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第171話(引っ越し6/家購入)

[百七十一]


 夕食の時間になり、シェリスとロワが起きてきたことで、食事が開始される。

 いつもはテーブルの一角を使用するだけなのだが、フォルトゥーナとレフンテ、それにルーキスとシェリスとロワが加わったことで、ほぼ満席状態であった。そのことから、このテーブルは、ルーキス一家やフォルトゥーナが来たときのことを想定して購入されたテーブルなのだと実感する。

 ちなみにカルテイアはシェリスの腕の中にいた。

 首が座りもう少し大きくなると、ロワが小さなときに使っていた赤ちゃん用のイスがあるらしい。男の子用らしいが、使っていたのが短い期間だったことを考えて、新たなイスを購入せずにそのまま使うことにしたらしい。その代りに、レイスやエルンストは可愛らしい洋服でも買ってあげようと思っているようだ。

(ヒラヒラの洋服を買いまくるに一票)

 これまで学んだことは、女の子にはフリルの洋服を! と思い込んでいる大人が多いということである。アスピスはそんなことを考えつつ、食事を摂っていた。

 これだけ人数が揃っていれば、アスピスの少食なんて目立たなくなるだろうと思って、ラッキーと企んでいたのだ。なのだが、現実は逆であった。人数が増えたことで、アスピスが少食であることがより際立ってしまっていた。

 予定外もいいところである。

 なにか対策を練らないと、これから先はいつもこの状態となるので、アスピスとしてはとても困った状態に陥ってしまうのである。

 しかも、年下のロワよりも食べていないことが判明し、アスピス自身ショックを受けていた。

「お前、ロワに抜かれるの、時間の問題だぞ」

「うるさいのです。乙女は少食なのです」

 エルンストの茶々を無視して、アスピスは己の食事を貫くことに決める。

 レイスとの約束を守り、4分の1に切ってもらったパンを完食し、シチューの具を残してスープの部分だけを飲み干し。温野菜のサラダをフォークで二刺し分を口に運び、肉は端の小さなところを1切れ食べる。

 そして、今日の夕食は終わりだと、さり気にエルンストの前へ皿を一式ずらすと、イスに深く腰掛けてお茶をこくこくと飲んでいく。

 そうしていると、みんなが次々と食事を終えていった。

 それを見て、そろそろ片付けが始まるのだろうと察し、アスピスが片付けの体勢に入っていく。

 先ずは、テーブルの上の汚れた食器を回収するところから、アスピスの仕事は始まるのだ。

 しかも、子供を産んだばかりのシェリスはお疲れさまの状態なので、イスに座っていてもらうのは、当然の確定事項である。更に、ロワはまだ小さいので、『ボクもお手伝いする!』と言ってくれたのだが、その気持ちだけもらう形でイスに座ってもらっている。

 しかし、それ以外の人には片づけを協力してもらって全然問題ないのだが、席を立つのはレイスとフォルトゥーナとアスピスだけであった。

 しかも、レイスとフォルトゥーナは、この状態に慣れきっているようで、なにも言わずに。けれども、話し掛けられたりしたら、笑顔で応じつつ、片付けをこなしていた。

 アスピスもそれに倣って、黙々と汚れた食器を一通りテーブルの上から回収していく。その際、食器を運びやすくひとまとめにしてくれているところは、評価する点であろう。

 とはいっても、なにもできないことを恐縮しているシェリスが、ルーキスへ『それくらい協力しなさい』と言ったことで、食器をひとまとめに重ねるようになり。それを見て、レフンテやエルンストも慌てて食器を重ねるようになったのだが。

(彼氏が台所仕事をしないって話しはよくあったけど。本当なんだなぁ)

 アスピスはこの光景を見て、恋愛小説は嘘を吐いたりしないんだと、愛読している恋愛小説たちは現実のことなのだと思ってしまう。

 そんな事情により、最初こそ『あれ?』と思ったのだが、恋愛小説のおかげでそんなものなんだと思え、レイスもフォルトゥーナもなにも言わないこともあって、以降は片づけをするだけのことだと気にすることを止めていた。

 そして、汚れた食器を、食器を洗っている最中のレイスの脇から、そっと洗い桶の中に落としていくこと数回。すべてを洗い桶の中へ投入し終えると、今度はテーブルの中央にあるジャム類などを回収し、冷蔵棚へそれらを入れつつ、使われなかったジャムスプーンやバターナイフを棚に戻し、パン切り用の台とナイフを回収し、ナイフは危なくないように洗い場の脇に置いておく。

