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第59話(六聖人のお仕事Ⅱの1/顔合わせ)

[五十九]


 ナグラーダが主催のパーティから、約半月が過ぎようとしていた。

 その間も、アンリールに色々と学ぶために王城へ通い続けていたのだが。それ以外の空いた時間は、パーティ終了後になぜだかすごい剣幕でエルンストから恋愛小説を読むことを禁止されてしまい、仕方がないのでアスピスは勉強の本を読んで過ごしていた。

 そして、日課の昼のポストのチェックの際に、王国管理室からの手紙が届いていることに気が付いた。

「王国からの仕事の依頼なのかな?」

 見覚えのある封筒と送信者からそう思い、封を開けると、中に入っていた三つ折りに畳まれた用紙に、四人の名前と仕事の内容が記されていた。

『六聖人(黄)のエウリュ,六剣士(黄)のエルンスト,王国管理室所属の八式使いのアスピス,王国管理室所属の騎士のプリヨームの四名。

 ロトンドの町の定期的な結界棒の精霊の補充と結界の強化。それと、町の調査をしてくること。キセオーツ王国側に怪しい動きがあるとの噂あり。

 出発は一週間以内でお願いします』

 前回は、仕事の参加者は書かれていなかったことを考えると、仕様が変わったのかもしれない。

 そんなことを考えながら、今回も一緒に仕事できるらしいエルンストにこのことを報告しようと、アスピスは隣の部屋のエルンストを訪ねた。

 扉をノックして、エルンストの名前を呼びながら、ノブを回して扉を開ける。中を覗くと、誰もいなかった。

 部屋の中は、アスピスの部屋とは壁を挟んで対象的な形で家具が配置されていて、アスピスの部屋に最初はなかった木製のハンガーラックが部屋の奥に置かれていた。

 なんとなく感じていたのだが、アスピスの部屋にあったハンガーラックは、本来の持ち主であるルーキスが家を出るとき、持って行ったらしいことが判明した。

(まぁ、そのおかげで、好みのハンガーラックが買えたから、いいんだけどね)

 アスピスの部屋に置かれたハンガーラックは、この家に来てほどなく、必要に感じて買いに行ったもので、一目惚れして購入を決めたものであった。

 それはそれとして。本題となる、用事の方なのだが。中に入って待つかどうか考えていたら、背後にいつのまにかエルンストが立っていた。

「なにやってんだ? 俺の部屋を覗きこんで」

「あ、その。王国管理室からこれが届いたから」

「あー。仕事か。今回は俺の対が一緒なのか。ってことは、お前用の護衛は騎士のプリヨームって奴ってことか」

 アスピスに差し出された手紙を開き、その内容を読みながら、エルンストは独り言を洩らし、納得したような様子で、アスピスに手紙を返してきた。

「お前の時間が空いているなら、これから行ってくるか?」

 どうやら時間に余裕があるらしいエルンストの問いに、アスピスは素直に頷いた。こういうことは早めに済ませた方がいいと思ったからだ。



 六剣士の王城用の正式衣装を身に着けたエルンストと共に、常よりもフリルが多めの膝丈ワンピースと可愛い花型の肩掛け鞄を持って、アスピスは王城へ向かって行った。

 手術をしてもらったおかげで、家から王城までと、王城の中を少しなら歩き回れる程度に足の調子は良くなっていた。ただし、カメの歩みであった以前に比べたら全然早いのだが、それでも歩調はゆっくりというのが前提であった。

 そのため、自分の足で歩くと、王城までそれなりに時間を要することになる。けれども、エルンストは文句も言わずに、アスピスの歩調に合わせて歩いてくれる。ただ、抱くことはしなくなった代わりに、歩調の速度が分かりやすいからと、手を繋いで歩くことが増えていた。

 もちろん、足が限界に来た瞬間、問答無用で抱きかかえられるのだが。

「エルンストの対のエウリュさんて、どんな人?」

「まぁ、美人なんじゃねぇの? 俺より一つ上だったかな。ちょっとキツめだけど、至って普通の人だと思うぞ」

「そうなんだ」

 知り合いの六聖人である3人しかよく知らないことで、アスピスは好奇心でいっぱいであった。

 そして、王国管理室と書かれた場所に到着すると、窓口に近づき挨拶をする。

「お久しぶりです。お仕事の依頼が来たので受けにきました」

「あ、これはエルンスト様とアスピスさん。ご苦労様です。って、そうそう。アスピスさんですが、表向きは王国管理室所属ということで、お呼びするときは『様』でなく『さん』とさせていただくことになりました。複雑なお立場なので、ご不快かと思われますが、ご了承ください」

