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〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉  作者: ナザイ


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22/22

天災とは99%の力と1%の狂気 その1:日常の朝

モブ達の物語第七段です。

今回はアンミール学園日常編にしてみました。

主人公は第8危険薬学部副部長、次期魔術科主席候補のエイガルスです。



英雄候補の集うアンミール学園の朝は喧騒から始まる。


目覚まし時計など不要。


隕石が衝突したのに等しい程の爆音で目覚めない者はいない。

まあ、いるから起こす為に爆撃魔法やら核撃魔法が身体を揺さぶり起こす感覚で放たれるのだが、普通の者ならばまず目覚める。


第一校舎、その西区画第五層に聳え立つ巨城ヴァリアンレシスに住まう彼も、睡眠と言う意味では一般人と変わり無かった。


「……くっ、また防音結界が許容量を越えて破壊されたか。これがランク15の魔石の限界、いや相性か? 次は音を司る魔王でも仕留めるか……」


まだ半分寝ながら、寝ぼけているとしか思えない事を呟く彼の名はエイガルス、このアンミール学園の生徒であり、英雄候補の一人。

候補と言っても、寝ぼけているのでも何でもなく、魔王レベルの脅威を部品調達感覚で刈り取る下手な神、いや下手じゃない神をも超える超越者の一人だ。


そんな彼は、魔術により一瞬で、白衣とローブの間のような服装に着替えると、同じく魔術で髪を整え顔を洗う。


そして寝室の扉に術式を入力し、他の部屋を飛ばして自室の外に出た。


自室の外は、青い炎に包まれていた。


「よぉう、ガルス、おはぁよう…」

「おはよう、ロンド。寝癖が直っとらんぞ。あと、寝間着のまま外に出て来るな」

「堅苦しい事、言うなよ。部屋の外も家だろう」

「ふん、まあ良い。恥をかくのは貴様だ」


隣の部屋から出て来た同級生件幼馴染のロンドと共に、燃え盛る炎を気にせず、当たり前の様に結界を纏い食堂へと向かう。


向かっていると、眼の前の壁が吹き飛んだ。


「ふぅ、やっと扉が開いたか」

「馬鹿め。壁ごと吹き飛んでおるわ」

「おう、おはようガルス、ロンド!」

「おはよう。アル。また部屋を壊して、テリス辺りにキレられるぞ」

「建付けが悪いのがいけない」

「建付けでは無い。見ろ、扉が融けたのだ」

「む、これは完全に融けているな。修理ではなく新しいのを頼まなくては。ミスリルを混ぜてあると聞いたが、これも駄目となると高く付きそうだ」


アル、アルテリオンはやっと気が付き、扉をどうしようかと思案する。


「というか、扉が融けているのにドアノブ握って気が付かなかったのか?」

「寝ぼけていたからな」


金属、それも魔導金属であるミスリルを混ぜた合金すら融かす高温に触れて気が付かなくとも寝ぼけていたで済ますアルテリオン。

彼は現在も結界を纏わず生身だった。


「いい加減、防衛魔法を自分の部屋に掛けろ」

「鍵術式を忘れる度に、部屋ごと吹き飛ぶから嫌なんだよ」

「この前もあったな。危うく俺の部屋まで吹き飛ぶ所だったぞ」

「鍵術式くらい忘れるな」


今も業火に呑まれている事自体は特に気にせず、三人は共に食堂を目指す。

業火の発生源に向かって。


「今日は朝食はなんだ?」

「この蒼炎は蒼炎竜のブレスと同質の炎だ。その炎がここまで広がっているのはドラゴンオイル、アイスタートルドラゴンの脂と竜の猿酒によるものであるから、おそらく蒼炎竜のステーキだろう」

「よく炎だけで分かるな」

「それら食材を提供したのはこの俺だからな。それにこれだけ特徴的な魔力だ。分からない方がおかしい」


場を包む業火に話題が飛んでも、その炎がここまで燃え広がっている事には何とも思わない一行は、コロシアム程の面積と高層建築の高さを併せ持つ巨大な吹き抜けに到着した。

業火の発生源は吹き抜けの底であり、その場所がこの巨城の食堂であった。


三人が吹き抜けの縁に出ると、業火はドラゴンの形を取り、その牙を三人に向ける。


「ふむ、食材の生命力が強過ぎた様だな」

「炎にまで命を与えてるのか」

「それは美味そうで何より」


三人は何事も無かった様に下に、ドラゴンの口の中へと飛び降りる。

それで喰われたかと思えば、ドラゴンの方が口を閉じると同時に霧散した。


降る毎にドラゴンの数は増えてゆく。


壁を爪で抉り裂いていたドラゴンはその爪をロンドに向けるも、ただ掌の一振りで蝋燭の炎の様に掻き消され、アルテリオンにブレスを放ったドラゴンはブレスを軽く押されるとブレスが逆流し膨張すると破裂した。

