第43話(ファナーリの町2/依頼掲示板より荷物のお届け2)
[四十三]
二泊目の野営も無事済ませ、目的地となるファナーリの町に、予定通り午前中に到着する。
町と付くだけあって、この町の住人の数も多いのだが、人が多いのにはそれなりの理由があるらしい。
歩かなければならないのでそれなりの日数がかかりはするが、すぐそばの山脈の中には遺跡があったり、馬車で一日行ったところには、キャンプ場としても有名な水質のとても綺麗で大きな泉があったりすることで、訪れる冒険者や旅行者の数が自然と多くなり、活気に満ちているとのことだった。
アイテムボックスも高価で貴重なものなのだが。冒険者でも、上級にならないと手に入れることができないくらいには、ポストも貴重品なのだそうだ。だから、大きな町限定ではあるが郵便屋さんがあるにはあるが、郵送は不定期で、事故も多いらしい。その他に、各郵便屋にポストが置いてあるので、ポストのある町同士ならそれを使って送り主のいる町の郵便屋に荷物を送ることもできるらしく、その場合はかかる日数も減り事故率もぐんと下がるのだそうだが、今回の依頼人は子供である。郵便屋にポストを使わせてもらうような知恵も働かなければ、お金も足りなかったようである。
そのくらい、低額の依頼を、カロエは引き受けたのであった。
気持ちいいくらいの、お人好しである。
アスピスの気分としては、カロエの頭を撫でて『いい子だね』と言ってあげたいくらいであった。怒られるのでやらないが。
「さってと、荷物の届け先を見つけないとな」
エルンストが、アネモスに頼んで馬車をアイテムボックスにしまっている間に、カロエは依頼主の情報が載っている紙を開く。
そこには、送り先の住所と名前が載っていた。荷物は無くさずにすむように、カロエのアイテムボックスに大事にしまっているそうだ。
「場所は分かりましたか、カロエ?」
今回の先導者はカロエである。案内を任せるように、レイスが問いかけると、カロエが元気よく頷いた。
「なんとかなりそうだ。住所だけじゃなく、簡単だけど、親が書いた地図もついているし、周囲の目印も書いてあっから。」
「ふーん。じゃあ、行ってみる?」
そう聞きながら、アスピスがアネモスへ乗ろうとしたら、エルンストに留められ。エルンストの腕に捕らえられてしまった、
「アスピスは、こっちだ。この間のように悪目立ちしては面倒だからな」
「我は気にせぬというのに。見せびらかせばよかろう、我らマスターの強さの証じゃ」
「お前は黙って、後ろからついて来い。できればもっと小さくなってもらいたいくらいだ」
エルンストはそう言うと、カロエを促し、町の中へ入って行くと、先ずは冒険者ギルドの一角にある、この町の案内所に向かった。
カロエはそこの窓口に行くと、依頼書に書いてある住所を指さしながら問いかけた。
「ここなんだけど、この町のどの辺りか分かりますか?」
「あぁ、その住所ですか。それなら簡単よ。この町の四つあるそれぞれの入り口からまっすぐ伸びている十字路になっている中央通りの、西から東に通っている側の道の、大広場がある北西とは道を挟んで反対側の、北東側の脇道に入って二本目の通りのはずよ」
ギルドの方で案内用に用意されている地図を指さしながら、受付の女性は、カロエに丁寧に説明してくれる。
「ついでに助言しておくと、最初に宿屋を確保することをお勧めするわ。大広場の周辺は多分もう無理だけど、東や南側の大通りにある宿屋ならまだ空きがあるはずよ」
「なんかあるんですか?」
「あら? やっぱり知らないで来たのね」
女性はそう呟くと、楽し気に笑ってみせた。
「年に一度の、花祭りがあるの。この町の豊作や冒険者の大猟。それと子宝と安産を願ってのお祭りで、恋の成就を祝うお祭りでもあるのよ」
「華やかそうですね」
「えぇ、このために花を育てている農家もあるくらいだもの。花びらが舞っててとても綺麗よ。時間に余裕があるようだったら、ぜひ見て行って。今、それを目的に町に人が集まって来ているくらいだもの」
