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第101話(買い物2/六聖人&六剣士のお披露目会1)

[百一]


 家に帰ると、アスピスの部屋に木製のアクセサリーの収納が可能な三面鏡のドレッサーが加わった。その上に、第一号として、エルンストが買っていてくれた香油が載せられる。

もう一つの香油は、アイテムボックスの中にしまわれる。旅先でも使えるようにとの気遣いからである。

「少しずつ、女の部屋っぽくなってきたな」

「ハンガーラック見れば、すぐにわかるでしょ! ワンピースしかかかってないんだから」

「そう言う意味じゃねぇよ。部屋の家具の話しだろ」

「言っておくけど、これ以上は増やさないよ」

 エルンストが満足げにドレッサーを見つめている様子に、アスピスは忠告するように告げておく

「まぁ、これくらい揃えれば、一応は問題ねぇか」

 エルンストも、部屋を見回して呟く。

「枕もとの照明灯なんかは、可愛いのにしてもいいかもな」

「あれで十分でしょ。使いやすいし」

 思わず、なにに夢を見ているのか聞きたくなってしまいながら、アスピスはエルンストに余計なものはいらないことを必死に訴える。

「そうなんだよなぁ、わざわざアスピスに合わせて買い直すのも勿体ないくらいに、品はいいんだよな。家具は」

「でしょ!」

「でも、アスピスはもうちょっと可愛い家具とかの方が嬉しくねぇのか?」

「なんで? こんなに立派な家具が揃った自分の部屋があるだけでもすごいことだよ」

 アスピスは正直にエルンストに応える。

 それに、ルーキスが使っていたものなのだ。大切に使いたいと思うのである。

「それより、今日は喫茶店も、エルンストのシャツも買わなかったね」

「今日はお前の買い物に付き合っただけだからな。そういうのは、お前におしゃれしてもらって、行くさ」

 エルンストは笑みを零しながら告げると、アスピスの額に口づけてくる。

「まぁ、先ずは目指せハンガーラック1本分だな」

「変なことで頑張っても仕方ないのに」

「彼氏としちゃ、見逃せねぇだろ。他の奴から1本分ずつもらってるんだから」

「王城へ行くときに、着るくらいで。それ以外は、普段はいつも自分で買ったワンピースを着てたから、だからどれも倉庫にしまってあるんだよ?」

 これは黙っておくべきことだったのかもしれない。エルンストがハッとするようにして、考え出してしまった。

「王城用と、普段着用か。そのことを忘れてたな」

「エルンスト?」

「アスピス、近々、また、買いに行くぞ」

「え? 王城用は、エルンストが買ってくれたやつで、ちょっとレースが多めなやつでもおかしくないし。普段着用は、ほらもう、ハンガーラックに掛ってるでしょ!」

 慌てて、訂正を入れるようエルンストに告げつつ、普段着用もきちんと揃っていることを部屋のハンガーラックを指して、エルンストに知らせる。しかし、それはあっさりと聞き流されてしまったようであった。

「自分の買った服を着せたい、って言っているだろ」

「こだわりすぎ。それに、フォルトゥーナやレイスやカロエが買ってくれた服も着ないと悪いでしょ。王城へ行くときくらい、着てあげなきゃ」

 シェーンやイヴァールの買ってくれた服も同様だが、ここで名前を出すとややこしくなりそうなのでやめておく。

「それに、あんまり言うと。エルンストの服もハンガーラック1本分買っちゃうよ!」

「できるなら、買ってみろよ。俺はもう服を買う店は決めているからな。お気に入りのメーカーを取り扱っている店舗が数件あるだけだ。それに六剣士として動く場合、城へ行くときの王城用の制服と、冒険へ出るときの装備用の制服と、パーティ用に参加するときの正装は決まったものを着る決まりになっているからな、ハンガーラック1本分買うとしたら同じ服を買うようになるぞ」