 敬称が変わった都合を男は謝罪しながら、その理由を説明してくるが、アスピスとしては正直どうでもいいことであった。

「それは、全然かまわないです。管理室の方で適した呼び方でお願いします」

「ご了承、ありがとうございます。それでは、仕事をお受けになってくださるとことなのですが」

「また、こいつと一緒になったから、手続きを一緒に済ませてくれ」

「あぁ、そのことですが。シェーン様からのご命令で、アスピスさんに仕事を依頼するときは、エルンスト様と必ず組ませるようにと。エルンスト様が無理な場合は、レイス様が必ずご一緒になるようにとのことでして。確かに、アスピスさんのご事情を考えると、お2人のいずれかがご一緒であるべきだと、管理室の方も考えまして。そういうことになりました」

 にこにこと受付窓口の男性は、エルンストとアスピスに一緒の仕事が回された事情を説明してくれる。

「それで、アスピスさん。コンタクトの方の調子はいかがですか? 瞳に傷がつきにくいソフトなレンズを使用してみたのですが」

「とても使いやすいです。いつもありがとうございます」

「いえいえ。これも管理室の仕事ですので。なにか不都合なことがありましたら、迷わず管理室にご相談ください。アスピスさんのご事情は把握させていただいておりますので、管理室一同ご協力を惜しまぬよう、シェーン様から固く命じられておりますので」

「そのときはお願いします」

 アスピスはそう言うと、鞄から手紙を出すと、窓口に差し出す。そして、依頼の受付を済ませたことを示す丸受マーク印を押してもらった。同時に、エルンストも処理を済ませると、窓口の男性に問いかけた。

「それで、俺の対と、管理室所属の騎士だけど、そっちはもう手続きは済ませてあるのか?」

「いえ、送付してからまだそんなに経っていないので、もしかしたら手続きに来るのは、明日になるかもしれませんね」

「そうか、分かった。手続きに来たら、双方へ俺に連絡をくれるように言っておいてくれ」

「了解しました。エルンスト様へ手紙を送付するようお伝えしておきます」

「じゃあ、頼んだ」

 エルンストはそう告げると、依頼書を受け取り、帰路へつく。その途中、足の限界のきたアスピスに気づいたエルンストは、素早くアスピスに腕を伸ばすと抱き上げた。

「ずいぶんよくなったな」

「うん。でも、この辺が限界みたい」

「これだけ歩けるようになったんだ、欲を出したらきりがないんだ。この辺で満足しておけ」

「うん。あたしもそう思うことにしてる」

 エルンストの台詞に、アスピスも同意するよう応じると、エルンストの首に手を巻き付ける。

 すでに上位職専用の区域から出ていたことで、影や遠目からエルンストを見つめる女性から、非難の悲鳴が上がるのが聞こえてくる。

(ちょっと、面白いかも)

 悪戯心をだして、試してみたのだが、想像以上の反応があり、アスピスはおかしくなってしまう。しかし、エルンストにはアスピスの行動の理由が、分からなかったようであった。

「どうした?」

「そういう気分なの」

「面白い奴だな」

 アスピスの返事におかしそうに笑うと、アスピスの好きにさせておくことにしたらしく、それ以上は何も言わずに家へと帰る。

 そして、エルンストと共に、今回同行する他の2人からの連絡を待つことにした。



 翌日になって、2人と連絡が取れたらしい。エルンストに連れられて、冒険者ギルドが運営しているという食堂へ出かけることになった。

 初めて会う人たちなので、ちょっぴりおしゃれをする気分で、手作業で作ったと思われる細かな柄のレースが付いている膝丈のワンピースを着て、ちょっぴり大人ぶり革製の茶色の鞄を肩から掛けて、エルンストと共に目的の店へ向かった。

