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sideこっはー

「ハアァ――――――――セイヤァァァアアアア!!」

「「「ぐはあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


 水、風、炎を組み合わせた全体攻撃に残りのプレイヤーが消滅させられる。

 初めは十一対一だったが、魔法戦士の圧倒的な力に殆どのプレイヤーはゲームオーバーし、残っているのはトウヤ一人だけとなった。


「やれやれ、熟練プレイヤーの筈なのにこんなあっさりやられるなんて。やっぱり頼れるのは自分の力か」

「マスター! 残りは一人ですけど油断は禁物ですよ!」

「うん! わかってるよモモカちゃん!」


 慢心は敗北を生む。

 これはゲームだけでなく、ありとあらゆる物事に言える事だ。

 最後に残ったトウヤという青年は、先ほどの熟練プレイヤーとはケタ違いの実力を持っている。

 だからこそ、ここで油断するわけにはいかない。


「いけ!」

「ふっ!」


 ヌシトカゲがこちらに突撃してくる。

 俺はそれを右に前転する事で回避した。


「うーん、突撃も見切られてきたか。やれやれ、君は本当に恐ろしいよ」

「それは誉めているの? まあ、どうでもいいけどっ!」


 ヌシトカゲがブレーキした瞬間を狙い、俺は加速魔法で一気に懐へ潜り込む。

 と、同時に剣へ五属性の魔法を付与した。

剣が五色に輝き、それがヌシトカゲに襲い掛かる。


「っ!? っくそ!」


 高速で迫る俺の攻撃をかわす事は不可能。

 そう悟ったトウヤはヌシトカゲを乗り捨て、遠くに逃げた。

 いい判断だと思う。

 しかし、ここでヌシトカゲを仕留められれば!


「ハァァァアアアアアア!!」

「グギャアアアアアァァァァァ!!」


 五色に輝く剣でヌシトカゲの腹部から頭へ向けて切り裂く。

 ヌシトカゲは俺の攻撃に一切反応することなく、ただただ悲鳴をあげながら消滅していった。

 たった一撃でヌシトカゲを、その事実がトウヤに冷や汗をかかせる。


「やれやれ……君は想像以上の力を持っているようだね」

「降参するなら今の内だよ?」

「ふん、僕が降参するとでも? 笑わせるなあ」


 自分が追い詰められている状況にもかかわらず、トウヤはニタニタと不敵な笑みを浮かべていた。

 

「な、なんか気味が悪いですね……主様とは違った意味で気持ち悪い」

「シンジョーは気持ち悪くないよ? まああくまで主観だけど」

「マスターは例外ですよ。幼なじみ補正バリバリ入っていますし」

「好き放題言えるのも今の内だよ? 見せてやる、最強の切り札を……」


 不敵な笑みはそのままに、トウヤはストレージから“何か”を取り出し、こちらに突き出した。


「これ、サポートAIの君ならわかるよねぇ?」

「ん? 何あれ……」

「!? それをどうしてあなたが!?」

「え? モモカちゃん?」

「今更遅いよ! 君たちはパンドラの箱を開いたことに変わりはないのだから!」


 厨二臭いセリフを吐きながら、トウヤはその“何か”を起動した。

 すると黒い煙が辺りを立ち込め、やがて何も見えなくなってしまう。

 不気味だが身体に変化は訪れない。

 ただの目くらましか? と思っていたその時


「ダークゾーン展開!」


 トウヤの声と共に怪しげな光が放たれた。

 怪しげな光は黒い煙と交わりやがて一つの空間を作り出す。


「なんだこれ……」


 気づけばシアターだった場所は、黒い煙以外何も存在しない空間に変貌していた。

 不気味で時々うめき声のような声が聞こえる。

 ここはどこだ?

 そしてトウヤは一体何をしたんだ?


「ダークゾーン……」

「モモカちゃん?」

「使用した物のステータスを三倍引き上げる空間展開型アイテムです。それだけじゃない、この空間では……」

「その通り」

「!?」


 黒い煙が濃く存在する場所からトウヤの声が聞こえた。


「ダークゾーンの本質は真の力を発揮する……すなわち君たちは負けるということさ」

「……今のトウヤ君には操縦するモンスターがいない。モンスターを失った君のステータスを上げた所で何の意味がある!」

「ステータス向上が真の力だとでも? やれやれ、これだから弱者は困るんだ」

「弱者……?」

「そうだよ。君はヌシトカゲを倒しただけで舞い上がる弱者だ。あんな奴、ただの前座にすぎないのにね」

「何だって……!?」


 あのヌシトカゲが前座……?

