表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもいける。  作者: 衣良あまと by Retiree Works
16/17

第16話 ~Unser Mund sei voll Lachens~

次回、最終回です。

最後まで宜しく御願い致します。


「ちょっ、コレっ!」


 見覚えのあるケースから出て来たのは、確かに今自分の右手小指にはまっているハズの指輪だった。


「、、、もし、、、付き合える事になったら、ずっとしてて欲しいなぁ、、、って思って、、、でも、皆があげたのと違うモノを川村が着けてたら、絶対に千伽井(ちかい)とか問い詰めると思うんだよね、、、だから、、、ソレにした」


 そんな誉なりの気遣いが鉄男はとても嬉しかった。


「もう、、、僕が断ること考えなかったの?」

「そんなことまで考えてたら、男が男になんてコクれねぇよ、、、」

「あ、それは確かに、、、」


 そう言って今はめている指輪を外し、(ほまれ)から貰った方の指輪を着けようとして鉄男は、同じデザインの二つの指輪に微妙な違いがあることに気が付いた。


「もう、、、誉クンたら図体に反して案外ウブなこと考えるんだから、、、」

「あ!お前、そーゆー事言う、、、それ、頼み込んでようやく入れて貰ったのにッ!」

「、、、ありがと!」


 拗ねる誉の頬に口付けをすると鉄男はお礼の言葉を述べ、そして、


「『H to T』か、、、悪くないねっ!」

 

指輪の内側に刻まれた文字を読んでから小指にはめた。



  、、、、、、、、、、、、。



『ガチャ、、、』

 

 その音に誉はドアの方を見つめる。そこには帰宅したばかりの(はるか)の姿があった。


「、、、、、、スマン」


 そう言って悠は開けたドアを元通りに閉めるとリビングにの方へ向った様だった。

 誉は状況が把握出来ない、、、どうやら鉄男との遣り取りの後、自分達も気が付かない間にそのまま眠ってしまったらしい、、、。自分の隣には全裸の鉄男がまだスヤスヤと寝息を立てて眠っている。


「、、、ん?」


 ここから急速に誉の脳は回転を始める、急いで自分の身体を見下ろすと、鉄男に同じく真っ裸、、、。そしてさっき部屋に来たのは悠、、、全部、見られた!気付かれたッッッ!そう結論が出た時、既に彼は叫んでいた。


「あぁああああああああああッッッ!」


 その声に鉄男も飛び起きる、慌てて状況を説明すると二人は物凄いスピードで服を身に付け、バツが悪そうな顔でリビングに姿を出す。

 ソファーに座っている悠の背中に、恐る恐る誉は声を掛けた。


「あ、、、あのぉ、、、悠?」

「、、、、、、」


 返事がない。

 今度は鉄男が声を掛けてみる。


「あのぉ、、、はるクン?」

「、、、、、、」


 やはり返事がない、、、。二人は顔を見合わせると、意を決して悠の前方に出た。その瞬間、


「パンッ!パンッ!パンッ!」


 乾いたクラッカーの音が室内に響いた。


「おっめでと~!なにッ、お前ら?いつからそーゆー関係になってたワケっ?」


 ニヤニヤした表情で、一人大盛り上がりの悠に二人は呆気に取られつつ、


「今日、、、から、、、」


 と誉が答えた。


「えっ?なに、じゃあ付合い始めたその日にヤっちゃったってコト?鉄男!」

「う、、、うん」

「あっ、でもまてよ、そっか~、、、今日、バレンタインデーじゃん!何で俺、朝の時点で気が付かなかったんだろう、、、アホだなぁ、、、ん?、、、なにシケた顔してんの?あッ、まさか俺が『キメーなホモッッッ!触るな!お前らなんかもう友達じゃねーッ!』とでも言うと思った?」

「、、、違うの、、、?」


 恐る恐るそう尋ね返した鉄男に、悠は大笑いすると答えた。


「はっはっは!バッカじゃねぇーの?こちとら人生の半分はアメリカで過ごした人間だぞッ!ゲイの友達だって居るっつーの!今更お前らの恋愛を見たってビクともしないよ!」


 そう言うとVサインを決めた。


「悠、、、」


 そう言って泣きそうな顔をしている誉の隣に立つと、悠は彼の肩を叩いた。


「いいじゃん、、、佐々木は鉄男の事、愛してるんだろ?」

「、、、あぁ」

「鉄男は?」

「ん?」

「佐々木の事ちゃんと好きか?」

「もちろん!」

「だったら何にも問題ないよ!胸を張って付合えばいい

ッ!ビクビクすんなっ!」


 そう言って笑う。

 この瞬間から悠は、誉と鉄男にとって親友とはまた別のかけがえのない存在となった。


「、、、他の皆には俺からは何も言わないからな、、、でも

隠す必要もないと思ってる、、、」


 悠のこの言葉に、誉も鉄男も固い表情で頷いた。それ確認すると悠は、それまでとは打って変わってキツイ口調で言った。


「あ、ただお前らちゃんと始末して帰れよッッッ!」

「何を、、、?」

「あのね、、、佐々木くん、、、」

「ん?」

「それから鉄男くんも、、、」

「、、、はい?」

「君達が派手に遊んでくれたあのベッド、、、って言うか、あの部屋自体、俺の部屋なんだよねぇ、、、」


 そう言い終わると顔を引き攣らせながら悠は二人に命じた。


「しっかり掃除して帰れよッッッ!そしてシーツや布団、その他お前ら二人の汗をはじめとする様々な体液が付着したとおぼしき物体は全て洗濯しろぉおおお!」

「ヒィ~、、、、」

「ごめんなさ~いッッッ!」


 そう言った直後、三人が三人とも満面の笑みで笑っていた、、、。

次回更新は3/29(金)を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読み頂き、ブックマーク等して頂けましたら幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