 その後はテーブルを拭き、それが終わるとお湯を沸かし始める。

 水はピッチャーの方が水道の水より美味しいので、ピッチャーの水を使用する。

 そして、アスピスも布巾を手にして、フォルトゥーナと一緒になって、レイスが洗った食器を拭いていく。そうしていると、お湯が沸くので、そこで初めてエルンストが席を立つ。

 食後のコーヒーはエルンストが担当しているのだ。

 そのため、エルンストが隅の方でコーヒーを作り始めるのを視界の隅に収めつつ、食器を拭きながら、同時に食器を棚の中へしまっていく。

 コーヒーが完成するのと、片付けが完了するのは、ほぼ同時であった。

 そして、エルンストがマグカップへコーヒーを注ぎ始めると、それをみんなに配って行く。そして、最後のコーヒーにエルンストがたっぷりのミルクと角砂糖ふたつ入れて、スプーンでよく混ぜてくれると、エルンストは自分の分のコーヒーと、アスピス用のカフェオレを手に席へ戻っていくので、その後をついて、アスピスも席に戻ると、エルンストがアスピスの座るテーブルのところへカフェオレを置いてくれるのであった。

 同時に始まるコーヒータイム。

 そこでルーキスが、みんなにひとつずつ鍵のセットを渡してきた。

 ロワの分は、必要な時にだけロワに渡すということで、ルーキス預かりであった。

「新しい家の鍵だ。ノワールの分は俺が。カロエの分はレイスが預かっていてくれ。手紙に添えて送ってくれてもかまわない。たぶん、ノワールにはそうすると思うからな。あいつを捕まえるのは大変なんだ」

「あ、はい。それじゃあ、カロエの分は俺が預からせてもらいます。引っ越しが終わったら、俺もカロエに送付しようかと」

 レイスはそう告げると、テーブルの上に余っていた鍵のセットを手に取る。

 それを確認し終えると、ルーキスは大き目の封筒に入っていた書類の数々を取り出して、封筒の上にそれらの書類をのせると、テーブルの中央辺りに置いた。

「それが土地と家の売買契約完了の書類だ。土地と家の権利証もその中に入っている。正式なものなのは、確認済みだ」

「面倒なことを押し付けてしまって、ごめんなさい。契約してきてくれてありがとう」

「いや。こっちこそ、シェリスを休ませてやってくれて助かった。これらは、一緒に住むことになるから、きっとフォルトゥーナには迷惑をかけることが増えると思うが、よろしく頼む」

「改まって、どうしたの。私の方こそ、ルーキスのことはとても頼りにしているの。こちらこそお世話になると思うけど、よろしくお願いね」

「一緒に住むのですから、お互いさまってことですよね。俺たちも、アスピスは成長期ですからね。これからどんどん変わっていくと思います。俺やエルンストだけじゃ解決できないことがたくさん出てくるでしょうから、ルーキスやシェリスやフォルトゥーナ。それにレフンテにもですね。みんなにはお世話になると思います。その代り、俺たちにできることはやらせてもらうので、みんなで協力して明るい家にしていきましょう」

 お礼の言い合いになりそうなのを察知して、レイスがにこりと締め括る。それに反応し、ルーキスが大きく頷き、話しを進めていくことにしたようであった。

「そうだな。あそこはみんなの家だもんな。名義も共有で、俺とシェリスとフォルトゥーナとレイスとエルンストが均等に分かち合う状態にしてある。状況によっては、20歳を過ぎてからだが、みんなが望むなら、レフンテやカロエやノワールを加えていくことも考えている」

 一度そこまで言い終えると、書類を指し示して、「土地や家の代金や契約などに関することは、そこに置いた書類に書いてある。売買契約完了の書類や、権利証も含めてすべて本物なのはきちんと確認してあるから、その辺は安心してくれ。中身を確認したいなら見てくれ。それらの書類は俺が代表して、アイテムボックスの金庫にしまって預かっておくから、必要な時は言ってくれ」

「私は、申し訳ないけど、契約をしてきたルーキスやレイスやエルンストを信じているわ。こういうの得意じゃないの、お任せしていいかしら?」

「わかった。なにかあったら、言ってきてくれ」

 フォルトゥーナが「大事なことなのにごめんなさい」と謝罪しながら、ルーキスを見つめ返すと、ルーキスが了解したと頷いた。

「とにかく、これで、あの土地と家は俺たちみんなのものになったわけだ。引っ越しも、いつでも行える状況になっている。みんなの都合のいい時に、まとめて行った方が男手も揃うから都合がいいだろうからな。特にフォルトゥーナのところは、アパートの荷物を引き上げるのにも、男手が欲しいだろうし」