 店内の作りは簡素で、如何にも冒険者ギルド直営といった感じの店であった。ここもギルド同様に24時間営業らしい。冒険者が多く行き交う町などで出店しているそうだ。

 その店の一角に、エルンストは向かって行くと、先に到着していた2人が座っていたらしく、エルンストの存在に気づくと、サラサラの白金の髪を腰まで伸ばし、青い瞳をした妖艶な雰囲気の美女は軽く手を掲げ、真面目で気のよさそうな、茶色の短髪が重力に反して立っているにツンツン髪、蒼い目をした騎士は椅子から立ち上がると一礼してきた。

「早く来すぎちゃって」

「俺は、今回同行させていただく、管理室所属の騎士でプリヨームと言います」

「遅くなってすまない。俺は六剣士(黄)のエルンスト、こっちの小さいのは管理室所属の八式使いのアスピスだ」

「よろしくお願いします」

 エルンストに紹介してもらったことで、アスピスは挨拶とお辞儀だけで済ませる。

 すると女性が笑みを零して自己紹介をしてきた。

「私は、エルンストと対の六聖人(黄)のエウリュよ。よろしくね、お嬢さん」

「それで、ロトンドの町への行き方なんだが」

 アスピスに傍らに座るよう指示しながら、エルンストもイスに腰かけながら、早速とばかりに用件を繰り出す。その間に、メニューを伺いにウエイトレスが来たため、エルンストはホットコーヒーとオレンジジュースを頼むと、そのまま話を続けていく。

「アスピスの足が悪いんで、馬車で移動させてくれ。馬車はこっちで用意してあるから」

「あら、そうなの。私は別にそれでかまわないわよ。その方が楽だし」

「俺もそれでかまいません。その方が赤道沿いにある町ですし、野営が二回くらいで到着できるはずですから。有り難いくらいです」

「助かる」

 エルンストは、2人の反応に礼を言うと、話を先に勧めていく。

「それで、出発はいつにする? こっちは合わせられるが」

「私もいつでも大丈夫よ。準備はいつでもできているから」

「俺も、明日にでも出発できる状態です。皆様に合わせられます」

 運ばれてきたコーヒーを脇に退け、テーブルに腕を乗せて2人と語り合っているエルンストの脇で、アスピスは同時に運ばれてきたオレンジジュースを飲んでいた。

 雰囲気的に口を挟める感じではないのだ。完全に3人にお任せ状態という感じである。

 アスピスを置き去りに、3人で色々と話し合った結果、出発は明日の午前中になったようである。

 今回はレイスがいないので、冒険時用の調理用具一式や食器や食料などの買い物をしなければと思いながら、アスピスは話を聞いていた。

 そして話がまとまり、解散となったところで、みんなの意識がようやくアスピスにも向けられてくる。

「それでは、みなさん。明日からよろしくお願いします。アスピスさんとは、今回対の役をさせていただくことになると思いますので、お互い頑張りましょうね。では!」

「話し合い、お疲れさまでした。プリヨームさん、対の役よろしくお願いします」

 一番に席を立ったプリヨームに、アスピスは慌てて挨拶をして返す。対して、自分たちの方が上位だと思ってなのか、エウリュもエルンストも、気軽な感じで「また明日」と返して、別れを告げていた。

 そのあと、エウリュとエルンストが同時に立ち上がる。

「じゃあ、明日からお願いね。お嬢さんてば、期待の新人らしいじゃない。ノトスからも噂は聞いているわ、よろしくね」

「はい。まだ一度しか仕事をしたことがないので、分からないことがたくさんありますので、その時はよろしくご教授ください。明日からよろしくお願いします」

 カチンコチンに固まって、艶のある笑みを浮かべる女性に向けて、アスピスは頭を下げる。その様子がおかしかったのか、笑みを深めながら「じゃあ、明日ね。さようなら」と告げて去って行った。

 結局最後となったエルンストとアスピスは、自分たちの頼んだものの会計を済ませようとしたら、プリヨームがすでに支払いを済ませてくれていることが分かり、明日お礼を言わなければと思いながら、ギルドが運営している食堂を後にする。

 ギルドの運営だけあって、こういう話し合いの場にはちょうどいいのだと、エルンストが後から教えてくれた。イートインコーナーの使われ方を参考に、ギルド側もそう思って作ったようである。そのせいか、造りは非常に簡素だが、長時間いても大丈夫そうな雰囲気ではあった。

