第84話(万障の森4/薬草探し2)
[八十四]
冒険者のクラスには、勇者級のSSクラスと、神級のUSクラスが存在していた。が、どちらも幻とされていた。
現在、そのクラスに所属している者がいないのだ。
Sクラスになった冒険者の多くはそこで満足するのだが、中には高みを目指し、幻のクラスになるために日々冒険を重ねる冒険者たちがいた。
そんな冒険者が集まる場所のひとつが、ここ、万障の森であった。しかも、向かうのは濃緑で覆われて陽が降りてくることのない森の奥深くに眠っている漆黒の谷付近と言われている。そこに現れる魔物は、強い者ばかりで、SSランクなんて普通にいて、USランクもかなりいるらしく、そこで功績上げと鍛錬をしているのだという。
アスピスたちは、そんな場所へ向かう予定はなく、これまで中心部へ向かってはいたが、今日からは右へ曲がって、中心部から逸れるように進むことになっていた。
昨夜は騒動を起こしてしまったが、周辺を闊歩する魔物を一掃しておいたことで、夜中に奇襲に遭うことはなく済んだ。とはいっても、防御結界が張ってあったので、すぐさま危険に遭うことはなかったのだが、結界から出た途端に大量の魔物の相手をしなければならない状況に陥っただろうことを思うと、魔物が襲ってきた時点で対処しておくのが最良の対処法に思えた。そう考えると、ルーキスが魔物を一掃しておきたいと言ってきた理由も理解でき、とにかくゆっくり眠れたことで、アスピスは昨日のことは忘れることにした。
エルンストに言ってもらった、言葉の効果も大きいのかもしれない。
アスピスは、今日もアネモスに乗って、最後尾をレイスとノトスに任せ、気分良く前へ倣って進み続ける。
そして、どんどんと突き進んで行ったら、高くそびえる岩場に行く手を阻まれた場所へ、突き当たってしまった。
「ありゃ。これはどうしたもんかな」
「できれば、この上に昇りたいんですけど」
「この上かぁ」
ルーキスは考え込むようにして、上を眺める。
「俺や、エルンスト。レイスに、ノトスに、カロエ。それにおそらくシェリスも、この岩場を上ることができると思う」
それだけ、この5人は体を鍛えているということなのだろう。ルーキスの台詞を否定することなく、素直に受け入れるよう頷いていた。
「でも、昇りたいと言っているレフンテは、冒険初心者で体を鍛えることをしていないから論外だろうし、鍛えるのは精神面が重視の精霊使いのフォルトゥーナにも無理だろ」
きっぱりと言い切るルーキスは、遠慮という言葉を棚の上に置き、真実のみを語って聞かせる。
聞いているアスピスも、ルーキスの台詞に納得できたくらいである、指摘された当人たちはより実感していることだろう。
そんなことを考えてたら、ルーキスがハッとするようにしてアスピスのことを見つめていた。というより、アネモスを見つめたのであった。
そして、アネモスの方へ近づいて行く。
「なぁ、アネモス。ものは相談なのだけどよ」
「1人、1メートル幅で長さが1メートル。それ以上はまけられないぞ」
「何人可能だ?」
「我はサイズが変化できるから、全員可能だが」
「ってなると、1メートル幅で9メートルか」
「そうなるな」
「じゃあ、商談成立で。俺から、上に送ってくれ」
「わかった。マスターよ、約束は今夜果たしてもらうぞ」
「え? って、ちょっとまって。今のって……」
もしかして、今のルーキスとアネモスの交渉内容は、結界オーラの幅と長さのことだったの? と、今更のようにアスピスは気づいてしまった。
そして、アネモスは体を少し大きくすると、ルーキスから順々に、みんなを背に乗せて岩壁を器用に走って昇る行為を9回繰り返した。
「いやー、まさかこんな便利な活用方法があったとは」
「特別に、だからな。本来マスター以外は乗せたりはせんぞ」
「分かってるって。ちゃんと幅1メートルに長さ9メートル分のマナはアスピスに用意してもらうから」
「勝手に決めないでよ。それに、なんであたしの分もなにげに計算に入っているの?」
ルーキスがへこへこしながら、アネモスにお礼をしているのだが、アスピスは素直に疑問をアネモスたちにぶつけてみせる。
