、これと一緒にな。」
老人は誤解を解きながら先ほど読んでいた手紙を渡す。
女性は渡された手紙を読んで行く。
「これは……この子の名前とそれに……なるほど。私達で育てるのが良さそうですね。それにしても可愛らしい娘ですね」
「なんじゃ、最後まで読んでないのかの。この赤子は男の子じゃよ」
「えっ?………そのようですね。しかしこの手紙は本当なんでしょうかね?」
――――――――――――――――――――
神崎様へ
私は、その子の母親で神と言われる存在です。その子の名前は「利久」です。
私はその子の母親ですがあいにく人の子を私がいる場所で育てる事が出来ません。
そこで、子宝に恵まれず、優しさと強さがある、神崎様夫妻にその子を育てて頂きたい。
武神の子孫と魔法神の子孫の神崎様夫妻が一番適切だと判断しました。
いきなりこんな事を言われても信じられないでしょうが何卒よろしくお願いします。
創造神 アイリス
ps その子は男の子です