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プロローグ

いつか書きたいと思っていたロボット物にやっと手をつけることができました。

分かりづらい用語等もあるかもしれませんが、追々解説ページも作っていきたいと考えております。


それでは本作にお付き合い頂ければ幸いです<(_ _)><(_ _)>


初稿:18/09/27

改稿1:18/10/04

改稿2:19/04/29

 その時、瑞々しかった森が炎に包まれた。

 人の背丈ほどある火球が着弾し、美しかった木々を灰燼に帰していく。黄昏時の空は火炎に照らされて一層赤く染まった。

 そしてその炎の間を巨大な白い機体が駆け抜けていく。


「カリウスは右に展開し背後に回り込めっ! レジスは地上部隊の防衛に当たりつつ俺たちを援護っ! フロイドは俺と共にヤツの頭を抑え込むぞ、いいなっ!?」

『了解っ!!』


 怒鳴りつけるような隊長の声に、部下たちの勇ましい声がスピーカーから次々と返ってくる。コクピットに座ったクライヴは力強く操縦桿を握りしめた。

 王に仕える騎士を思わせる白銀の美しかった機体は今やススにまみれていた。駆動部は悲鳴を上げ、警告でモニターは赤文字だらけとなっている。

 それ程までに敵モンスターは強い。正面モニターの端には、完膚無きまでに破壊された味方の機体が転がっている。幸いにして彼の部下たちに脱落者はまだいないが、転がる機体といつ同じ様になるか分からない。

 それでも、まだ誰一人として戦意は衰えていない。一つ息を吐き出すと、隊長――クライヴは自らの機体を走らせた。


「うおおおおおぉぉぉぉっっ!!」


 雄叫びを上げて自らを鼓舞。精霊の力が宿った剣を握り、敵生物に向かって機体を躍動させた。


「くたばれっ!」


 激しく揺れる機体の左腕を敵に向けた。その手のひらに刻まれた複雑な模様が光を放ち、次々と火球が打ち出されていく。

 それらは正面の白い敵生物に命中し、着弾の煙幕に覆われた。そこを白い機体が突き破って現れ、真っ赤に輝く剣が振り下ろされていく。


「■■■■っっっっ――!!」


 手応え、あり。

 外部カメラに赤い血液が飛び散り、その奥で体をくねらせている。

 自機よりも巨大な敵モンスターを見て彼はいい気味だ、と溜飲を下げる。だが深追いはしない。クライヴは一度機体を屈ませると大きく後ろへ退いた。


 直後、激しい閃光が襲った。


 モニターが瞬く間に白く焼き付き、爆風が重厚な機体に押し寄せる。揺れる機体をクライヴは必死に制御。やがて獣が四つん這いになるようにして着地し、砂埃を巻き上げて止まった。

 その横に遅れて着地する同系統の機体。彼の部下であるフレイアの機体だ。


「……どうだ?」

『着弾は確認しました。後は……』


 爆発の影響か、ノイズ混じりの声がスピーカーから届いた。

 あの威力だ。いかに奴であっても無事では済むまい。そうであってくれ。祈るような気持ちでクライヴは爆心地を見つめた。

 果たして、爆煙の中からの反応は無い。


「……やったか?」


 緊張がやや解けた。

 災厄と呼ばれる程のモンスター。だが奴であっても王国の魔法研究者たちが練り上げた強力な魔法には耐えられなかったようだ。うるさいくらいだった心臓が落ち着きを取り戻そうとし、彼は溜まっていた重苦しい息を吐き出した。

 その時、白いムチのような攻撃が機体を弾き飛ばした。


「ぐあっ……!」

『たいちょ――きゃあぁッッ……』


 コクピット部がえぐり取られ、飛び散った破片がクライヴの額や頬を傷つけていく。スピーカーがフレイアの悲鳴を吐き出したかと思うと、そのまま耳障りなノイズを奏でた。頬から流れ落ちる血を拭いクライヴが彼女の名を呼ぶ。だが反応は返ってこなかった。


「クソッタレが……!」


 レバーを動かしても、ペダルを踏み込んでも機体はうんともすんとも言わない。クライヴは自身の血で汚れたシートに拳を叩きつける。剥き出しになったコクピットの隙間から身を乗り出し、外の様子を伺うと――


 そこに「ヤツ」は居た。


 全身が白い体毛に覆われ、先程までは獣らしく四本脚で飛び跳ねていたそのモンスターは、今は十メートルを超える巨体を起こし二本脚で直立していた。鋭い牙が並ぶその口には金属でできた機体の腕がくわえられている。喉から唸り声が低く響き、全身が淡く発光していた。

 先程の攻撃で受けたダメージにより全身のあちこちから血を流していた。しかし発光の下でみるみると出血が止まっていき、やがてクライヴの眼の前で傷が完全に癒えてしまった。それでも抱いた怒りは消えていないようで、血の色に似た赤い両目がギョロリ、とクライヴを睨んだ。


