アイテム合成
本日二回目の更新です
流石に三日連続で二話投稿はきつかった……
「あ、おーいシンジョー!」
「おー、成果はどんな感じだ?」
遠くで手を振る人影、こっはーだ。
なんだか二時間の間に少したくましくなった気がするな。
何というか、オーラがさっきと違う。
「結構レベルも上がったよ。後レア素材もかなりドロップした」
「そうか……」
順調そうで何より。
魔法戦士の秘められたポテンシャルが、こっはーという最高のプレイヤーによって最大限引き出されている。
ソロにした判断は正しかったようだな。
「シンジョーはどんな感じ?」
「俺? うーんあんまり良くないかな。やっぱグローイングってなかなかの曲者だわ」
「そっか……でもまだ可能性はある! ……よね?」
「ああ……俺もまだ諦めてねえよ」
そう、今日はサービスが開始したばかり。
レベルもまだ3だし可能性なら十分あるのだ。
「そう言えばこっはーのステータスってどんな感じなんだ?」
「え、見ても落ち込まない?」
「大丈夫だよ。ほら早く」
「う、うん……」
こっはーがメニュー画面を操作し、ステータスウィンドウが表示させる。
「どれどれ……え?」
■■■■
PN こっはー
レベル 21
職業 魔法戦士
HP 1024/1024
MP 913/913
STR 325
BIT 289
INT 426
MND 279
AGI 300
LUK 511
■■■■
「何だこれ……」
「そう言えばマスター、途中から奥の洞窟に行ってましたね。あそこ序盤で行くような場所じゃないのに……流石です」
「う、うん。レベル5になった途端、草原のモンスターから経験値が得られなくなったから……」
俺に配慮しているのか、少し申し訳なさそうに語るこっはー。
予想はしていたが……ダメだ、ケタが違いすぎる。
レベルですら俺の七倍なのに、ステータスはどれも二十倍以上……。
これが当たりとハズレの……雲泥の差どころじゃないなこれ。
でも、
「……やっぱすげえなこっはーは」
「え? シンジョー?」
「俺が落ち込んでいるとでも思ったか? 安心しろ、ただ驚いただけだ。序盤でこのステータスはチートすぎるだろ?」
「ふふっ、そうだね。俺も伸びが凄くて驚いたよ」
いつものように笑いあう俺達。
不思議と、“追いつきたい“とは思っても、“絶望した“という気持ちはない。
どうやら俺の心は意外と頑丈に出来ているようだ。
「あれま主様、意外とメンタル強いんですね。その様子ならフォローの心配もいらなかったです」
「お? 俺に対してやけに優しくなったなモモカ」
「別に、サポートAIとしてゲームを楽しんでもらえないのは困りますから……」
若干頬を赤らめながらそっぽを向くモモカ。
……意外な一面を見れたな。
いつもの毒舌で媚びた少女ではなく、まるで誰かの事を思う乙女のようだ。
「今のモモカ、最高にかわいいと思うぞ」
「んなっ!? いっ、いいいいきなり何を言っているんですか主様は! AI相手だからっ、て、適当な事を!」
「えー、こっはーもそう思うよな?」
「うん、今のモモカちゃん凄くかわいいよ!」
「マスターまでぇ!? も、もう皆さん寄ってたかって、ボクの事虐めないで下さいよぉ! うぅ~っ!」
褒められ慣れてないのか、モモカはさっきよりも顔を赤くしてこちらを見なくなってしまった。
この様子から見るに、今までのモモカは仮の姿でこっちが素なのかもしれない。
だが何故いつも皮を被っているのか、余計疑問に思ってしまう。
でも俺は、こっちの方が素直で好きかな……。
◇◆◇
「合成はメニュー画面から出来ます。後は自分でやってください」
「あ、あのモモカ……」
「何ですか。ボクは今、モーレツに機嫌が悪いんです。しばらく一人にしてください」
「やりすぎたな……」
「そうだね……」
すっかりスネてしまったモモカ。
シアター後も俺達はモモカをからかい続け、遂に限界点を超えてしまったのだ。
「……取り敢えず明日また謝ろう。あの様子じゃ今日は無理だ」
「そうだね……じゃあ俺達は合成をしようか」
要望通りモモカを一人にし、俺達は奥で合成を行う事にした。
離れる途中、モモカがチラッとみて舌をべー、と出したのが印象に残った。
ごめんなモモカ、後でいう事一つ聞いてやるからさ……。
「えーとメニューから……あった」
メニュー画面をスクロールさせ【合成】の項目を出す。
合成を選択すると二つに別れたウィンドウが出現した。
なるほど、このウィンドウそれぞれに素材を入れていく訳か。
「じゃあ、入れるぞ」
「うん」
取得素材一覧を開き、合成可能な素材を確認する。
合成できる素材同士は青く光る、今は【狼の牙】と【ゴブリンの骨】だけしか選択できないが……これでもドロップした方だ。いや、マジで。
そんな、なけなしの素材をウィンドウに放り込み、合成開始のボタンをタップする。
パンパカパーン
「おー、なんか出来た」
謎の効果音と共に合成が完了し、アイテムが完成した。
正直、失敗して素材がなくなるかと思ったが成功してよかった。
早速アイテムをタッチし、情報を確認すると、
【魔除けの飾り】
―効果―
特になし
―説明―
インテリアにはぴったり。
でも少し物騒かも?