 その後、エルンストが今回は非常食で済ませるから問題ないということで、アスピスは今後も使えるからと言われ、非常食を数種類箱買いさせられてしまった。

 そのため必要ないと言われたのだが、今後役に立つかもしれないからと、冒険者用の道具が揃っている店に連れて行ってもらい、野営用のトレイや食器類一式と調理道具一式。それから、水の法陣カプセルが差し込まれているピッチャーと洗面器。アネモスの食事用のかなり大き目の木製のスープ皿を2つ、と大量のタオル。それから、中身の入っていない法陣カプセルを5つほど購入する。

 それから食材や調味料などが大量に売っている店に入り、食材や調味料を適当に選んで購入する。そして、いつもはレイス任せだが、今回はアネモスの食事の管理もしなくてはならないので、肉のコーナーで、アネモス用の肉を店に頼んで適当な大きさに刻んでもらって大量に購入しておいた。

 冷蔵棚がそのおかげでアネモスの肉が大半を占めることになったが、アネモスの飼い主として仕方がないと思いつっていたら、エルンストの助言で、日常生活でも冷蔵棚は便利なものだからと説明されて、法陣カプセルがすでに差し込まれていて、温度設定もすませてある倉庫用の冷蔵棚をもうひとつ購入しておくことにした。

 それから、アイテムボックスにしまっておけば、購入時の状態を維持し続けてくれることから、レイスが愛用しているパン屋に連れて行ってもらい、レイスが旅先で便利に使っているパンを大量買いして、先ほど買った棚に入れておくことにする。

 一応、これで一通り買いたいものは買ったはずである。そう思いはしたが、普段本当にレイス任せだったことを反省しつつ、あとでレイスに確認することにした。

「これで、満足か?」

「うん」

「普通は保存食で食事は済ませるから、本当に必要なんてないんだぞ。レイスが例外なんだから」

 エルンストが溜め息を吐きつつ、これまでの道中には必ずレイスが同行していたことを思い出しながら、少しばかりアスピスとレイスの距離を取らせた方がいいかもしれないと、エルンストは思ってみたりしてしまう。

「じゃあ、帰るぞ」

 エルンストはそう言うと、アスピスを抱え上げ、帰路へ着く。

「未だ、足、平気だよ」

「そろそろ限界の来る頃だ」

「そうかもだけど……」

 しっかり観察されていることを感じつつ、アスピスは返す言葉を失うように、大人しくエルンストに抱かれた状態で、家に帰って行った。



「あ、お帰りなさい」

「レイス、ただいま」

「ただいま」

 テーブルにてコーヒーを飲んでいたレイスが、出迎えてくれたことで、アスピスはエルンストに下ろしてもらう中、レイスに挨拶を返す。そして、アスピスを下ろし終えたエルンストも挨拶を返す。

「じゃあ、俺は2階に行っている」

「うん。運んでくれてありがとう」

 エルンストは宣言通りに、アスピスのお礼を聞きながら、2階に向かって歩き出す。それを見送り終えると、レイスに冒険時の調理に必要なものを確認することにした。

「普通は、保存食で済ませますから。そういうものを用意する必要はないですよ」

 最初に言われたのはエルンストと同じ台詞であった。

 でも、もしかしてということもあるし。と、粘ったら、アイテムボックスを開いて、アスピスの使用許可を出してくれ、中を見せてくれた。

 そのおかげで、多数あるレイスのアイテムボックスのひとつは、食糧庫となっていることが判明した。そして入り口を入ってすぐに、パン用の棚が置かれていて、いくつものパンが種類ごとに分けられ並べられていて、その棚の片隅にパンを入れるのカゴが数個重ねられていた。これは、朝食用のパンだと見てわかる。

 さらに、逆側の入ってすぐのところには、大型の冷蔵棚が3つほど並んでいた。ひとつはアネモスの肉用らしい。今までいかにレイスに頼っていたかが分かってしまった瞬間である。

