1話 なんか急に異世界に転移したんだけど、お前らどんだけ鶏白湯好きなんだよ!
俺は高校生探偵の須藤新二。
幼なじみの森蘭子(2次元)と、遊園地で妄想デートしていたら、黒ずくめのオッサン達に変な薬を飲まされ、気がつくと
あそこが小さくなっていた。(小さくなっても機能は同じ!)
ついでに、
体が異世界に転移していた。
「ここはどこだ?」
俺の周りの風景は、一言で言うと農村。風車や石の家が点在しており、風の谷で王蟲が襲ってきそうな感じである。
少し歩くと、第1村人を発見した。これは話しかけるしかない。
麦か何かの束を抱えた金髪色白少女。そこそこ可愛い。
「今何されてるんですか?」
ダーツの旅的な感じで尋ねると、
「どちら様?」
と返してきた。まあ、当然の問いである。
「俺は名もなき旅人さ」
ミスチル的な感じで自己紹介すると、
「私はアズール・エスタンシャ・ディアーナです」
長っ。覚えられるわけない。えーっと、なんて呼ぼう。アズール、アザール、アズレン……。まあ間をとってあずにゃんでいいか。何そのツインテの後輩っぽい名前。
「いい名前だね(適当)!そうだ、俺今日泊まるとこなくてさ、一晩だけ停めてくんない?」
勢いで言ってみた。田舎に泊まろう的なノリで。
「いいですよ。旅の人には親切にしろって、おばあちゃんに言われてましたから」
「えっ?マジで?」
ダメ元で言ってみるものである。
てなわけで、そこから歩いて数分、彼女の家へ。今は両親不在で一人暮らし中らしい。それなんてエロゲ?
ぐーっ。お腹がなってしまった。そう言えばご飯食べてなかった。
「なにか作りましょうか?」
「えっ、じゃあ鶏白湯食べたい」
特に理由はないが、ぱっと思い浮かんだので言ってみた。
「とり……、えっ?」
困惑するあずにゃん。その表情かわいすぎかよ。天使にふれてしまったようだ。
「鶏肉煮込んで作るやつ。作り方はわからんけど……」
「ごめんなさい、聞いたことない……。あ、でもおばあちゃんなら知ってるかも」
ってことで、村のはずれのおばあちゃん家へ。
「おばあちゃん、鶏白湯って知ってる?」
「ああ、鶏白湯か。ワシが若い時に、そんな料理を西の国で食べたことあるよ」
さすがおばあちゃん。だてに歳食ってない。
「作り方は知ってるの?」
「まあの。でも、この国では作れんよ」
「え、なんで?」
「この国は貧しいから鶏に安い餌しかやってないからの。煮てもいい味にならんのじゃ。どうしても食いたいなら西の国へ行くことじゃな」
え、なんかRPGみたいになってきた。めんどいから他の料理でいいやと言おうとした所、
「行くしかないわ」
「え、何でそうなるん?」
「とりぱいぱ……鶏白湯を食べるには」
俺の耳はその言葉を聞き逃さなかった。
「ちょま、今なんて?とり、ぱいぱ……」
「うるさい!」
あずにゃんが顔を真っ赤にしている。そして怒ったあずにゃんも可愛い。
「え、もしかして、毛生えてないん?(迷推理)」
「……」
唇をかんで上目遣いで睨んでくるあずにゃん。その反応はイエスってことか……?