瞬間、ルーキスが肩をポンと叩いた。
「みんな無事に岩場を乗り越えられたんだ。そのお礼なんだ。頼むよアスピス」
「そ、それはいいんだけど。でも――」
本来なんの条件もいらないはずのアスピスが計算に含まれているのが疑問だったのだが、そこは触れるなと言いたいらしいルーキスの笑みに阻まれて、アスピスは仕方なく訊くことを諦めた。
(なんか、納得がいかない)
再びアネモスに乗りながら、アスピスは小首をかしげる。
反面、アネモスは機嫌がいいようで、足取りが軽かった。
そして、岩場の脇に広がっている、濃緑の木々の葉で出来た屋根を見下ろしつつ、苔の生えた道を歩いていくと、ほどなく岩場が少しずつ下り坂になっていき、結局は濃緑の木々の葉で出来た屋根の下へと戻ってしまう。同時に薄れていた瘴気も元に戻ってしまっていた。
(結界オーラまとっておこっと)
空気浄化を条件とした、オーラを身につけ、アスピスはアネモスに乗ってみんなの後ろを歩き続ける。とはいっても、その後ろにレイスとノトスが歩いていて、常に背後に気を配りみんなを危険から守ってくれているのだけれど。
ここに至るまで、戦闘が数回あったが、Sクラスの5人がその度に飛び出していき、6体くらいまでなら、この万障の森へ入ってから幾度も戦闘を繰り返してきたことで倒し方に慣れてきたのだろう、数分で倒してしまえるようなっていた。
そして、さらに歩くこと数時間。ルーキスが口を開いた。
「今日は、ここらへんで野営を組むぞ」
「え? でも、もう少しで目的の場所なんだ!」
「万障の森での無茶は禁物だ。もう日が傾いている時間だ。夜になると魔物が活発化するしな。明日の朝、改めてそこへ向かうべきだ」
「でも。急いでいるんですよね?」
「レフンテ、気持ちはすごく嬉しけど。ルーキスの言うことを聞いてちょうだい。この中で、彼が一番冒険の数をこなして、こういうことに慣れているの」
「ッ!」
目的地まで、本当に傍まで来ているのだろう。レフンテは悔しそうに手を握り、キツく握り込んでいたが、フォルトゥーナの台詞に逆らうことなく言葉を飲み込んでいた。
そして、昨日同様に、野営地周辺に条件に空気浄化を伴う頑丈な結界を張った後、広範囲にわたり結界を作り出し、昨日同様の条件にて魔物を倒すと、アネモスに頼んで魔物を収集してもらい、男性陣がそろってルーキスの魔物用ボックスに魔物を投げ入れる作業を行う。
それを見ながら、その日はアネモスを相手に、日中のルーキスとの交換条件の上に、たった今行ってもらった魔物集めに対するお礼も含め、アスピスは約束以上に大量のマナを使用してオーラを編み、アネモスが満足するまで食べさせてあげたのだった。
翌日、レフンテの気持ちを察し、みんな早め早めに行動をおこして、食事を早く済ませ、片付けを急ぎ、寝床や野営後の始末を早々に終えると、結界を解いて、その場を後にする。
進行の順番はルーキスとエルンストを先頭に、その後ろにシェリスとレフンテを並べて、レフンテに一歩後ろから向かう先を指示してもらう形を取りつつ、その後ろをカロエとフォルトゥーナが並び、アネモスに乗ったアスピスへと続き、最後尾をノトスとレイスが務めて、目的とする場所へ向かって行く。
そして、昨日レフンテが言っていた通り、本当にすぐ先に目的の場所が存在していた。
そこは丁度、苔に覆われた岩場に囲まれていて、森の他のところより湿気の多そうな、それでいて、岩場が木々を押し退けていることで、陽の当たる場所となっていた。
ただ、問題だったのは、そこに魔物が大量に集まっていたことだろうか。
「ドゥーフ草の匂いは、魔物寄せにもなるそうです」
「そう言うことは先に言っておいてくれよ」
言われていたからと、なにができた訳ではないだろうが。ルーキスはレフンテの説明に速攻で突っ込みを入れてしまう。
「アスピス、俺たちが入れる条件で、結界を張ってくれ。攻撃もしてくれて構わない。ただ、その前に敵を弱体化させてくれ」
「うん、分かった」
「俺たちは、大物から行くからな。多分、SSクラスが多数混じっている感じがする。だから、小物はアスピスにまかせるぞ」