 衝撃の事実に俺は困惑を隠せない。

 一撃で仕留めたとはいえ、ヌシトカゲを倒せたのは不意を突けたから。

 正面衝突では俺のSTRを上回る、化け物だぞ?


「あのヌシトカゲが本気でないとすればまさか……」

「サポートAIちゃんは察しがいいねえ! 見せてあげよう、我が真の力! いでよ! 電脳機神ヴァルブレイバー!」


 トウヤが叫ぶと、地面がグラグラと揺れ始めた。

 それだけじゃない。

 辺り一帯に金属音とジェットエンジンの音が鳴り響いている。

 ん? ファンタジーの世界に“ジェットエンジン”?


『操縦士はモンスターに乗って戦う職業です。まあ、最終的に戦闘機とかに乗るんでモンスター関係ないですけどね』


 ……まさか!


キィィィィィイイイイン!!


「うっ!」

 

 ジェットエンジンの音がより一層増し、やがてその姿を現す。


「……なんだあれ」

「ロボット……じゃないんですか」

 

 現れたのは戦闘機ではなく、十メートルは優に越すサイズの直立二足歩行型兵器。

 俗にいう“巨大ロボット”だ。


「さあ行こうかヴァルブレイバー! 弱者共を蹴散らしてやろう!」


 やれやれと、けだるげな青年はどこへやら。

 ヴァルブレイバーに乗り込んだトウヤは意気揚々としている。

 これがダークゾーンの影響か、お気に入りのロボットで戦えるからなのか、俺にはわからない。

 だがこれだけは言える。

 この状況はヤバい。


「モモカちゃん、操縦士って結構やりたい放題なんだね……」

「まあ作った人も“これが俺のロマンじゃああああああい”と変なテンションでしたし」


 知らなくてもよかった裏話。

 案外スタシアの運営は自由なのかもしれない。

 アットホームで素晴らしいとは思うが……、


「でもまずは」

「そうですね」

「「逃げよう」」


 巨大ロボ相手に生身の人間が正面突入するのは自殺行為だ。

 俺は加速魔法を自分にかけ、この場から全力で離れた。


「逃がすか!」


 逃げる俺達を追いながら、ヴァルブレイバーは頭部からバルカン砲を打ち出す。

 バルカン砲はロボットの兵装の中でも一番弱い、と言われているがそれでも生身相手なら十分すぎる威力を持っている。

 俺はそれに対抗し、風魔法と土魔法の障壁を後ろに展開したが、


「うわ! 一発当たっただけなのにHPがかなり減ってる!」

「ダークゾーンの影響でステータス三倍ですしね。バルカンでこれならビームライフルは一体どれほどの威力が……」

「洒落にならない事言わないでよ!」


 運悪くバルカン砲を一発くらってしまった。

しかも恐ろしい事に俺のHPは1/4も減っている。

 つまり四発当たればゲームオーバー。

 回復が充実しているとはいえ、この威力は無茶苦茶すぎる。


「ほう、ならお望み通りビームライフルを打たせて貰おう!」

「え、本当にあるの?」

「あるみたいですねぇ……」


 ヴァルブレイバーが取り出したライフル型の武器。

 間違いない。

 みんなおなじみ、ビームライフルだ。


「くらぇぇえええええ!!」

「っ! “魔障壁”!」


 高出力のビームが射出され俺の方へ一直線に向かっていく。

 俺は瞬時に風、土、水を三重に張った防御壁を展開し防ごうとする。

 が、


「くっ……なんて威力……!」


 ビームの威力は凄まじく被弾しただけで防御壁を破壊する程だった。

 防御壁が一瞬で消える度に、新たな防御壁を展開して防ぎ続ける。

 防御壁は限界を迎えているのに対し、ビームの威力は落ちることを知らない。

 マズい、このままじゃ押し切られる……!


「"物体操作"……! うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ほう」


 俺は物体操作を発動し、ビームを念力によってねじ曲げようとする。

 それでもビームは僅かに傾く程度……しかし、そこが狙いだ。

 ビームが傾いた瞬間を狙い、俺は防御壁も斜めに傾けた。

 そうすることによりビームは徐々に着弾する場所を失い、やヵて空を舞って彼方へと消えていった。


「受け流したか……なかなか器用な事するんだね」

「はは……器用な事は得意なんだ」


 しかし、一発だけであの威力。

 ビームを何発も撃ち込まれたら間違いなくゲームオーバーになる。

 ……防御は止めて、こっから攻めに転じよう。

 この状況を打破するには、それしかない。

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