「……っ」


 クライヴはその存在感に瞬時に飲み込まれた。反射的に仰け反ってシートに背中を打ち付け、震える手で辛うじて生きている通信装置を起動させると震える声で叫んだ。


「誰か……誰か応答しろっ! 地上部隊は……封印に向かった部隊はどうなっているっ!!」

『こち……隊の副長……未だ封印は……成功せず……ぐあぁぁぁぁっ!!』

「おい、どうしたっ!? 応答しろっ!! ……くそぉっ!!」


 幾ばくかの希望を込めた問いかけに、しかし返答は無情。地上部隊と思しき通信相手からもそれきり返事は無かった。

 クライヴは操縦桿に固く握りしめ、もう一度拳を叩きつけた。封印さえ完了すれば全てが報われる。傷つき散って逝った仲間たちも決して犬死では無かったと誇ることができる。

 だが現実は非情だ。百年に一度と言われる災厄をもたらすモンスター。そいつを封印するために結成された各国の機動部隊はすでに壊滅してしまっていた。

 我らはかくも矮小であったか。虎の子の機動兵器を有してもなお奴らに及ばないか。無力さにクライヴはうつむき、絶望に打ちひしがれた。


『隊……長……』

「……フレイヤか!?」


 半分壊れたスピーカーから聞こえてきた声にクライヴはすがりついた。

 良かった、生きていた。喜ぶ彼に、しかしスピーカーからの声は選択を迫った。


『逃げ……てくださ……』

「何を……何を言っているっ! 部下を、お前を見捨ててなど……」

『私は動けま……ん。どう……生き残ってく……い。そして…どうか……あの化物を……』


 途切れ途切れの声は通信のせいか、それとも彼女の状態によるものか。

 クライヴは胸を掴まれるような激情に駆られた。堪らずモンスターの巨大な尻尾で斬り裂かれたハッチの隙間から顔を出し、炎に照らされた空に叫んだ。


「神よ……! どの神でも構わない……! どうか、どうか――」


 如何なる手段でもいいから、みんなを助けてくれ。

 叫び声が木霊し、だがそれもモンスターのつんざくような咆哮でかき消されていった。


「は、はは……当たり前か……」


 神はいても人を救いなどしない。彼らはただ試練を与えるだけだ。クライヴの叫びはこれまでの人生で分かりきっていた事を再認識するのみ。彼は力なく膝を突いた。

 巨大な白いイタチのような姿のモンスターは、倒れ砕けた機体を踏みしめ、口元からはだらしなく涎を垂らしながらクライヴへとゆっくり近づいていった。

 俺を食おうというのか。クライヴはモンスターを力のない瞳で見上げた。もし、自分を食うことでこいつの怒りが静まってくれるなら。部下たちが助かるのならば、それも良い。彼はため息をもらし、観念したように眼を閉じた。

 だがその時、突如として地面が揺れ始めた。


「な、なんだ?」


 立っていられないほどの激しい地震。クライヴは機体に必死にしがみつき、揺れが収まるを待つ。ついで落雷のような音が耳をつんざき、今度は猛烈な風が吹き荒れ始めた。


「ぐぅっ……――なんだ、これは……?」


 おびただしい砂埃に塗れながらクライヴが顔を上げて外を覗き見る。そして唖然とした。

 そこには「孔」があった。何もないはずだった空。そこに黒い孔が突如として出現し、あらゆるものが渦巻く風に乗って孔に吸い込まれていた。草木はもちろん、壊れた機体の破片や腕といった重い物も舞い上がっていく。

 そして――


「■■、■■■■っっっ――!!」


 孔の真下にいたモンスターもまた、その流れから逃れられなかった。手足をばたつかせてもがくも徐々に巨体が浮かび上がっていく。

 鋭い牙が露わになり、形容し難い咆哮が響くも、その声ごと孔はモンスターを飲み込み、白い毛並みを黒く染めていった。

 そうして完全にモンスターの姿がかき消えた。

 直後。


「……っ!?」


 孔が爆ぜた。

 瞬間、ありとあらゆる音が消え去り、空一面が夜とは違う黒に覆われた。視界も聴覚も奪われ、クライヴは機体のシートにしがみついて目を閉じているしかできなかった。

 その状態がどれ程続いたか。永遠にも思える時の中、徐々に音が世界に戻り、閉じていた瞳に血で汚れたシートが映る。

 顔をあげる。何もない。外を見てもただいつもどおりの黄昏空がそこに広がっているだけ。そして、モンスターの姿もそこにはなかった。

 静寂。やがて穏やかな風が彼の頬を撫でた。

 何が起きたのか。混乱する頭ではまとまるものもまとまらないが、冷静な頭であったとしても目の前の出来事を説明することはできないだろうと思った。

 ただ一つ、確かな事は。


「助かった……のだろうか……?」


 そのつぶやきを最後に、クライヴの意識が急速に遠ざかっていく。その感覚を知っている。これは、魔法を使いすぎた時に起きる欠乏症の症状だ。

 確かに多くの魔法を用いたが、まだ使い切ってはいないはず。なのに、何故。

 急速に遠くなる意識。それに抗うことはできず思考は止まる。そして彼は目を閉じ、コクピットのシートに身を委ねたのだった。

お読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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