アスピスは先ず素地陣から「結界」と唱えて、広場一帯と、念のために岩場の上の方まで結界の中に入れておく。そして、二重の円を作り出すと、精霊文字で、ルーキスとレイスとエルンストとノトスとシェリスの出入りの許可と、その他の出入り禁止と、魔法の全体化と、死体の形状維持と、魔法の効果の強化に、対象を魔物のみに設定するよう、条件を書いて行く。
「ベタベタ。拘束。鈍足。防御力低下。攻撃力低下。精神力低下。武器攻撃防御率ダウン。魔法抵抗ダウン」
「行くぞ!」
アスピスの呪文を聞いていたルーキスが、みんなに声を掛け、Sクラスのみんなが一斉に結界の中へ飛び込んで行く。
同時に、アスピスは魔法を攻撃に変えていった。
「熱砂の嵐。アイスビーム、咆哮、ファイアアロー、灼熱の雨、雷の矢、火炎弾、ライトニングボルト、アイススピア、宇宙の礫、ファイアボール、スリープ、エネルギー・ボルト」
レシピの中から適当に目につく術を次々と唱えている間、上から何体もの魔物が転がり落ちて来たところを見ると、岩場の上にも魔物がいたということだろう。
そう思いつつ、大物がいないことを祈りながら、術を止めることなく唱え続けていると、大物以外の魔物は一通り魔法で一層できたようであった。
そして、大物の魔物もアスピスの魔法でかなり弱っていたことで、それなりに時間はかけていたが、中に入って行った5人が順調に魔物を倒していった。
「これで、最後か?」
「みんなガンバレ!」
お互いに声を掛け、みんなで最後の一体の魔物を追い詰め、最後の一撃を与えて魔物を倒した次の瞬間、岩場の上からこれまでの魔物よりも数段大きな魔物が飛び降りて来た。
「条件、魔法の全体化消去。魔物の一体集中化」
精霊語を書き換え、条件を一瞬で変えてしまう。それに続けるようにして精霊術を唱え始めた。
「灼熱地獄、穢れなき炎の矢、アイストルネード、フレイム、雷光、閃光弾、無数の刃、異形なる旋風」
それなりに効果はあったようで、魔物の膝が地面に着くのが目に留まる。
(ここまでくれば……)
後は大丈夫。そう思い、アスピスが油断した瞬間、胸に二重の痛みが思い切り走った。
久しぶりの感覚である。服の胸元を握り込み、倒れかけたところを、アネモスに支えられる。
「アネモス、行ける?」
「加わってよければ、行くが?」
「お願い」
レイスとエルンストが魔物の爪で弾かれたようである。
傷は瞬時に治ったようだが、魔物にはそれだけの力がまだ残っているということである。
アスピスは条件に、アネモスの出入りを許可するものと、使い魔への攻撃をしないことを精霊文字で書き加える。
(怒られるかもしれないけど)
それでも、あの2人が、かなりの深手を負わされたのだ。
しかもレイスに至っては、深い怪我を負い意識が朦朧としている状態で、カロエに頼まれて、アスピスが無理矢理契約させたことで、怪我を回復させたという経緯はあったが、それ以来大けがを負ったことがなかったようなのだ。その上、イシャラル王国の兵士に捕らえられ、前戦でエルンストとルーキスが怪我を負いつつ戦っている最中、アスピスがとても苦しんでいた姿を目の当たりにしてきたことで、怪我を負いそれを回復させてもらうことに対して、嫌悪感みたいなものを持っているようだった。
だから、意識がはっきりしている状況で、最悪死ぬかもしれないような深手の怪我を負わされた状態から、瞬時にアスピスのマナが大量に注ぎ込まれ、怪我を負った次の瞬間には怪我が無かったもののように完全に回復するという現象を体験するのは、レイスにとって初めての経験だったのではないだろうか。
ショックを受けていないといいのだが。と、思いつつ、SSランクという強さを秘め持つアネモスにすべてを託すことにする。
そして、結界内で本来の大きさに戻ったアネモスは、魔物に向かって突進していき、急所となる首元に思い切り噛みつく。それを阻もうとする魔物が暴れまわるが、アネモスは決して口を離すことはせず、徐々に牙が深く食い込んでいくのが見ていて分かる。そして、魔物の動きが鈍って来たことで、ルーキスが法陣カプセルを使い、勢いよくジャンプをすると、魔物の背中に回り込み、首の付け根から剣を思い切り差し込んでいった。