「そうね、あったら助かるわね。でも、時間を貰えるのなら、レフンテと毎日アパートへ通って、少しずつ片付けていけばなんとかなるわよ」

「使えるものは使っておけ。フォルトゥーナが頼めば、もちろん俺もだが、レイスとエルンストが手を貸してくれるだろ。それにレフンテを加えたら、半日もあれば、あのアパートから荷物を引き上げてくることができるはずだ。どうせ、そんなに荷物を広げてないんだろうからさ」

「そうね。じゃあ、引っ越しする前に、みんなに頼んで、うちの荷物をアイテムボックスへ入れてもらおうかしら」

「っと。そうだった。これは、引っ越し用の荷物を入れるのに使ってくれ。使用後は、各自好きなように利用してくれて構わない」

 ルーキスはそう告げると、レイスとエルンストとフォルトゥーナと自分用にSSのアイテムボックスを配布していく。そのついでに、Sサイズのアイテムボックスをフォルトゥーナに手渡した。

「あら? もうひとつのボックスはなにかしら?」

「引っ越し用のは『SS』ボックスだ。それと、フォルトゥーナにもう1つ渡した『S』ボックスなんだが、それは庭に作る動物小屋用の敷き藁なんかを入れておくのに使ってくれ。敷き藁はこまめな交換が必要だろうからな。大量に買っておく必要があるだろ」

「ありがとう。大切に使わせてもらうわ」

「それより、ルーキス。『SS』ボックスなら無限に物を入れられますから、我が家用に2つもいりませんよ」

「1階用と2階用とでも思って受け取っておけ。お前らには引っ越しの際には働きまくってもらわないとならないんだ。本当はカロエとノワールも召喚したいところだが、あいつらは将来のために頑張っているところだからな、水を差すわけにもいかないだろ」

「そう言ってもらえると助かります。カロエも引っ越しは勝手にしてくれって感じで、戻って手伝う気は全然ないみたいですから。本当にお恥ずかしいお話しですけど」

「ノワールだって、同じだ。シェリスがカルテイアを産んだ日こそ、さすがに顔を見に戻って来たけどな。それ以外は、騎士団に入れるまではって、家に寄り付きもせずに騎士学校でこもっているからな。引っ越しは勝手にやってくれ状態だ」

 レイスが弟のカロエのことを思い恐縮していると、ルーキスが笑って、シェリスを主とする使い魔仲間のノワールのことを告げてくる。しかし、口調だけ聞いていると、息子とお父さんな関係しか思い浮かばないのは、ルーキスがシェリスの夫だからかもしれない。

 ルーキスの面倒見の良さは、エルンストやレイスやカロエはよく知っていることである。

(あんなにワンパクだったのに)

 成長して、一番変わったのは、ルーキスかもしれない。

 アスピスの知っているルーキスと、今目の前にいるルーキスの言動の差に、アスピスはおかしくなるのと一緒に、10年間ってすごいんだなと思ってしまうのだ。

 アスピスがそんなことを考えながらルーキスの説明を聞いているなんて、ルーキスは思っていないのだろう。ルーキスは説明を再開する。

「それで、引っ越しをする前に、まずフォルトゥーナの家の荷物を、俺やレイスやエルンストやレフンテで、今渡した『SS』ボックスに入れる作業を済ませたい。その後、引っ越しの前日当たりに、俺たちの家の荷物を、レイスやエルンストやレフンテの手を借りて、『SS』ボックスに移動させてもらいたい。それで、迷惑をかけるが、1晩この家に泊めてもらって、引っ越し当日に、午前中を使って、全員で、この家の荷物を全部『SS』ボックスへ移し、午後からは引っ越し先へ移動して、必要なものから出して並べていこうと思っているんだが、どう思う?」

「俺たちはそれでかまわないが、あれだったら、ルーキスたちも引っ越しまでここで暮らすか? 一部屋開ければ、ルーキスは床に布団を敷いて寝るようになるが、泊まることは可能だろ」

「いや、さすがにそれは迷惑だろ。それに、もう部屋がいっぱいだろ」

「大丈夫ですよ。ルーキスたちが泊まるなら、アスピスの部屋へ俺も居候させてもらいますから。そうすれば、俺の部屋が空きますから。ルーキスたちの住んでいるアパートは1人暮らし用サイズなんですから、1室あれば、借り宿泊ですのでなんとかなりますよね」

