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DJシロクマのホラーナイト!!

 えー、皆様こんばんは。DJシロクマです。

 もはや毎年恒例行事になりつつありますね、コレ。


 何の事かと言えばホラー企画です。

 毎年の如く、蝋燭に囲まれながら畳の上で正座させられてます、私。


 そんなこんなで今年もホラーなわけですが……。

 今回は病院に纏わるホラーです。


 皆様は一度は病院行った事があると思います。

 作者も一度死にかけて入院した事ありますが、今回はそんな作者の体験に若干の……若干の色を付け足したお話をご紹介したいと思います。


 では……よろしくお願いいたします。


 っていうか、これ俺いらなくね?!





 《病院に纏わるホラー 語り手 作者》


 これは私が大失敗して盛大に事故った時のお話です。

 悪いのは完全に私ですが、幸いな事に他に被害に遭われた方が居なかったのがせめてもの救いです。


 何を失敗したかと言いますと、私は高校の時レスリングをやっておりまして、その時に肩を外して以来、たまにちょっとした事で抜けるクセがついてしまったのです。


 もう本当にちょっとした事で抜けます。ベッドに眠っている時、少し肩の角度がマズい方向に行くと外れます。慣れてくると自分で治せるんですが、最初の頃はいちいち病院に行ってました。


 さて、そんなある日、夜勤で運が悪い事に設備がエラーを起こしてしまいました。

 その時、現場にいる作業者の中でそれを直せるのは私のみ。私は後輩に報告を受けた後、屋外にある設備の点検に行きました。


 当然、夜勤なので暗いです、外。

 私は懐中電灯片手に設備の点検をしていました。

 その設備は比較的高い位置にあります。地面まで約十メートル程です。


 私は設備の点検を終え、復旧した事を後輩へ電話で伝えると、そのまま階段を降りて戻ろうとしました。

 しかしその時、足を滑らせてしまい転びそうに。私はとっさに手すりを掴んでバランスを取ろうとしましたが、その時ちょうど肩を外してしまったのです。


 あ、まずい。そう思った時、私の片腕は力が入らず……そのまま階段下へと落ちてしまいました。



 そして次に目が覚めた時、私は病院のベッドの上でした。

 どうやら中々戻らない事を不審に思った後輩が、倒れている私を見つけて救急車を呼んでくれたそうです。そしてその後輩は中途社員なんですが、元々は医大生だったらしいです。何故うちの会社に来たし。


 しかしその後輩の迅速な応急手当のおかげで、私は命を取り留める事が出来たと病院の先生から聞きました。そして私が病院に運ばれた時、担当して頂いた先生が大変に優秀な方だったらしく、医療に携わる者なら名前を聞いただけで分かるそうです。すみません、これは言い過ぎかもしれません。でも結構凄い人らしいです。


 様々な幸運が重なり、私は助かったわけですが……その幸運と引き換えに……私は凄い体験をしてしまったのです。いわゆる……恐怖体験です。




 ※




 階段から落ちた時、私は頭を特に強く打っていたそうです。後輩に言わせれば、本当に血の海を見る事になるとは思わなかった、と言っていました。たぶんちょっと大げさに言ってます。でもそのくらい出血がひどかったらしいです。


 そのせいか、頭がなんだかボンヤリ……していました。幸い肩を外した以外は骨に異常はありませんでした。我ながら呆れる頑丈さですが、階段から落ちて生死の堺を彷徨うなんて思いもしませんでした。


 入院して数日が経ち、なんとか一人で歩けるようになった頃、私は夜中にトイレに起きました。

 もう私は結構いい歳です。夜の病院の廊下を歩くのが怖い……なんて言い出しません。でも何だか部屋から廊下に出た瞬間、違和感を感じました。まるで全く違う世界に来てしまったかのようにな違和感です。


 具体的に言えば、五感で得る情報が病室に居る時と全く違っていた、と言えば分かりやすいかもしれません。まず体感温度が格段に下がりました。暑くなるなら分かります。私は病室のエアコンをガンガンに効かせていたからです。しかしそんな病室より廊下の方が寒い? というのでまず違和感を感じました。ちなみに季節は夏です。


 そして次に匂い。病院と言えば、何とも言えない独特の薬品……私は医師でも何でも無いので何の匂いかなんて分かりませんが、とりあえず何かの薬品の匂いが常にしていました。

 しかしその時は、まるでジャングルの中にいるかのような、生臭い匂いがしたのです。一体何の匂いかと推理してみても答えは出てきません。というか、部屋の中は普通に薬品の匂いがしたのです。当然、部屋に薬品など置いてありません。あるとしたら点滴くらいです。


 そして更に音です。皆様も耳鳴りは経験あると思いますが、その時、私の耳には何かの警告を放つように、けたたましい耳鳴りがしていたのです。しかし不思議と不快ではありませんでした。ただ、なにこれ? 程度に思うくらいです。


 そして最後に……視覚です。別に幽霊が見えたとか、そういうのじゃありません。私は自慢じゃ無いですが霊感などゼロです。全くありません。しかし幽霊と宇宙人は絶対に居ると信じています。


 話が逸れましたが、その時私の視界は妙に黄色かったのです。べつに明るかったわけじゃありません。本当に黄色だったんです。病院の壁は白いのが普通だと思いますが、その時は黄色でした。廊下は当然照明は落とされていますが、要所要所の照明は点けられています。その全ての白灯も黄色でした。もしかして害虫を寄せ付けない、特殊な灯りかとも思いましたが、当然違います。


 私は不思議に思いながらもトイレが我慢出来ず、そのまま用を足しに行きました。

 トイレへと到着し、用を足した後、再び廊下に出ようとした時……看護婦さんが目の前を横切っていきました。私は巡回かな? と思いつつ廊下に出て、看護師さんが行った方向へ目を向けます。しかし当然のように誰も居ません。


