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アンチ同盟

11話です

いよいよ戦闘が始まります

「さーて、今日も頑張るとしますか」


 昨日と変わらず、モンスターを狩ったり素材を収集してアイテムを合成したり。

 これだけだと俺達もリスナーも飽きると思うので、今日は行ったことの無いフィールドに行く予定だ。

 レベルに不安は残るが、アイテムも充実して来たし多分大丈夫だろう。


【乱入者を発見! シアターをバトルモードに移行します!】


「こんな時に乱入者かよ。あーさっさと終わらせるか」


 シアター内に武器を持ったNPCや無人兵器が出現し、戦闘態勢に入る。

 乱入者、とはシアター内に侵入してくるプレイヤーの事だ。

 シアターに乱入し見事制圧に成功すれば、乱入ボーナスとしてシアタースキルやアイテム等を強奪する事が出来る。

 この乱入ボーナスがなかなか肝で、奪われた時のデメリットがデカいが、逆に奪った時のメリットが凄まじい事から、スタシアでは乱入する事が完全攻略への一番の近道と言われていた。


「そうだね。というかセットしたNPCや無人兵器で十分でしょ?」

「ここのシアターかなり守りが固いですしねー。ランダムで入ってきたプレイヤーくらいならすぐ……え?」

「ん? どうした」


 ウィンドウを見て突如、困惑した表情を浮かべるモモカ。


「最終エリア……突破されました」

「え? 嘘……」

「は!? こっはーですら突破出来ない最終エリアだぞ!? 一体どういう事だ!?」


 最終エリアの突破。

 その衝撃の事実に動揺を隠せない。

 我ら西山オフラインのシアターは、こっはーのレア素材のおかげでかなり強固な守りを実現させている。

 その強固さはネットから「ステマ野郎!」と批判されるくらいだ。

 事実、今までランダムで乱入して来たプレイヤーの殆どが、最初のエリアでゲームオーバーしている。

 だからこそ、シアターの守りに関しては絶対の自信があった……筈なのに。


「はは、西山オフラインのシアターってこんなにもろい物なのかよ」

「やれやれ、僕をもっと楽しませてほしいよ」

「!? 誰だ!」


 後ろの扉から現れた人物。

 一人は耳や鼻にピアスをし、大量の指輪をギラギラと輝かせる荒々しい中年男性。

 もう一人は黒いコートを羽織った、ヒョロヒョロとした青年だ。

 二人共気迫が違う、かなりスタシアをやりこんでいるな。


「俺達だけじゃないぜ?」

「……そういう事か」


 二人の後ろから出てきたぞろぞろとプレイヤーが出てくる。

 ざっと十人くらいか。

 あの二人に比べれば弱いが、それでもかなり手馴れのプレイヤーだろう。

 なるほど、この集団なら俺達のシアターを突破出来てもおかしくない。

 とすれば……、


「どうしてここがわかった? 俺達はシアターの情報を一切公開していないぞ」


 ランダム乱入で都合よく熟練プレイヤーが集まる訳がない。

 これは計画的な乱入だ。


「掲示板にいた一人が特定したんだよ。まあ、特定方法まではよくわからんがな」

「アンチ同盟って奴かな。君達相当嫌われているみたいだしね」

「掲示板……あー……」


 掲示板でピンときた。

 俺達西山オフラインは色々なゲームをプレイしている。

そして、影響されたリスナーがそのゲームを始める事も珍しくない。

 これがオフラインならいいのだが、オンゲーの場合、影響されたリスナーが荒らし行為を行う事例がたまにあるのだ。

 一応トウィッターや動画の最後で、俺達がプレイしたゲーム上での迷惑行為はやめてください、とは言っている。

 それでも止めない奴がいる為、俺達というかミーチューバーは掲示板の住民や一部ゲーマーからかなり嫌われているのだ。


「また荒らし……ですか?」

「ご名答。西山オフラインにたてつく奴は消えろ! と変な信者が湧いてイライラしてんだよ」

「やっぱりか……」

「まあ、西山オフラインってファンもアンチもそれなりにいますしねー」

「だから俺達は結託した。お前ら西山オフラインをぶっ潰す為にな!」


 ダンッ! と地面を踏んだ荒々しい男。

 そりゃイラつくのも無理ないよな。

 自分たちはゲームを楽しみたいのに、俺達のリスナーに邪魔される。

 良くも悪くも、ミーチューバーの影響力が出ている事例だ。


「さあ、勝負しやがれ西山オフライン! やらなきゃ、お前たちのシアターは俺らがぶっ壊す!」

「やるしか……」

「ないよな……」


 ここで引けば今までの一週間が無駄になる。

 それに、俺達のリスナーがやらかした事だ。

 少なからず俺達のせいで迷惑をかけている以上、ここで引くわけにはいかなかった。


「それじゃあ始めようか……オラァ!」

「ぐふっ!?」


 瞬間、荒々しい男の繰り出す拳がみぞおちに入った。

 重く鋭い拳は俺の身体を吹き飛ばし、シアターの壁に激突するまで勢いを落とさなかった。

 早い、今の動き……全く見えなかったぞ!