「そうなんですか。いつなんですか、その祭りって」
「3日後から一週間行われるの」
今から待ち遠しいと。女性は心から花祭りの開始を待っているらしい。声音からそれが伝わってくる。
「いろいろとありがとうございました。時間に余裕があったら、ぜひ見学させてもらいますね」
カロエはそう言うと、軽くお辞儀をして、みんなの元へ戻ってきた。
「先ずは、宿屋だって」
「らしいな。早速探さないとな」
カロエの台詞に、話は聞いていたと、エルンストが応じる。
「では、先ず宿屋探しから始めましょうか。泊まるところがないと、町の外で野宿になってしまいますからね」
「そうね。せっかくなら、ベッドで寝たいものね」
レイスとフォルトゥーナも異論はないことを告げると、全員揃ってギルドを後にする。それから、助言の通りに、東側の中央通りを歩いて宿屋を探し始める。
大きな町だけあって、中央通りには宿屋や食堂がそれなりの数があるようで、その中の小綺麗そうな食堂はついていない宿屋を選ぶと、外にアネモスを残して、みんなで中へ入って行った。
店の商売内容にもよるのだが、使い魔であっても、獣類の入店を拒む店が意外と多いのだ。そのため、意図して食堂が付いている店を避けたのである。その方が、アネモスが入ることを許可される可能性が高いのだ。
そして、エルンストが交渉をした末、六人部屋をひとつ借りることになった。ひとつはアネモスの分である。しかし、ベッドには乗せないのが条件であった。
「アネモス、お待たせ。中に入って平気だって」
扉から顔を出し、中央通りを歩く人々の視線を集めているアネモスを、アスピスは気軽な口調で呼び込むと、アネモスを中に入れ、宿の扉を閉める。そして、そのままアネモスに乗ってしまった。
それから、店員の案内で、二階にある六人用の大部屋に連れて行ってもらう。
「簡単に見つかってよかったわ」
「案内所の女性の口調では、宿屋がかなり埋まっているっていう感じでしたからね」
フォルトゥーナとレイスが語り合う中、アネモスは窓際のベッドの脇に添うようにして横になってしまった。同時に、アスピスが寝るベッドも、そこに決定してしまう。
「我は、今日はもうここにおるぞ。お主ら、好きに歩いて来るがいい」
「アスピスを乗せられないからって、拗ねるんじゃねぇよ。しかたねぇだろ、お前ってば人目に付きやすくてアスピスが目立っちまうんだから」
「べつに拗ねたりなどしてないわ」
ふん。とばかりにエルンストに言い返すと、アネモスは不貞寝をしてしまう。
騎乗用として、自ら捕獲されアスピスと契約した身であるアネモスとしては、アスピスを乗せて運ぶのが役目と思っているところがあるみたいなのだ。
しかし、エルンストは、アネモスに乗ってアスピスが悪目立ちすることを嫌っていて、王都は別なようであるが、他の大きな町の中などではアネモスに乗って移動するのを嫌う傾向にあった。
そのため、アネモスに代わってアスピスを抱いて歩く役目をエルンストが負っていた。
「とにかく、場所は聞いたし。脳みそから消える前に行こうぜ」
「そうだな。カロエの脳みそから消えたら、また説明してもらいに行くようになるからな」
「それより、一度聞いたことは極力忘れない方向に努力することを覚えてください」
元気に出発を告げるカロエに、同意するエルンストと、兄として忠告をするレイスの対照的な反応は、いつ見ても面白い。
そして、カロエが先導してくれる中、エルンストにいつものようにアスピスは抱かれながら、宿屋を後にした。
北東の区画にあるという住所を求めて、カロエを先頭にみんなで歩いて行く。
「ここの道から脇に入って、二本目。だったよな」
依頼状にある目印を探しつつ、先ほど案内所で説明された道をゆっくりと歩いて行くカロエは、かなり慎重に行動しているようである。