 その脇には調味料が並べられている棚があり。そして、その奥に食器やら調理用具やらが棚に綺麗に並べられていた。

「他の倉庫に空いている棚があるので、それを上げますから。今日買ってきた食器や調理道具とか、調味料は一時的にそれに入れておくのがいいですよ」

「うん。ありがとう」

「それで、旅先での野営時の調理道具と食器類でしたね。だいたいこの辺がそうでしょうか」

 レイスに促され見てみると、色々と取り揃えているのがわかった。長年かけて、必要だと思うものを買い足していったのだろう。

 一朝一夕で真似できるものではないと分かった。

 そもそも、調理ができないアスピスには不可能だったことを、今さらのように思い出す。

 そんなアスピスの様子から、アスピスがなにを考えているのか分かったのだろう。レイスがくすりと小さく笑う。

「家で使う調理用のナイフより、旅先で使う調理用のナイフの方が、万能性が高いので、取り扱いが難しいですから。今回は素直に保存食で済ませるのがお勧めですよ。コーヒーくらいはエルンスト辺りが用意すると思うので、そのときお手伝いでもすれば十分ですから、無理はしないでくださいね」

「うん。そうする」

「では、アスピスの倉庫を開いてくれますか? ついでに許可もお願いします。使っていない棚をそちらに移しますので」

「ありがとう」

 アスピスは色々な意味を含ませお礼を述べると、レイスのアイテムボックスから出て、自分のアイテムボックスを開くと、レイスの使用許可を出す。そして、空いている棚を譲ってもらった。

 そこへ、レイスに手伝ってもらい、今日買ってきた食器類や調理器具。その他雑貨を並べる終えた後、空いたスペースに調味料を並べて行った。そして一番下の段に、本日エルンストに言われて購入してきた数種類の保存食を並べると、さすがに棚がいっぱいになってしまった。

 水の出るピッチャーと洗面器と、アネモス用の食器は冷蔵棚の上に置く。

「そういえば、アネモスの肉は大丈夫ですか?」

「うん。これだけ買ってきた」

 冷蔵棚を開いてみせたら、レイスが中を確認してくれる。

「ちゃんと、切ってもらってきたんですね。日数的に問題ないと思います。足りない時は向こうの町で買い足せばいいのですし」

「うん」

「その時も、ちゃんと肉を切ってもらってくださいね。本当に、冒険用のナイフは家庭用よりも危険ですから」

「分かったよ」

 心配そうに告げてくるレイスに、アスピスは笑みを零して了承の返事をする。それで納得したのだろう、レイスはアスピスのアイテムボックスから出て行った。

 そして、アスピスもその後に続き出て行こうとして、もらったばかりの棚へ視線を向ける。

 購入一回目にしては大量に買ったとは思うが、棚ひとつで収まる量であることから、レイスとは比べ物にならないと実感させられる。

「アスピス。料理ができるようになるのは、これからですから。期待してますよ」

「うん。将来的に使えるように、頑張るよ」

「それがいいと思いますよ」

 アイテムボックスから出て会話をしながら、、互いに互いの使用許可を取り消すと、アイテムボックスを閉じる。

(まず、家庭用のナイフの使用許可を得るところからか。それと、火を使った料理を任せてもらうことだな)

 そこから始めないと、料理を覚える段階に至れないことで、なるべく早くレイスに許可をもらえるようになるよう頑張ることに決める。

(ただ、レイスって心配性だからなぁ)

 これまでやらせてもらえなかったのは、それが原因でもあった。

「どうかしましたか?」

「ううん。初めての人が2人もいるから、明日からちょっと緊張するなって思って」

「大丈夫ですよ。エルンストもいることですし。エルンストの対の方も、フォルトゥーナとはタイプが違いますが、とても美人なので、最初は気後れしてしまうかもしれませんけど、接してみるとごく普通の女性ですから」

「うん。がんばる」

 人見知りする方ではないと思ったのだが、実は意外と人見知りするタイプなのかもしれないと、自分の考えに訂正をいれつつ。今日の3人の様子を思い出し、2人ともごく普通の人だったなと感想を抱いたことで、アスピスは少し落ち着く。

「休憩中に、ごめんね」

「かまいませんよ。用がなくて休憩していただけですから。それより、出発日は近いのですか?」

「うん。出発は、明日だって。2階で用意してくるね」

「はい。忘れ物、といってもすべてアイテムボックスに入ってますからね。使うものを入り口脇の棚に移しておくのを忘れないようにしてくださいね」

「うん。整理忘れないように気を付けるよ」

 それじゃあね。と、明日の準備をするために、アスピスは2階へ向かって歩いて行った。

 そして、みんなが色々なサイズのアイテムボックスを何個も持っている理由が、少し判明した気がしたアスピスであった。

誤字脱字多発中。少しずつ直していきます。すみません。

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