第15話 ~Erfreute Zeit im neuen Bunde~
大変遅くなりました。
申し訳こざいません。間もなくこのお話も終了です。
そうしたままどれくらの時間が経ったのだろう、誉は自らその甘い時間に終止符を打った。
「、、、ごめん、、、川村」
そう言ったものの誉は怖くて鉄男の顔が見られなかった。
「、、、誉クン、、、顔上げて、、、」
「、、、、、、」
「ねぇ、、、顔上げてってば、、、」
「、、、、、、」
それでも誉は顔を上げようとしない。
次の瞬間、鉄男は目を閉じたまま俯いている誉の唇に、背伸びをして下から自分の唇を合わせた。
「ッッッ?」
驚いて誉が目を開けると、そこには自分に口付けをしている鉄男の姿がある。
誉はウソだろ、と思いながらも恐る恐る鉄男の唇を割り自分の舌をそっと中へ押し入れてみた。すると鉄男はすんなりとそれを迎え入れる。
「ん、、、んん、、、」
「あ、、、ん、、、」
そうやってしばらくの間お互いの感触を確かめ合うと、顔を離し、二人は出会ってから初めてキチンと見つめ合った。
「、、、川村、、、」
誉が切り出すと、鉄男は細い腕を彼に回した。
「、、、僕、ずっと、、、ずっと、誉クンの事が、、、好きだ、、、った、、、」
相当恥ずかしいのか、誉の胸に顔を埋めたまま鉄男はやっとの思いで自分の気持ちを口にした。
「、、、川村、、、ズルいよ、、、」
「え?」
予想していなかった誉の言葉に鉄男は驚きは顔を上げる。
「俺が、、、俺の方から言おうと思ってたのに、、、」
「、、、、、、」
「その為にわざわざ悠に家まで空けて貰って、、、」
ここで初めて誉は本当の事を告げた。
「道理で、はるクンいつまで経っても帰って来ないわけだ、、、」
鉄男はあきれ顔でそう言うと笑った。
「じゃあ、ちゃんと言ってよ、、、」
「ん?」
「誉クンが言うつもりだったんでしょ?だから、ちゃんと言ってよ!」
「あ、、、うん。」
「、、、、、、」
「俺は、、、川村が好きだ、、、川村が怪我したあの夜、心から失いたくないと思った、、、ずっと側に居て欲しいと思った、、、自分の気持ちに気が付いた、、、俺は川村が好きだ、、、」
取り合えずそこまで言うと鉄男を抱き締め、続けた。
「でも、、、川村あの事故の後、元気なくて、、、川村がそんな時に告白なんて出来なくて、、、だからずっと川村が元気になるのを待ってたんだ、、、ちゃんと笑ってくれるようになるまで待ってた、、、今度川村が俺の大好きな笑顔で笑ってくれたら、その時は、告白しようって決めてた、、、結局、一ヶ月くらい経っちゃったケド、、、川村、、、俺はお前を愛してる、、、付合って欲しい」
言い終わると誉は鉄男の唇にキスをした。
「、、、有難う」
そう言って鉄男は誉の大好きな笑顔を見せる。
「僕は九月に出会ったあの時から誉クンが好きだった、、、って言うか、最初は気になってたくらいかな、、、でも、どんどん誉クンへの思いが止まらなくなっちゃって、、、まともに顔も見られなくなっちゃって、、、男だから、、、男同士だから、、、って何度も自分に言い聞かしたんだけど、全然ダメで、、、そんな時にあの事故が起きて、、、僕の右手小指は動かなくなった、、、。僕は夢だったピアノ専攻への進学を諦めなくちゃいけなくなって、、、ずっと悩んでた、、、。学校を辞める事まで考えた。でも、、、その度に誉クンの顔が浮かんで、、、ピアノ専攻じゃなくてもこの人の側に居られるなら学校に残りたい、、、ピアノが弾けなくても、同じ学部に進学すれば、この人とずっと一緒に居られる、、、ってそんな考えが浮かんじゃうんだ、、、でも、、、その気持ちが、、、そんな気持ちが僕だけだったら淋しいじゃない、、、」
そこまで言うと鉄男は誉を見上げ、
「そしたら誉クン、この間言ってくれたんだもん、、、僕の心を逃したくない、、、て、、、。それ聞いたら、それ聞いちゃったら、もう無理だよ!例え僕の気持ちと誉クンの気持ちが違うものでも、僕の愛が伝わらなくても、、、誉クンと一緒に居たいッ!って思っちゃった、、、好きだよ、誉クン、、、ずっと、ずぅ~っと好きだった、、、」
言い終わると今度は鉄男がまた背伸びをして誉の唇にキスをした。
その後またしばらくの間お互いの感触を楽しむと、誉が悪戯っぽく言う。
「川村ぁ、、、もう俺ちょっと、、、ムリっぽい、、、」
椿の花、落ちる。
室内に時計の音が響き渡る。『今何時くらいだろう?』そんな事が朦朧とする意識の中に浮かぶも、そのまましばらく動けなかった。
「誉クン、、、」
「ん?」
「僕、誉クンのこと好きだよ、、、」
「ありがと、、、、、、俺も、、、なっ」
「僕、、、明日先生のところに行って、大学の志望専攻をピアノ専攻から作曲専攻に正式に変えて貰うよ、、、」
「いいのか?」
「うん、、、残念だけど、、、ピアノ専攻はこの指じゃ無理だし、、、」
そう言って右手を眺める鉄男を見た誉は大声を上げた。
「あぁああああッッッ!」
「なにッ?」
突然の誉のその声に鉄男は一瞬身体をすく竦ませた。
誉は全裸のままリビングへ行くと、自分が着て来た上着のポケットから一ヶ月前に皆が鉄男に渡したのと全く同じ立方体を取り出してベッドルームに戻り、鉄男に差し出した。
「ん?なにこれ?」
状況が把握できない鉄男に誉は失敗したぁ、といった感じで言う。
「本当は、、、これと一緒に川村にコクるつもりだったの!、、、なのに、俺、暴走して、、、すっかり忘れてた、、、」
誉はそう告げると、『開けてみ』と鉄男を促した。
次回更新は3/22(金)を予定しております。