「ずるい……」

 勝ち誇ったように告げてくるエルンストに、アスピスはぼそりと呟く。

「あぁ、でもそうか。化粧品は少しずつ揃えようと思っていたが、よく考えてみたらパーティへ出るときは化粧するんだったな。化粧品も一揃え用意しないとだったな。やっぱ、買い物へ近々行くようだな。化粧品も持ち歩きようと、部屋用のふたついるか」

「そんなにいりません!」

「買わせろよ。お前のこと、どんだけ待ち焦がれてたと思ってんだよ」

 エルンストの台詞に、アスピスは困ったような気分で、エルンストを見つめてしまう。

「少しずつ買っていこうよ。逃げたりしないよ?」

「逃がしたりするかよ」

「だったたらさぁ、少しずつでいいじゃん」

「一揃えが終わったらな」

 あっさりと言い切り、アスピスの言い分は聞いてもらえないようだと思ってしまう。

 でも、それだけアスピスの目覚めを心待ちにしてくれていたのだと思うと、申し訳なくなってきてしまう。

 もちろん、嬉しさもある。

 けれども、エルンストだったら、アスピスというしがらみがなければ、もっと簡単に幸せになっていただろうと思うのだ。それは、エルンスト以外にも言えることだが。

 でも、エルンストを好きになってしまった今、エルンストを失うことが怖いと思えてしまい。悪いとは思うのだが、待っていてくれたことに感謝してしまう。

「じゃあ、その時にエルンストのシャツも買ってあげるね」

「あ? べつにそんな焦って買う必要はねぇぞ。予備はあるし。っていうか、あんなの持っていてなにに使うんだ?」

「乙女の秘密です」

 アスピスは焦りをにじませ言い切ると、そっぽを向いてしまう。

(まさか、寝着代わりにたまに着て寝ているとか言えないし)

 なんとなく不安を感じる夜など、あれを着て寝ると安心できる気がするのだ。悪い夢を見ないで済むような気がして、ついつい着て寝てしまうのである。

 だから、フォルトゥーナたちに聞いて教わった丁寧な洗濯の方法で洗い、大切にしているのだ。

「さてと、倉庫の整理でもするかな」

「今日のは、俺専用のにしろよ」

「分かってるよ」

 忠告するよう言ってきたエルンストに、アスピスは即座に言い返すと、部屋を出て行くエルンストを見送りながらアイテムボックスの中へ入って行き、奥の方にある服などが置かれているスペースに近づいて行く。

 そして、エルンストがこれまでに買ってくれたドレスや服を、今日エルンストに買い渡されたハンガーラックへ移しはじめた。

 これで、ハンガーラックは5本となってしまった。

 大きくなって着れなくなったらどうしてくれようか。と、本気で思ってしまう。

 そして、服とお揃いで買ってくれた靴は靴棚へ、アクセサリーはアクセサリーをしまうチェストへ並べしまって行く。

 そのついでに、これまでシエンからもらってきたプレゼントも開封していき、アクセサリー入れにエルンストのものとは別の段へ次々と締まって行く。かなり溜めていたので、なかなかすごい量であった。ついでに、金額もいかにも高そうなものからお手頃価格な感じのものまで、色々と含まれていた。

 シエンなりにアスピスに似合いそうだと思うものを購入してくれていたらしい。

 アスピスから見ても、ちょっと付けてみたいかもと思うようなアクセサリーがそれなりに揃っていた。

 そして、靴棚とチェストの脇に姿見も並べ、服関連の整理を終える。

 それを機に『S』のアイテムボックス内を見渡して、これまで一部分を締めていた食料関係が他のボックスへ移動したこともあり、再びボックス内にかなり余裕ができたことで、少し整理をして、使い勝手をよくすると、アスピスは満足げにアイテムボックスを閉じた。

「そのうち、服専用とビオレータ様からもらった本とか薬草の専用のアイテムボックスでも作ろうかな」

 ぼそりと洩らしはしたが、実行するとしても、かなり先のことになる。

 レイスに買ってもらったメインで使っている『S』サイズのアイテムボックスはかなり広くて、未だまだ余裕があるのだ。

 そんなことを考えていたら、昼のポストの確認を忘れていたことを思い出し、改めてアイテムボックスを開くと、入り口のすぐそばに置かれているポストを覗いた。

「あ、早速シエンから届いてるし。それと、あれ? 仕事?」

 この間、プレゼントは続けるからと宣言を受けていたことで、その内に贈られてくるとは思っていたが、行動の速さはピカいちである。それを脇に退け、封筒の方をアスピスは確認すると、白い封筒ではあるが紙は上質なもので、封蝋印で封がされていた。