それと同時に、アネモスも牙を魔物に思い切り食い込ませ、双方から魔物の息の根を止めた。
そこからは、巨大な魔物の首は念のために切り落とし、魔物をルーキスの魔物用ボックスに次々と放り込んでいく。そして、一層した後、アネモスが岩場の上から岩場の上で倒れていた魔物の山を落としてきたことで、男性陣は更にひと仕事させられ、なんとかこの場から魔物を一掃させることに成功した。
そして、その後、結界を解いて、みんなで中に入ってみたが、薬草らしきものはどこにもなかった。
「アスピス、結界で空気を清浄化してくれないか?」
「うん。いいけど」
アスピスはあっさり頷くと、先ほどと同じサイズの結界を張り、条件に空気の清浄化と書き加える。
すると、岩場に生えていた苔から、どんどんと葉が伸び茎が伸びていき小さくてきれいな花を咲かせ始めた。
「これが、ドゥーフ草です。瘴気に弱いので、密封された容器が必要となります」
そう言うと、レフンテはアイテムボックスを開いて、採取用の密封容器を取り出してみせた。
「早く取ろうよ」
「えぇ。ありがとうレフンテ。頼りになったわ」
アスピスの促しに、フォルトゥーナは嬉しそうに告げると、ドゥーフ草を丁寧にひとつずつ摘んでいき、密封容器に入れていく。そして、容器がいっぱいになると、しっかりと封をして、アイテムボックスにしまい込んだ。
――目的、達成かぁ。
これで今回の冒険の半分以上が済んだと、アスピスがホッとした瞬間、アスピスの意識がそこで途切れてしまう。
昨日一昨日と、地味に、広範囲にわたって結界を作り、精霊術を常よりも多く発動させて大量の魔物を倒した上に、昨日の、アネモスにマナを大奮発して、結界オーラを作って食べさせたことが最大の要因となり、今回のやはり地味に広範囲にわたった結界を作り、戦闘に参加して精霊術を使いまくったことと、レイスとエルンストが深手を負った怪我を治したことで、マナの使用量の限界値に達してしまったようであった。
気を失っているアスピスをアネモスの背に乗せた状態で、レフンテの頭に入っている地図を利用して、途中魔物と何回か戦いながらもフォルトゥーナの精霊術の援護を受けながら魔物を倒していき、2日かけて森の脇から万障の森を抜け出すことに成功すると、エルンストに馬車を出してもらい、中央に布団を敷くとアスピスをそこに寝かせて、アートルムの町へ向かう。
そして、森から抜け出した場所が街から少し遠い場所だったため、予定より時間をかける形でその日の夜に、アートルムの町へ到着した。
そこでまず、魔物退治の報酬を得るために、冒険者ギルドへ寄り、地下の解体室へ魔物を預けると、体数が多かったことで、その結果を1時間近く待つことになってしまう。そして魔物退治の申込者であるルーキスの名前がようやく呼ばれた。
「URランク1体、SSランク31対、Sランク48体、AAランク49体、Aランク、Bランク、Cランク複数。以上が今回していただいた魔物の退治数となります。コア、アイテム、肉類は換金してよろしいということでしたので、報酬はこちらになります。功績は平等でよろしいのでしょうか?」
思わず、みんな内心で、万障の森ってSSランクが普通に闊歩しているようなそんなにすごいところだったのかと驚きつつ。平静を保ちながら、受付の女性の話を聞いていた。
「はい。全員平等でお願いします」
ルーキスはそう言うと、みんなそれぞれカードを出し、アスピスの鞄からもパスケースを差し出して、功績をみんな平等に分けてもらう。
その途中、カードが一度光った。
今回は、場所が万障の森であったこともあり、功績をかなり高くもらうことができ、レフンテがCクラスに昇格したのだ。
「クラスアップおめでとうございます。ポイント的にはBクラス分まで溜まっておりますので、次の冒険でBクラスへ昇格できます。初めての冒険が万障の森で、大変だったでしょう。これからも頑張ってくださいね」
受付の女性が笑みを添えてレフンテにお祝いと説明をしてくれるが、レフンテは複雑そうな表情を浮かべただけであった。