 もしかしたら途中で何処かの病室に入ったのかもしれない。当然そう思い、何も気にすることなく私は自分の病室へと戻ろうとしました。


 しかしその直後、とある病室から何かが倒れる音がしました。

 私は驚きながら、音がした病室の方へ視線を向けます。


 私は迷いました。様子を伺うべきか? 誰かが倒れているかもしれない。

 いやいや、しかし今……目の前を看護師さんが通ったでは無いか、あの人も今の音を聞いたはずだ。


 しかし数秒……数十秒経っても看護師さんが駆け付けてくる様子はありません。

 私は思い切って、音がしたであろう、病室の扉の傍へと。


 そこは四人程の方が入院されている部屋でした。恐らく皆老人か、と普通にそう思いました。

 なにせ、私が目を覚ました直後、検診に見えた先生が何よりも先に……


「若い人は一人部屋でいいよねー? だって、ご老人は皆で雑談したいから入りたがらないのよー」


 と言い放ったからです。

 目を覚まして混乱する私に、まずかける言葉がそれか? と一瞬思いましたが、命の恩人なので特に文句はありません。


 さて、話を戻りますが病室に入っているのは皆ご老人……と勝手に思い込んでいた私ですが、そっと病室の扉を開けてみました。中からは小さな鼾が聞こえてきました。そして足元に、一人のお婆さんが倒れていたのです。


 私は「大丈夫ですか?」と小声で話しかけます。お婆さんは「大丈夫、ちょっと足を滑らせてしまって……」とにこやかに対応してくれました。どうやら何処も怪我はしていないみたいです。


 そしてどうやらお婆さんはトイレに行こうとしていたらしく、私はお婆さんに手を貸しつつ、一緒に行ってあげる事に。肩を貸したかったのは山々だったのですが、生憎私の肩は外したばかりで、しかもなんか超痛かったのです。なので軽く手を繋いでいる程度でした。


 なんだか可愛いお婆ちゃんだな……と思いつつ、私はそのお婆さんと共にトイレへ。

 女子トイレへと入っていくお婆ちゃん。お婆ちゃんは「もういいよ、部屋に戻って」と言ってくれました。私は「あ、はい」と答えつつも待ってました。


 するとその時、目の前から懐中電灯の光が。どうやら巡回の看護師さんのようです。

 その時私は、先程見た看護師の事を思い出しました。そういえば……懐中電灯なんて持ってなかったよな? と。

 まあ、しかし一瞬目の前を通っただけなのです。懐中電灯を持ってるか持ってないかなど、分かる筈もありません。でもなんか無性に気になりました。


 そして目の前からやってきた看護師さんに、私は当然話しかけられました。


「どうしました?」


「あぁ、いえ、実は……」


 凄い音がして病室を覗いたら、お婆さんが倒れていて、その方と一緒にトイレまで来た、と説明しました。しかし看護師さんは、何言ってんだコイツ……という目で私を見てきます。


「御婆さんって……今トイレの中に居るの?」


「あ、はい」


 すると看護師さんは無言で女子トイレの中に入っていきました。

 そしてしばらくして戻ってきて……


「誰も居ないよ?」


 そう、言ったのです。


 私は一気に血の気が引くのが分かりました。

 いやいや、そんな筈はない。

 私は確かにお婆さんをトイレまで連れてきて、言葉まで交わして、とどめに手まで繋いでいたのです。


 そんな筈はない、あのお婆さんが……幽霊と呼ばれる存在である筈が無い……と私は自分に言い聞かせました。


 しかし看護師さんによると、このフロアにご老人は入院されていないとの事でした。

 あの時先生が言った「若い人は云々」はフロアでは無く、病院全体の事を言っていたみたいです。

 私は先生の言葉から当然、ご老体が居ると思い込んでいました。しかし私が覗いた病室は勿論の事、このフロアに「ご老人」と呼べる人は誰一人いなかったのです。


 そして何より、トイレに誰も居ないとはどういう事かと、私は震えが止まりませんでした。一体どういう事だと何度も自問自答しましたが、答えは当然のように出てきません。


 私の事を心配した看護師さんは、私の病室まで付いてきてくれました。

 廊下を歩く途中で、私はお婆さんの前に視た看護師さんの事も聞きました。大きな音を聞く前、目の前を一人の看護婦さんが横切った、と。



 お気づきになられたでしょうか。

 そうです、私のような三十代前半は、昔は看護師さんの事を当然のように看護婦さんと呼んでいました。


 それは男性の看護師がまだ少なかったからです。今では「看護婦さん」と呼ぶと差別用語だと言われかねませんが、私はその時思わず……看護婦さんと言ってしまったのです。


 何故なら、目の前をよごぎった看護師さんは、まさに看護婦……スカートにナースキャップを被っていたからです。


 それに気づいた私は思わず口を噤みました。

 

 今の時代、スカートにナースキャップの看護師が居るはずがない、というか、この病院でそんな看護師さんを見ていない。見たのは……先程だけだ、と。



 その日の夜、私は中々寝付けませんでした。

 あのお婆さんは優しそうで、可愛い人だったけど……看護婦さんはヤバい、と何故か思ってしまいました。サイレン〇ヒルっていうゲームのやりすぎかもしれませんが、何故か私は怯えて震えが止まりませんでした。



 そして気づけば朝になっており、私は昨夜の事を思い出しながら……手の感触を思い出します。


 私はあのお婆さんと手を繋いだのです。

 幽霊とも……手を繋げる。


 これは……結構な大発見なのでは……と一人思いました。




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