「シンジョー!? そっちがその気なら!」

「ぐおっ!? やっぱこいつつええ……!」


 吹き飛ばされた俺を見てこっはーも戦闘態勢に入る。

 腰から抜いた剣で目の前のプレイヤーを一刀両断、プレイヤーは抵抗することもなくゲームオーバーとなった。


「ふん、流石魔法戦士か。おい、トウヤとか言ったな! あいつの相手はお前に任せる!」

「やれやれ、初対面の相手じゃないよ。まあ、いいけどっ!」

「!? これはっ!?」

「気を付けてくださいマスター! あの人は操縦士です!」


 トウヤという青年が手を挙げると、突如地面に魔法陣が展開、そこから大トカゲ型のモンスターを呼び寄せた。

 

「よっと! そら行け!」

「くっ! こいつ力が……!」


 トウヤが大トカゲの上に乗ると、それを合図に大トカゲがこっはーに向かって突進してきた。

 慌てて剣でガードするも、大トカゲはいとも簡単にこっはーを後ろに押し出していく。

 こっはーのSTRはスタシア全プレイヤーの中でもトップクラス。

 それを押し出すとはあの大トカゲ、STRは一体いくつなんだ……


「ヌシトカゲは凄まじい怪力のモンスター……正面突破は危険です!」

「なら……せやぁっ!」


 ヌシトカゲを剣で受け流し、こっはーは戦闘態勢を整え直そうとする。

 が、


「隙ありぃ!」

「! 横からか!」


 別のプレイヤーがこっはーに向けて氷の塊を放つ。

 だがレベル63にとっては遅く見えたようで、なんなく防がれてしまう。

 しかし、気づけばこっはーの周りをプレイヤーが囲んでいる状況だった。


「十一対一かよ……リンチもいいとこだぜ」

「こうでもしないとあいつには勝てないからな」

「! いつの間に……」


 その場で立ち上がろうとした俺の隣に、荒々しい男がいた。

 男の言う通りだ。

 こっはーは職業とレベルがトップクラスのプレイヤー。

 まともに挑まず、複数の熟練プレイヤーで抑え込むのが一番確実だろう。

 そして……、


「俺はお前一人か……」

「お前程度俺一人で十分なんだよ。ま、他の奴らでもよかったが保険だ」

「はっ、それは誤算だな……」

「何?」


 ゆっくりと男へ近づいていく。

 こいつはとんだ誤算をしている。

 強いこっはーにプレイヤーを集中させ、弱い俺には一人だけで対処させる。

 いい作戦だ。

 しかし、それは西山オフラインが相手じゃない場合だ。


「俺を舐めてたらかなり痛い目に合うぜ?」

「はは、戯言をっ!?」


 手を向けた瞬間、男は何かによって吹き飛ばされた。


「お返しだ」

「くっ、一体何を……っ! ……そういう事か」

「気づいたか。だが誤算だって事がわかっただろ?」


 俺の右手には一つの風車(かざぐるま)が握られている。

 これは【暴風の風車】といって、風車を向けた方向に強い風属性魔法を放つアイテムだ。

 俺は武器もステータスも不足する分、アイテムでそれを補う戦法をとっている。

 しかし、そのアイテムはこっはーのレア素材のおかげで、かなり強い物となっているのだ。


「はは、やっぱ保険は大事だな」

「そうだな……何事も油断は禁物だ」

「改めてそれを実感した、感謝する。ところでお前の名前はなんだ?」


 西山オフラインは知っていても、俺の名前は知らないのか。

 まあ、ミーチューバーなんて興味がない人からすれば誰? って感じだしな。

 なら改めて名乗らせてもらおう。


「シンジョー……西山オフラインのシンジョーだ」

「はは、シンジョーか。俺はコンバットってんだ」


 コンバット、そう名乗った男は立ち上がり戦闘態勢に入った。

 武器を何一つ持たず、ひたすらシャドーボクシングで準備運動をするコンバット。

 そうか、こいつはファイター。

 武器が装備できない代わりに、直接攻撃がかなり強い職業だ。

 油断は……できない。

 

「はは……いくぜぇ!」

「ぉぉぉぉおおおお!」


 二人が駆け出すと同時に、戦闘が始まった。

 西山オフラインVSアンチ同盟。

 戦いの火ぶたが今、切って落とされる。


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