まあお好みにどうぞ、キャハ★
ただのゴミじゃねえか畜生。
せめて+1でもいいからステータス上昇が欲しかった。
しかも最後のキャハ★ってなんだよ。
寒いし、痛々しいし、見ていてイライラする。
しかもこれ、腐肉が付いてるしインテリアにすら向いてない。
「じゃ、じゃあ次は俺からいくね」
「……おう」
こっはーが合成を選択しウィンドウを表示させる。
……ん? 何かおかしい。
ウィンドウが四つに分割されてるし、サラッと選択した素材がやたら金ぴかに光っていたよ?
パッパラパッパッパー!
合成完了の音も俺と違う。
やたらと豪華な音楽が流れているし、アイテムの輝きもおかしくないか。
俺の時、アイテム全然輝かなかったよ?
むしろ腐肉でボロボロだったよ?
「こっはー……アイテム見せて貰ってもいいか?」
「え、うんいいよ」
俺はこっはーが生成したアイテムをタッチした。
すると……
【龍の宝玉】
―効果―
所持者へのダメージが四分の一減少する。
―説明―
龍の魂が宿る宝玉。
秘められた力には無限大の可能性を秘めている。
そして逆境に屈しない強き魂に龍は力を貸す……。
「すげえアイテムらしいアイテムだあ……」
「シ、シンジョー大丈夫?」
「ああ、心配しなくてもいい……心配……しなくても」
正直、頭が混乱する。
ダメージ半減は普通に強いし、説明文もゲームらしくてかっこいい。
対して俺のアイテムはなんだ。
効果は一切ないし、説明文も酔っぱらった勢いで書いたような酷い物だ。
一体、どこまで差を付ければ気が済むんだよ神様。
「まあ、そのアイテムかっこいいじゃん。正直羨ましいよ……」
「え、いやあの実はさ……」
「ん?」
何故か、しどろもどろにしているこっはー。
まさかまだ追撃があるのか?
頼む、これ以上は俺の心がと止めようとしたが、
「これ、シンジョーの為に作ったんだよね……」
「え?」
追撃かと身構えていたが、どうやら検討違いのようだ。
こっはーが? 俺に? 何で?
「いや、シンジョーここに来てからゲームを楽しめてないと思ったからさ……だから一番レアな素材を使って、アイテムをプレゼントしようと思ったんだ。少しでも、シンジョーの助けになればなぁって……」
「マジかよ……」
何てことだ。
こっはーは俺の事を心配して、わざわざ貴重な素材を使ってくれたのか。
そんなこっはーに対して、俺は追撃してくるだなんて失礼な事を……
「こっはー……お前本当いい奴だなぁ……」
「え、シンジョー? いきなりどうしたの?」
「じゃあそのアイテム、ありがたく貰ってもいいか?」
「……! うん! その為に作ったからね! はい!」
こっはーから龍の宝玉を貰い、鍵を付けてストレージに入れた。
俺は確かに不幸かもしれない。
でもそんな俺を支えてくれる幼なじみがいれば、何とかなる気がする。
さて、そろそろログアウトの時間だ。
明日も地味で単純な作業だが、頑張ろう。
「こっはー、マジでありがとうな」
「にへへ、どういたしまして!」
一人になったモモカ
「ふん、主様もマスターも、ボクの事AIだから思ってもいない事が言えるんです。リアルだったら絶対童貞臭い事しか言えないに決まってます!」
「でも……かわいいって言われるのは悪く、ない……」
「!? ボ、ボク今何を考えて……!? あーもう、調子狂う!!」
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