(仕事、じゃなさそうだよね)

 送信元は王国となっている。王国管理室より上から送られてきたものらしい。

 そして、宛先が王国管理室所属のアスピスとなっていて、アスピスに宛てられて送られてきたもので間違いないことを確認してから封を開けると、中には二つ折りとなっている白いカードが入っていて、その白いカードの周りには金の縁取りがされていて、硬く立派な用紙であることが触ってみて分かった。

 そして、勇気を出して中を取り出すと、六聖人と六剣士のお披露目会の招待状だと分かった。

 エルンストが近々あると言っていたが、これのことらしい。

 どういう経緯によるものか、アスピスも招待されたということだろう。

(まぁ、秘密にはされているけど、一応はあたしも六聖人だし。みんなの顔を覚えろってことなのかな)

 用紙を眺めていると、パーティは2週間後で、夕方から夜中まで行われるようだ。

(起きていられるかな)

 思わずどうでもいいことが不安になって来る。

(そう言えば、この前のとき、子供なんていなかったもんなぁ)

 大人の社交場へ子供が入っていいのだろうか?と思いながら、アスピスはとにかく無くしてはならないものとして、アイテムボックスを開いて、大切なものを入れておく引き出しの中へしまい込む。

「化粧品、少しは買ってこないとまずいよね」

 子供ではあるが、それなりに着飾って行かなければならないだろう。

 エルンストの話しを半分以上冗談で受け止めていたのだが、時間をおかずに現実のものとなってしまった。

 でも、今日はもう足が限界なので、買い物へ行くとしても明日以降である。

 パーティまで2週間あるようなので、問題はないだろうと思い、アスピスはこの問題は先送りにすることにした。



 夕食の準備の時間になり、いつも通りお茶のお湯を沸かし、スープをかき混ぜていたら、レイスが野菜を切るついでだと言って、わざわざ冒険時用のナイフを取り出してきて、持ち方を教えてくれる。そして、どう扱いを誤ると怪我をするかまで説明してくれると、野菜の皮を剥かせてくれた。

 正しい使い方を守ることを最優先に、どんなに時間がかかってもいいから皮を剥くように言われ、レイスの指示通り、アスピスは時間をかけて、教えられた通りのナイフの使い方をして、野菜の皮を剥いて行く。その間に、レイスはてきぱきと他の野菜の準備を終えていく。そして、それらが全部終了するころ、アスピスは野菜の皮を剥き終わる。

「できたよ」

「お疲れ様です。ちゃんと言ったことを守って剥いてくれたようですね」

「うん。レイスに言われた通りに、ちゃんと持ちながら皮を剥いたよ」

「先ずは、今教えた持ち方が基本となるので、それがスムーズにできるようになるまで、しばらくは皮むきをするようですね」

「ありがとう!」

 アスピスは嬉しくて、レイスにお礼を言うと、皮を剥いた野菜をレイスに渡す。そしてナイフの汚れを教わった通りに拭うと、皮製のナイフ入れにそれをしまって、邪魔にならないように台の上にのせておく。

 その間に、アスピスが皮を剥いた野菜を刻むと、レイスは大き目の肉がごろごろと入っている野菜炒めを作り始めた。

 それが今日のメインらしい。

 その代わり、サラダはマッシュドポテトにしたようだ。

 それらが出来上がると、プレートの上にマッシュドポテトと肉がごろごろ入った野菜炒めを盛っていく。

 その間に、2階からカロエとエルンストが下りてきたので、お茶をいれ2人の前に並べると、レイスとアスピスの席にもお茶を入れて、やかんを洗う。そして水を入れて脇にそれを置くと、プレートをそれぞれの席の前に置き、パン皿やフォーックやスプーンやナイフを並べ、みんなの中央にジャムやジャムスプーンが入った入れ物を置くと、レイスがよそったスープを並べていく。