「あら、それはいいわね。そうすれば、私もシェリスの手伝いができるもの。いっそのこと、シェリスにはエルンストの部屋で休んでもらって、その脇の床に私が寝ましょうか?」

 フォルトゥーナが良いことを思いついたという口調で提案したら、シェリスが困ったような笑顔を浮かべる。

「そこまでフォルトゥーナに甘えられないわ。もし泊まって平気なら、レイスの部屋を貸してもらえるかしら? 家との行き来がなくなるだけでも、助かるわ」

「では、決まりですね。後で布団を出しますから、ルーキスはしばらく床で我慢してください」

「悪いな。でも、助かる」

「いえ。動物小屋も明日の夕方には出来上がると言っていましたし。明日は俺たちとフォルトゥーナで、フォルトゥーナの家の荷物をアイテムボックスへ移動させに行きましょう」

「あら、そうね。『SS』ボックスを私が持ってしまったら、私も付いて行くようになってしまうのね。それだったら、レフンテ。あなたがこのSSボックスを持つといいわ。使い終わったら自由に使っていいと言われているし、ボックスの数がそんなにないでしょ? その代わり大事に使うのよ」

 フォルトゥーナはルーキスから最初にもらったボックスの方を、レフンテに手渡す。

「荷物は適当に入れてくれて構わないから、私は家に残って、シェリスの手伝いをしているわ」

「毎日じゃ悪いわ。それに、今日はゆっくりさせてもらえたもの。気になるでしょ? 明日はみんなと行った方がいいわよ」

「本当に、家には大したものはないのよ。日常で使うものだけ出しておいて、後はすべてアイテムボックスにしまっているから、レフンテだけで十分よ。それに、最近は部屋から出ていることも増えたから、少しは家の中のことが分かるはずだもの。私は残るわ。いいわよね、ルーキス」

「フォルトゥーナの家を片付けに行くんだ。こちらにお任せ状態で、本当にフォルトゥーナがかまわないと言うなら、俺としては助かる側だから、感謝しかないが」

 本当にそれでいいのだろうかという疑問から、返事に躊躇した感じのものを含ませるルーキスへ、フォルトゥーナが笑顔を浮かべる。

「私は、より私が役に立てる方へいたいの。そっちはお任せしてしまうけど、レフンテがいるわ。疑問があったらレフンテに聞いてちょうだい。それで応えられなかったら、適当に『SS』ボックスへ入れておいてくれたら嬉しいわ。もし整理するものがあったら、後で確認するわ」

「分かった。それじゃあ、フォルトゥーナの言葉に甘えて、明日はレフンテとレイスとエルンストと俺でフォルトゥーナのアパートへ行ってくる。アスピスも留守番になるが、大丈夫か?」

「あたしはいいお姉さんをするのです。赤ちゃんは未だとても小さいので、あたしにはお世話することがとても難しそうなので、ロワの面倒はあたしが見させていただきます」

「お。心強いな。それじゃあ、ロワのことは任せたぞ」

「お任せください」

 アスピスは笑顔でルーキスに応じると、ロワと目を合わせて、2人で笑みを浮かべる。

 その反応を見る限り、ロワも不満はないようであった。

 そのことをルーキスは確認したのだろう。満足そうに笑みを浮かべると、視線をレイスとエルンストとレフンテに向けていった。

「それじゃあ、明日はそういう予定で問題ないな?」

「はい。仕事は当分入ってこないでしょうから、しっかり使われておきます」

「俺もそれで問題ない。貴重品はそれぞれアイテムボックスにしまっているんだろうからな。俺たちがすべきことは、部屋にあるものすべてをアイテムボックスに突っ込んでくることだけだろ」

「人様の家の家財を、身も蓋もない言い方で閉じるなよ」

 苦笑するルーキスへ、レフンテが大まかにエルンストの意見を支持する。

「いえ。実際に俺とフォルトゥーナの2人での生活ですから、荷物は大して出ていません。フォルトゥーナの部屋はちゃんと見たことがないので、なんとも言いようがないですけど、アイテムボックスへ移動してもらえたら、後で自分で整理するでしょうから。明日はよろしくお願いします」

「おう。そういうことなら、明日は4人で頑張ってこような」

 本日の話し合いはこれで終了という感じで、ルーキスが3人に向けて告げると、食後のお茶の時間も終わりを告げたのだった。

誤字脱字多発中。少しずつ直していきます。すみません。

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