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俺達のシアター

本日二回目の更新

今後、二回更新はあまりできないと思いますが……

後、日刊38位ありがとうございます すげえびっくりしました

「ここが俺達のシアターか……」


 転送された場所は間違いなくシアターだ。

 しかし、さっきの豪華な内装とは打って変わり酷い物だった。


「最初からとはいえ、ボロすぎない……?」

「ああ、戦闘どころかシアター管理ですらハードモードかよ」


 俺達が思わず苦言をこぼしてしまう惨状。

 受付カウンターは木製で所々腐っており、人骨までもが転がっている。

 造花を置くスペースには刃こぼれした剣等、ゴミが押し込められている。

 酷いのはシャンデリア……というか照明だ。

 ほこりはもちろん、ヒビで電球は割れているわ、謎の粘液が付着しているわ、時々幽霊のような物が写る始末だ。

 シアター、というよりは幽霊屋敷だな。


「ここから地道に掃除やら開発していくわけだな……」

「結構本格的だね、案外シンプルな条件だと思っていたけど……そう上手くいく訳ないか」


 さて、ここからどうしよう。

 掃除、素材調達、NPC派遣……やらねばいけない事が山積みだ。

 ……そう言えば、


「サポートAIが教えてくれるって言ってたな」

「そう言えばそうだね。呼んでみる?」


 モモカが言っていた事を思い出し、俺はメニュー画面を開いた。

 えーとプロフィール、アイテム、魔法…………お。

 下までスクロールさせると【サポートAI】という項目が出てきた。


「早速呼ぶか」


 サポートAIの項目をタッチすると、新たなメニューウィンドウが登場した。


『サポートAIを呼びますか?』


 迷わず選択肢のはい、を選ぶ。すると、


リーンリーン、リーンリーン……


「なんか電話みたい」

「サポートAIにも窓口とかあるのか……?」

「なにそれ、面白い発想だね」


 流石に窓口はないか、と自身の発言を否定していると突然ベルの音が鳴りやんだ。

 数秒後、『しばらくお待ちください』という文字と共に目の前に光のサークルがあらわれた。

 サポートAIって召喚方式だったんだ。

 少し意外な事実。


「さーて、一体誰が来るのか……」

「はーい、どうもー! 皆大好きモモカちゃんがゲームをサポート……」

「「……」」

「えぇ……」


 サークルから現れたサポートAI。

それはチュートリアルを担当してくれた無駄に人間らしい美少女AI、モモカだった。

感動的でもない別れの後、僅か数分で再開。

喜びじゃなくて妙な気まずさがそこにはあった。


「いや、お前かよ」

「ひ、久しぶりだねーモモカちゃん」

「まさか再開するとは思いませんでしたよー。これも運命ってやつですね」

「ああ、そうだな。運命的すぎるわー。凄い凄い」

「……主様は相変わらず引っかかる発言をしますねー。殴りますよ?」


 口では物騒な事を言っているものの、モモカの表情はどこか柔らかい。

 何だ、モモカも俺達に再開出来て嬉しいのかよ。

 “も”?