アスピスもお届け物なんて依頼を受けるのは、初めてなので、うまく対象が探し出せるのかちょっぴり心配になる。
そんな心境でカロエの背中を見守っていると、カロエが目的の家を見つけ出した。
庭が前面にある形の、黄色いペンキで塗られた木製の柵が庭と家の周囲に差し立てられた、一軒家。目印となるのは、入り口の門の脇の柵に風車が括り付けられていることだろうか。
「依頼してくれた子が、もっと小さかったころに括り付けたんだってよ」
「そうなんだ」
それを外さず、長年そのままにしているということは、依頼主は、この家の家主に大事に思われている証拠だとアスピスは思った。
「失礼しまーす」
大きな声でカロエは言うと、家の玄関の方へ進み、ノッカーで戸を叩く。
しかし、返されてくる声はなかった。
「あれ? 誰かいませんかー」
おかしいなという表情で、カロエは今度は大声で家に向かって問いかける。すると隣の家の窓から顔を出すようにして、中年の女性が話しかけてきた。
「トロコスさんなら、今いないよ。病院に入院中さね」
「え? 病気なんですか!」
「あぁ、年だからねぇ。先日、ちょっと倒れちまってね。家の旦那たちで病院へ担ぎ込んでったら、そのまま入院になっちまったんだよ」
「そうですか……」
「あの、すみません。病院って、どこにあるんですか?」
がっくりと項垂れるカロエに代わり、アスピスが中年の女性に問いかける。すると女性が南の方を指さした
「南東地区に大きな教会があるんだけどさ。それを目印にするといいよ。その隣でカルタモっていう先生がやってる病院があるんだよ」
「ありがとうございます!」
「いんや。ちゃんとお礼が言えるなんて、いい子だね。トロコスさんに無事会えるよう祈っているよ」
じゃあね。と、扉を閉じて引っ込んでいった中年の女性に、既に声が届かないのを承知で、カロエたちは「ありがとうございました」とお礼を言うと、教えられた通りに、中央通りに戻り、南東地区を先ずは目指すことにする。
「教会、教会っと」
大きいと言っていたし、目印にしろと言っていたので、鐘楼や時計ぐらいは見えるのだろうと思い、みんなで南東地区の上の方を見つめ続ける。
「あれじゃない?」
最初に鐘楼を見つけたのは、フォルトゥーナであった。
「中央辺りかな」
見た目のイメージを、カロエはそのまま口にする。
「とにかくあれを目印に進めってことだったし、行ってみるか」
エルンストはそう言うと、アスピスを抱え続けて疲れないのかと問いたくなっているアスピスを、それでもかまわず抱えたまま、スタスタと歩き始めた。
道は基本まっすぐに伸びていて、入り組んだ作りはされてないことで、思ったよりすんなりと南東地区の中央付近にたどり着く。そして、上を見上げつつ鐘楼の位置を確認しながら、歩く道を修正していくと、気づくとそこは教会の前であった。
想像していたよりも、早く付けたのだと思う。
陽は未だ高く、病院に寄っても問題はない時間だと判断し、教会の隣にあるという病院へ行くことにする。
「ここかな、病院って」
「入院施設があるはずだから、もっと大きな建物だと思っていたけど、それほどでもないみたいね」
フォルトゥーナはそう言いながらも、他に病院らしきものがないことで、おそらくカロエの呟きが正しいだろうと思っていた。実際、病院らしき建物に近づいて行くと、入り口脇の立て札に『カルタモ医院』と書かれていたことで、確信に変えていく。
「ここみたいね」
「じゃあ、入ってみようか?」
目的のトロコスが入院してしまっているというのだから、他に方法がないことで、ぞろぞろとみんなで病院へと入って行った。
「なんじゃ? ぞろぞろと。邪魔じゃねーか」
入ると、入り口すぐに立っていた男に、鬱陶しそうに呟いてみせる。が、アスピスを見て、病人が来たと思ったようである。急に表情を変えた。
「そのお嬢ちゃんを見ればいいのか? だったら、この奥へ……」