おいマジかよ、俺もう鶏白湯とかどうでもいいからあずにゃんのパイ〇ン食べたいんだけど。
「いいから、西の国へ行くわよ!」
というわけで、西の国へ行くことになった。
西の国なう。と心のTwitterで呟いていた頃。
「ここが鶏白湯屋さんね」
目の前には鶏白湯屋「ポーク」と書かれた看板。
ツッコミどころ満載だがあえてスルーして中に入ると、客は誰もいない。
「やっぱ鶏白湯とかやっぱ人気ないんじゃね?」
と、そこで店の奥から店員らしき女性。
「お客様、申し訳ございません。例の法律で、鶏白湯は禁止されてしまったんですよ」
「法律?」
「ご存知ないんですか?昨日出された鶏白湯独占法ですよ。鶏白湯用の鶏肉は王族が独占するって決まってしまったのです」
「なんでその法律鶏白湯をピンポイントで独占してるんだよ……てか鶏白湯用の鶏肉って何?」
「なら、仕方ないわね」
何やら覚悟を決めた様子のあずにゃん。
「まあ、法律なら、仕方ないな、諦めて帰ろう」
「違うわよ!国を滅ぼして、法律を作ればいいのよ」
「え、なんでそうなるん?」
ダメだこいつ、早くなんとかしないと。
てかそんな発想するやつお前かフリーザ様くらいだぞ。どんだけ鶏白湯食べたいんだよ。
「まさかあなたは、西の国に代々伝わる、勇者様……?」
店員の女性が言う。いやいや、違いますよ。こいつはただのDQN女ですから気にしないで下さい。
「戦いは明日よ。彼らを招集して!」
なんかそれっぽいことを言うあずにゃん。どうでもいいけど俺の飯は?
そして翌日。
鶏白湯屋の前には、大勢の市民が集った。みなナイフや斧を持っている。なんでこんな人集まってるんだよ。この国はアホばっかりか。
そのアホ共の中心にいるのが、あずにゃん。
「みんな、ラグナロクの時は来たわ!我らの、鶏白湯を取り戻しましょう!」
「おおーーーー!」
湧き上がる群衆。お前らどんだけ鶏白湯好きなんだよ。てかあずにゃんお前昨日まで鶏白湯知らなかっただろ。
もうこんな国滅びてしまえと思う今日この頃の俺だった。(間違いナイトプール)
士気の高い鶏白湯連合軍は王の城に迫る。
「鶏白湯は我らのもの!」
「そうはさせるか!」
向かってくる王国軍をなぎ倒し、王の元を目指す、が……。
「うわあああーー!」
先鋒の鶏白湯連合軍が崩れ始め、後退しはじめる者もいた。
前に立ちはだかっていたのは、鎧で身を固めた男。こいつが邪魔で先に進めないらしい。
「あなたは、酸辣湯将軍!」
と叫ぶあずにゃん。何そのアンパンマンにいそうな名前。
「鶏白湯など俺は認めんぞ!!この国を酸辣湯で満たしてやる!」
と叫ぶ将軍。
「そうはさせないわ!」
剣を交える将軍とあずにゃん。
どうでもいいけど将軍、なんかお前だけ色々違くね?
激闘の末、あずにゃんの剣が将軍を突き刺した。
「おえっ」
将軍の口から赤い液体がこぼれる……ってこれ酸辣湯じゃねえか。なんでだよ。
「将軍は倒したわ!」
それにより勢いづいた鶏白湯連合は、なんやかんやで王を捕えることに成功。後に「鶏白湯の戦い」と呼ばれるこの内乱は幕を閉じた。
そして、神聖鶏白湯帝国が誕生。あずにゃんは初代女王となった。
数日後、今日はあずにゃんの即位式の日である。城のベランダにあずにゃんが冠をかぶり赤いマントを着て登場。
城前の広場は新国王の就任を喜ぶアホどもで埋め尽くされていた。
「王、これが鶏白湯です」
なんか執事らしき初老の男が黄金の器に鶏白湯を入れて持ってきた。
「鶏白湯独占法はこれをもって廃止するわ!」
そういい、勢いよくスープを飲むあずにゃん。
国中があずにゃんの言葉に期待を寄せていた。国を滅ぼしてまで飲みたかった鶏白湯。彼女はそれを飲み、一体どんな感想を言うのだろう、と。
飲み終えた彼女は、一言。
「あれ、なんか思ってたのと違う……」