 ……ああ、そうだ。

 反応に困っただけで、俺もこっはーもお前に会えて嬉しかったんだよ。

 ま、口に出すと「キモッ」とか言われそうだから敢えて黙るけどな。


「ま、サポートAIとして改めてよろしくお願いしますねー」

「うん! よろしくねモモカちゃん!」

「ふふっ、マスターの期待に応えられるよう頑張りますね♪」


 相変わらずの仲の良さを発揮する二人。

 この二人で実況をやったら案外人気出そうだよな。

 今度、住吉さんに相談してみるか。


「じゃあ早速、何をやればいいか教えてくれないか?」

「わかりました。ではまず、素材の調達をしてください」

「外に出るのか。ならどこがいい?」

「この辺ならウール草原という場所がオススメですね。モンスターも弱いですし、幅広い素材を入手出来ますよ」


 初心者向けフィールドか、なるほど。

 俺がどこまで戦えるかわからないし腕試しにはちょうどいいな。


「よし、じゃあそこいくか」

「了解しました。では転送しますねー、えい」


 モモカがパチン、と指を鳴らすと周りに光のサークルが現れた。

 浮くような感覚と共に視界に光が広がる。

 さて、俺は一体どこまで戦えるかな。

 スタシア最大のハズレ職業グローイング。

 その実力とはどれほどの物なのか……。


◇◆◇


「ここがウール草原か」

「シンジョー、草に泥が付いてる。しかも一つ一つがリアルだ」

「え、うわ本当だ。グラフィックすげぇな」


 草原に付いた途端、俺達が驚いたのは広さやモンスターではなく草のリアルさ。

 根元は泥が濃く付いており、葉先には土ぼこりが。

 しかも、揺らせば落ちるし踏みつければ泥の跡が付く等、とにかくリアルで驚いたのだ。

 正直変な所を気にする辺り、めんどくさいゲーマーの悪い癖が出ているのだが。


「さて、まずはモンスターとの戦闘を始めましょうか」

「モンスターか……お、あれはどうだ?」


 俺が指差した先、そこには角を生やした銀色の狼型モンスターがいた。


「シルバーウルフですか。あのモンスターは動きが遅いので最初にはぴったりですよ」

「……狼なのに遅いのか」

「そうみたいですね」


 狼と言えば素早く狩りを行うイメージがある。

 しかし、その素早さを奪うと何も残らない気がするが彼らは大丈夫なのだろうか。


「じゃあ俺からいくね!」

「おーう、頑張れよー」

「頑張って下さいマスター!」

「にへへ、行ってくる」


 こっはーが腰の剣を抜きシルバーウルフに接近する。

 素早く、尚且つ無駄の無い完璧な動き。

 レベル1でこの動きが出来る辺り、こっはーのセンスと魔法戦士のポテンシャルを感じた。


「ハッ!」

「グォ!?」


 シルバーウルフが何かの気配に気付くも時既に遅し。

 こっはーはその隙を逃さずシルバーウルフを剣で真っ二つに切った。

 ここまで僅か十数秒、見事だ。


「おー、一撃か」

「流石魔法戦士ですねー」

「にへへ、ありがとう!」


 笑顔でこちらに手を振るこっはー。

 この笑顔で画面の向こう側にいるお姉様方は悩殺されただろう。


「これが素材?」

「そうですねー。おっ、狼の毒牙じゃないですか。かなり貴重な素材ですよこれ」

「えっ本当?」

「ええ、毒持ちのシルバーウルフは稀に出現するんですがまさか……」


 どうやらレア素材がドロップしたようだ。

 今日のこっはートコトン付いているな。

 動画のタイトルも「奇跡がおきた!」から「奇跡がおきすぎた!」に変更した方がいいのかもしれない。

 スタシアが終わったら編集担当の人に告げ口しておこう。


「よし、次は俺だな……」

「シンジョー頑張れー!」

「さーて、主様はどこまで戦えますかね」


 そう、そこが問題だ。

 このグローイングという職業、一体どこまで戦えるのか未知数なのだ。

 その検証兼実力を図る為にも戦闘は一度くらい行っておきたい。


「いくぞ……」


 昼寝をしているシルバーウルフに近づき、背後を取る。

 確かに以前やっていたVRMMOより身体が重い。

 だが重装備系のアバターよりかは動けるし余り問題はない。

 よし……


「オラァ!」

「グゥ!?」


 俺はシルバーウルフの背後から力いっぱい蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばした衝撃でシルバーウルフはゴロゴロと草原を転がり、五メートル先の場所で止まる。

 武器を装備出来ない俺は徒手空拳で挑む他ない。

 これは装備が重要なゲーマーではかなり痛手だ。

 だが、武器を装備出来ないキャラというのは基本、装備しない方が強くなる用設定される。

 その可能性に少しだけかけたのだが……


「グルル……」 

「効いてねえ……」


 思い切り蹴ったのにシルバーウルフのHPバーはまだ緑、しかもさっきと殆ど変わっていない。

 攻撃力がない事はわかった……なら次は、


「ガゥ!」

「っ……!」


 シルバーウルフの突進を正面からくらい、俺は吹き飛ばされた。

 今の攻撃はワザとくらった。

 防御力を確かめ、俺のHPバーがどれくらい削られるのかを確かめている。

 防御力がわかればくらってもいい回数が把握でき、行動の幅が広がるからだ。 

 まあ大体四分の一削られたかな、と思っていたら、


「うそーん……」


 俺のHPバーを見ると緑ではなく黄色、四分の一どころか二分の一も削られていた。

 最序盤のシルバーウルフでこれ?

 つまりこの先、俺ノーダメで行かないとダメなんじゃ……


「グルァァ!」

「ああ、もう畜生!」


 プレイヤーがどんな状況だろうと視認出来れば攻撃するのがモンスターだ。

 再び襲いかかってくるシルバーウルフに俺は反撃体制を整える。

 こんなに弱いのかグローイングって。

 攻撃力無い、ノーダメ、鈍重、武器装備不能、魔法、スキル使用不可……縛り内容が多すぎる。

 こんなのでスタシアを完全攻略する事が出来るのだろうか……

 殆どこっはー任せの戦闘が目に見え、無力すぎる自分に俺は絶望する事となった……



「てか、なんでお前がサポートAIなんだ?」

「偶然ですよ? 正直私も驚きましたが……」

「変な所で運がいいね俺達……」

「ほんと、”変な所”だな」

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