「あ。いや。そうじゃなくて、依頼で。トロコスさんって方に届け物が」
「トロコスの客人だったのか。そいつは気の毒に」
「えーッ!」
おそらくこの医院の先生だと思われる人物は、心の底から残念そうに呟いた。
その瞬間、カロエが呆然とした顔で叫んでいた。
「まさか、倒れたって聞いたんだけど」
「その通り。いい年して酒を飲みすぎるところがいけなかったんだ。肝臓を悪くしてな、ついには倒れやがったんだ」
「それで、トロコスさんは?」
ドキドキとしながら、カロエがその先を訪ねると、男は大きく口を開いて笑い出した。
「禁酒を言い渡して、今日、帰したところだ。今頃、家に着いているんじゃねぇか。あれでなかなか足は丈夫だからな」
「そ、そうですか……」
ほっと吐息するカロエに、医者は不思議そうな顔をした。
「ん? どうかしたのか?」
「いえ、べつに」
まさか、お前の発言が悪かったんだ。そのせいでとんでもない想像をしてしまったのだ。なんてことを言えるはずもなく、カロエは若干引き攣り気味の笑みを浮かべる。
「とにかく、それじゃあ、トロコスさんは家に戻られたんですね」
「おう。お前らとは、すれ違いになっちまったみたいだな」
気の毒に。と、男は再び笑い出す。
けれども、すぐにそれを止めると、アスピスの方へ近づいてきた。
「にしても、これはいかんなぁ」
アスピスの脚を掴み、足首の裏側を指先で弄りながらじっと見つめる。
「満足に歩けないんだろ。かわいそうに」
「って、治せるんですか?」
「さぁ、どうじゃろうなぁ。切り方が乱暴な上に、時間が経ちすぎている」
「そうですか」
一瞬夢を見たらしいカロエが、ガクリと再び項垂れる。
しかし次の台詞を耳にして、再び復活してみせた。
「手術をすれば、もしかしたら、普通に歩く程度になら治せるかもしれんぞ。絶対とは言ってやれんところが申し訳ないが」
どうやら、この人がカルタモで合っているらしい。
「手術って、どれくらい時間がかかって、どれくらい費用がかかるんですか?」
「教会に回復魔法を使える六式使いが数名揃っているんでな、筋自体はすぐに固定させることができるから、入院自体は特に必要はないんじゃが。回復魔法自体が弱くてなぁ、筋の修復を優先することになるから、メスを入れた際の傷までは手が回らんでなぁ。そっちの治癒に最低一週間は必要となるだろうよ。歩けるようになるのは、更にその先じゃ」
「って。今日でも、それって可能なんですか?」
「おい、カロエ。先走るな。アスピスの意思も必要だろ」
「だって、治るかもって」
瞳をキラキラさせながら訴えてくるカロエに、エルンストは嘆息してしまう。
「メスを入れて、治らなかったらどうする」
「そ、そうだけどさ」
「だったら、分かるだろ。諦めろ」
「でも、今はアスピスが小さいから、エルンストが抱いて動き回れるけど。でも、大きくなったらそうも言ってられねーじゃん。せめて普通に近づけてやりてーじゃん」
「それは、そうだが……」
食い下がるカロエに、エルンストは困ったような表情を浮かべ、アスピスへ視線を向けてきた。
「お前はどうしたい?」
「ねぇ、先生。治してみてくれますか? あたし、自分の足で歩きたいの」
エルンストに問いかけられ、アスピスは正直な気持ちをカルタモにぶつけてみる。瞬間、カルタモはアスピスの頭をかいぐった。
「だいぶ小さなときにやられた傷だな。痛かっただろう。今回は麻酔ってやつを打つから、痛い思いをしなくて済むぞ。といっても、メスで切るから同じ場所に新たな傷を作ってしまうから、麻酔がきれた後は、その傷は痛むけどな」
「傷が痛いくらい、大丈夫だよ。それより、可能性があるならお願いしてもいいですか」
「なら、明日来るがいい。隣から回復魔法を使えるシスターを呼んでおく。そして、一週間後に抜糸じゃ。その後は自力でリハビリするしかないからな、お嬢ちゃんの頑張り次第だ」
「わかりました。それで、費用は……」