 それが終わると、アスピスは自分の席に着き、レイスがアイテムボックスからパンを取り出すと、みんなの中央にそれを置いて、席に着く。

 それが合図となり、みんなで「いただきます」と言うと食事が始まった。

 冒険中の、みんなでがやがやして食べる食事も美味しいが、やはりこうして4人でテーブルを囲んで食べるのが落ち着いて食事ができ、安心できると思ってしまう。

 足元には、いつの間にかレイスが食事を与えていたアネモスが、丸くなって寝ている。大抵はすぐに2階へ戻ってしまうのだが、たまにこうしてみんなの食事風景を、テーブルの下から様子を見ていることがあった。

 そんな中、不意にエルンストが口を開く。

「そういや、アスピス」

「なに?」

「パーティの招待状、来ていなかったか?」

「あ、うん。来てた。お披露目会、2週間後だってね。レイスもエルンストも頑張ってね」

「他人事にしてんじゃねぇよ。全員じゃねぇが、六聖人や六剣士、元老院に六賢者たちにとっては、お前の正式な参加は初めてだからな。どんな奴か観察したくて、手ぐすね引いて待っているところだぞ」

 エルンストが、アスピスに向けて恐ろしいことを言ってくる。

「そうですね。立場は王国管理室所属の八式使いってことになってますが、知っている者は、アスピスが正式な六聖人(赤)だと分かっていますから、興味津々でしょうね」

「レイスまで脅すー」

「脅している訳じゃないんですよ。本当のことを言ったまでで」

 アスピスが愚痴を零すと、レイスが慌ててフォローを入れる。

「ただ、それだけにきちんとした格好をしていかないとならないと思いますから」

「それなら心配いらねぇよ。近々お披露目会があるって情報が入って来たから、今日、ドレスは買ってきた。明日にでも化粧品を揃えてくる」

「そうですか。なら、心配はいりませんね。仲間の六聖人や六剣士だけじゃなく、六聖人の監視役の六賢者や元老院も、アスピスがどんな子か見たがっているでしょうから。向こうからしたら、アスピスのお披露目会ですからね」

「ったく。護衛なしだってぇのに呼ぶか?」

「まぁ、そこは王国管理室所属の八式使いってことになってますからね」

 エルンストがパンを頬張りながら苦言を呈すると、レイスが冷静に応じてみせる。

「王国付きってのも大変そうだな」

 カロエが他人事のように呟くと、レイスが速攻で応じていた。

「カロエだって、いずれは六剣士になりたいのでしょう」

「まぁ、そうだけど」

「だったら、他人事みたいに言っていないで、たまには騎士学校の訓練場へ顔を出すべきですよ。冒険者ギルドの訓練場も身を護り敵を倒す訓練にはなりますが、正式な武具の扱いや、正式な決闘の方法を身につけないと、六剣士にはなれませんからね」

 レイスの忠告に、カロエは適当に返事しつつ、食事を続ける。

(おそらくだけど、さ)

 カロエは冒険者として、レイスのような生活を送りたいのではないかと、アスピスは見ていた。

 自身の実力のみでSクラスまで昇り、いっぱしの冒険者として、色々なところを巡りたいのだろう。

(それも、ありでいいと思うんだけどなぁ)

 カロエにもらったペアリングを意識しながら、このリングをくれたカロエの気持ちを疑うつもりはないが、レイスやエルンストに引きずられている部分もあると思うのだ。

 アーダの泉で逆ナンパされているカロエの対応を見ていて、カロエには未だ、こういう気持ちは早いのではないかと感じられた。

 カロエにとっては、今はそれよりも、冒険の方が楽しいようである。

(道はひとつじゃないんだし、あたしに縛られる必要もないんだし)

 できれば、自由に生きて欲しいと願うアスピスは、ルーキスのように、冒険者として高見を目指そうとしてるカロエを、心から応援していた。

誤字脱字多発中。少しずつ直していきます。すみません。

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