そして、アネモスを足元に連れ、アスピスを抱き上げていたエルンストは、ある種冒険者たちの注目の的であった。予測通り、口の軽そうな女戦士のせいで、アスピスの噂が流れているようではあったが、問題となる子供の様子が何か変だと感じ、周りは状況を見ているようだった。
これで功績の配布が無事終わり、報酬をルーキスが預かるところまできて、もうひとつの大事な用事を済ませようとしたところで、フォルトゥーナとシェリスがアスピスを残して帰れないと言い始めた。
「やっぱり、私も残るわ」
「私も、残った方が……」
「フォルトゥーナは孤児院で病気の子が待っているんだろ。それにシェリスだって仕事が入っちまったんだ。お前らは結界で転送してもらうんだ。六聖人だから、すぐに許可がおりるだろ」
冒険者ギルドに立ち寄った2つ目の理由が、これである。
なんとかこの場に留まろうとする2人に、ルーキスが強引に転移用結界の使用申請を出させ、身元を確認されると、すぐに使用許可が下り、フォルトゥーナとシェリスは心配そうにしながら王都へ帰って行った。
「あとはとにかく、屋台かどっかで、手で掴んで食える飯と飲み物と、それから今日泊れる宿屋を探そうぜ」
「あぁ」
ルーキスが告げると、エルンストは頷き。どこか落ち込んでいるレイスを引き連れるようにしてカロエが追いかけ、その後ろをノトスとレフンテがついて行く。
そして途中にあった屋台で、手づかみで食べられるものと飲み物を買うと、食堂のない宿屋を探す。そして、適当なところを見つけると、空き部屋を聞き、8人部屋が埋まっていることで、6人部屋を借りることにした。その際、追加料金でアネモスも入れるよう手配する。
その後、宿屋の主人に部屋を案内してもらい、エルンストは自分の寝るベッドにアスピスを横にさせると、布団をかけてやる
「今回はちょっと、ムリさせすぎたな。悪かった」
「俺たちも、つい、こいつのマナが無限大だと思って、頼っちまうところがあるからな」
「特に、今回は俺が怪我をしたりしたから」
「それは、俺も同じだ」
レイスが未だショックから立ち直れずにいることに、エルンストとルーキスは心をちょっと痛ませる。
2人は、これを散々繰り返してきたのだ。
「とにかく、原因は精霊力の使いすぎでマナの消費量が限界値を達したてことは分かっているんだ。寝かせるしかねぇんだから。ゆっくり寝かせてやろうぜ」
「そうですね。とにかく、アネモスにご飯をあげないと……」
落ち込んでいても、最低限のやるべきことはしっかりとやるレイスである。トレイに大きなスープ皿を並べると、一方には山盛りの肉を。もう一方には水を入れて、アネモスに食べさせる。
その後、報酬を今回参加した人数分で分け、フォルトゥーナの分はレフンテに。シェリスの分はルーキスが。アスピスの分はエルンストが持つことにして分配を終えると、みんなで屋台で買ってきた食べ物と飲み物をお腹に入れると、それぞれ眠る準備を始める。
これ以上やることもなかったため、この日は早々に寝ると、次の日は早めに宿を出て、朝市で朝食と飲み物を買うと、町の門の外へ出て、エルンストがアスピスを抱いているために、ルーキスがアネモスと馬車を引き出してくる。
「では、今日は俺たちが御者役をやりますから。アスピスのこと、くれぐれもお願いしますね」
「いわれなくても、ちゃんと見てるから安心しろ」
レイスの台詞に、エルンストが苦笑して返すと、レイスとノトスが御者席に座る。その後、カロエとルーキスと、アスピスを抱いたエルンストとレフンテが馬車に乗るのを確認すると、2人は馬車を走らせた。
そして、みんなに朝食と飲み物を配り、それぞれ食べ始めたのだが、エルンストはアスピスを抱いた状態で、じっと過ごしていた。
これが初めてのことではないのだが、出始めていた熱が徐々に上がっているのが、エルンストには気になっていた。
そして、この日は適当な木の下で野営をし、ちょっとアネモスに無理をしてもらう形で、翌日は早朝から出発をして夜になるころに、みんなは王都へ戻ってこれた。
その間にも、アスピスが目を覚ますことはなく。熱は上がっていく一方であった。
誤字脱字多発中。少しずつ直していきます。すみません。




