表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイスクリームの彼  作者: 香菜
1/3

夏の始まり

夏がやってきた。

今年は歴代に優るとも劣らない猛暑の年らしい。

「毎年そんなこと言ってる気がするけどね。」

隣の彼は、エアコンが効きすぎている部屋の中で、ソーダ味の棒アイスを食べながら笑う。彼は暑さにめっぽう弱いのだ。

「私はこの室温でアイス食べるあなたの気が知れないけどね。」

エアコンの設定温度は23℃。部屋もそんなに広いわけじゃないし、十分冷えきっているはずなのに、彼はさらに温度を下げようと提案してくる。

「いい加減外に出ない?外すごく晴れてるし。」

「やだよ。俺暑いと溶けちゃうもん。」


 んなわけないでしょ、と心の中でつぶやくのも何回目だろうか。


 私たちが付き合い始めたのは春先だった。きっかけは地元の近隣高校のOB同士が企画した、大規模な同窓会。お互いの共通の友人が、おもしろい組み合わせになるとかで紹介してくれた。なんだそれ、と思ったが、確かに面白い組み合わせである。『暑さに弱い彼』に対して私は『寒さに弱い』のだから。7月上旬にして部屋の寒さに耐えられず、私は毛布をかぶっていた。


 あぁ、この調子じゃ付き合って初めての夏はこの寒い部屋で終えることになるんだろうなぁ。今日もこの焼けるような日差しの中、自転車で20分かけて彼に会いに来た。最初は会えるだけで嬉しかったが、何度来てもエアコンの部屋に引きこもっている彼に対して呆れる気持ちが募っていくばかりである。ただほんの少しだけ、一緒に夏を楽しめたらなぁという気持ちもないことはない。


 「いつまでこの生活続けるのー?」

 「暑くなくなるまで」

 「暑くなくなったら夏が終わっちゃうよ」


 呟いた言葉が聞こえたのか否か、彼はまた冷凍庫からアイスを取り出した。


 私と彼の初めての夏はまだ始まったばかりだ。


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