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アイスクリームの彼  作者: 香菜
3/3

お盆休み

朝からセミの鳴き声がよく響いている。今週は近年1番の猛暑日が続く週になるらしい。昨日、日本で一番暑いと言われる埼玉の熊谷では40℃を超えた。この街は田舎なのでアスファルトの照り返しはないが、何せ盆地なので熱がこもる。今日も気温が上がるという予報だった。


そんな中、私は今日も汗をにじませながら、自転車で彼の家へ向かっていた。花火大会が今年でなくなることを聞いてから1週間。どうすれば彼が行ってくれるかと考えに考えたが、いい方法は浮かばなかった。今日こそは話してみるぞ、と彼の家の前の坂をかけ上がった。


「いらっしゃーい。暑い中よく来たね~~」

いつも通り、寒い部屋でアイスを食べていた彼は、今日も元気そうだ。私もと彼の冷凍庫からバニラアイスを取り出す。

「あのさ、ちょっと大事なお願いがあるんだけど」

「なーに?」


「海岸の花火大会、一緒に行きたいなと思って。」

「花火大会?あの地元のとこの?え、俺暑いのも人混みも無理なんだけど。笑」


想像通りの返事だったが、言い方というかあまりにも思慮のない返しが私の中の何かに触れた。

「今年で最後なんだもん!私はどうしても行きたいけど、あなたがそんなふうに言うならいい!他の人と行く!」

自分でも意外なほどに、悲しくて悔しい思いが込み上げてきて私は部屋を飛び出した。わかってたけど、行かないって言うと思ったけど。心の中でちょっとだけ期待してた自分に腹が立つ。

「あっ、えっ……」

私の思いがけない行動に、彼は何か言いかけたようだったが走り出した私には聞こえなかった。それに外はまだこの暑さだ。どうせ彼は追いかけてこないに違いない。


そういえば彼の家に自転車を置いてきてしまった。まぁいいか、取りに帰る気分でもないし。汗に混じって少しだけ涙のしょっばさを感じた。

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