「そうさなぁ。金貨1枚……はぼったくりすぎか」
わはははは。と、笑いながら、明日の午前中に来るように告げながら、奥の部屋へと入って行ってしまった。
「だってよ」
「回復魔法、教えてもらわないと。アスピスが痛いとき,使って上げられるようになるわ」
「あたしも教わりたいなぁ」
「それは、明日! 今日の内にトロコスさんのところへ届け物をしちまおうぜ」
「そうだな」
今度は、カロエの台詞にエルンストはそのまま頷くと、病院を後にする。そして、トロコスの住む北東区画へ移動すると、先ほど歩いた道を再び辿るようにして、目的の家に向かって行く。そして、ほどなくトロコスの住む、黄色いペンキの塗られた木製の柵と入り口脇に括りつけられた風車が目印の家へ辿り着く。
今度こそ、という思いで、カロエはノッカーで戸を叩く。それを数回繰り返したら、中から老人が姿を現した。
「なんじゃ、なんじゃ。めずらしいのぉ、家にお客とは」
「あの。オレ、冒険者のカロエと言います。これ、依頼書です」
「ん? 申し訳ないが、目が悪い上に、学もなくてなぁ。必要なら、読み上げてくれるか?」
「それなら、ちょっと待ってください」
そう言いながら、カロエはアイテムボックスを開くと、中から抱えるくらいのサイズのリボンの掛けられた箱を取り出した。そして、アイテムボックスを閉じると、その箱をトロコスに手渡した。
「これは、王都に住んでいるお孫さんからの贈り物です。今年は妹か弟が生まれるそうで、こちらに来れないらしくて。お孫さんの代わりに、これと一緒に寝てほしい。っていう依頼です。中身を確認できたら、この紙に親指の印をくれますか? あと、伝言があれば受けたまわりますよ」
「そうか、孫からの贈り物ですか。ちょっと待ってください、中身を確認させてください」
「はい」
嬉しそうに顔を緩ませ、家の中に入って行くと、テーブルの上に箱を置き、丁寧にリボンを外して、箱を開ける。そして、両手を箱の中に入れるようにして、いかにも手作りしましたというような人形を、トロコスは大切そうに抱きかかえた。
「これは、孫の手作りじゃ。違うかね?」
「そうです。そう聞いてます」
「そうか、そうか。本当にありがとう。ありがとう。今年は来られないと聞いていて、孫に会えないと思っていたのに。こうして会うことができた。なんて礼をいえばいいのか。本当にありがとう。とても嬉しいよ」
「いえ。お孫さんからのご依頼を受けただけですから、オレは全然」
「孫がお金を持っていたとは思えん。それを受けてくれたのだろう。本当になんと感謝すれば……と、おおそうじゃった。親指の印じゃったな」
「はい。この着色料を親指に付けて、この紙の下の方へ押し付けてもらえれば依頼の完了となりますので。お願いします。着色料は、洗えばすぐに落ちますので。人形を汚してはお困りでしょうから、一度人形を元に戻して、手をきれいにしてから、また抱いてやってください」
「おぉ、そうか。そうじゃな」
カロエの説明に納得したように、トロコスは人形を一度箱に戻すと、玄関へ戻って来る。そして、カロエの差し出した着色料に親指を押し付け、依頼書の下へサインの代わりに親指の印を刻み付けた。
「これで、依頼は達成されました。依頼掲示板のご利用、ありがとうございました。伝言はどうされますか?」
「来年、直接お礼を言うよ。こんな依頼を受けてくれて、本当にありがとう。王都からじゃ何日もかかったろうに。本当にありがとう。これで今日から寂しい思いをしないで済むよ」
「お役に立てて良かったです。では!」
カロエはそう言うと、踵を返して、みんなの待っている入り口の前へ駆けてくる。そして、照れくさそうな笑顔をみせると、みんなに向けて「それじゃあ、今日は宿屋にもどろうぜ」と言って、みんなの背中を押すようにして帰路についたのであった。
誤字脱字多発中。少しずつ直していきます。すみません。