エイガルスを狙う個体は、ただ近付くだけで霧散する。牙や爪を届かせる事は勿論、ブレスを近付けても消えてゆく。


そして、そのまま何事も無かったかのように食堂に張られた結界をすり抜けて着地した。


「あっ、エイガルス! ミイシャが料理していたら急に炎が溢れたんだ! 早く消して!」

「む、そういう趣向の朝食では無かったのか?」

「そんな料理がある訳ないじゃ無いかっ!!」

「あの炎のドラゴン、この城の八重の強化術式を焼き払って城を壊しているんだぞ! 千人のA級冒険者が取り囲んでも傷一つもつけられないこの城を!」

「落ちけよ。相性の問題だろう。ただ術式も焼き払えるってだけだと思うぞ」

「そんなの相手にしていたら私達なんて簡単に燃えちゃうわよ!」

「現に無事ではないか。なかなか良い結界だぞ。A級冒険者如き、手も足も出ないだろう」

「「「エイガルスに壊される事も無くすり抜けられたけどね!」」」

「む……」

「まあまあ、この位の事なんて、昨日も五回はあっただろう?」

「「「こっちは毎回命がけなんだよ!!」」」

「その下手人も、お前たちであろうが」

「「「黙秘権を行使する!!」」」

「元気があって大変よろしい」


なんだかんだでエイガルスが軽く魔力を解放すると、それだけで夢であったかのように炎は消え去った。


「何度見ても凄え! 術式の完全解体!」

「どうやったら出来る様になるの!」

「この程度なら、ここで暮らしていたら勝手に出来る様になる」

「「「ああ……」」」


全員、その言葉で納得した。


尚、朝食のドラゴンステーキは絶品であった。




朝食が終わった頃には、燃やされた城の内部はある程度修復されていた。

城に何重にも掛けられた修復術式や、埋め込まれたハウスコア、ダンジョンコアを家用に改造したものの力である。


「今日は修復が遅いな?」 

「術式毎焼かれたから当然だ。修復力は先ず術式そのものの修復に回される。早くとも修復が終わるのは昼頃だろう」

「暫くは焦げ臭いままか。なら俺はこのまま扉の材料を採って来よう。テリスに扉の修理を頼んだら、治して欲しいならアダマンタイトスライムの素材でも採って来いって言われたからな。じゃあ!」

「それ、ただの罵倒だと思うぞ!」


アルテリオンはロンドの言葉を聞く前に姿を消した。

空を蹴って一瞬で目的地まで跳躍したのだ。

向かった先は第四校舎第五衛星都市近郊にあるダンジョン、【第二十四スライム牧場】である。


「あの馬鹿、本当に行ったみたいね。まあ良いわ。本当に採ってきたら扉くらい造ってあげる」

「テリス、扉一つでぼったくり過ぎじゃないか? アダマンタイトの肉体を持つと言うだけで最低でもランク10以上だが、流動性まで持つアダマンタイトスライムって確か、聖剣級の力が無ければ傷一つ付けられないんじゃ無かったか?」

「うむ、アダマンタイトの強度に加えて凄まじい衝撃吸収能力を持っていたな」

「あの馬鹿はこれくらいしないと頭を冷やさないのよ。まあ、私もまさか一切疑問に思わず討伐に行くとは思っていなかったけど…」

「「「はぁ……」」」


自称、常識人である三人は友に対して深い溜息を吐いた。

尚、互いに自分以外の二人の事も手に負えないと思っている。


「まあ、俺もそろそろ行くか。良い話のモデルになりそうな取材先を見付けたんだ。昼には戻って来ると思う!」

「ちょっと!」


ロンドは何処かに転移して行った。


パジャマ姿のままで。

しかもドラゴンの炎を袖先に引火させながら。


ロンドは他人の生き様を物語や歴史書として収めたいが故に、自分に無頓着過ぎるアマチュア作家であった。


「……毎回思うんだが、あいつ、ちゃんと取材出来ているのか」

「答えなんて、分かりきっているでしょう」

「そうだな」


絶対に上手く行っていない。

何なら取材先を間違いなく荒らしている。

口には出さなくともお互いに意見を共有した。


「俺も今日の実験を始めるとしよう」

「この城でするのは禁止だからね」

「分かっている。暫くは止める」

「暫くじゃなくて永遠によ!」

「そう言うのならば、貴様も無駄な増築は止めるのだな。貴様のせいでこの前は部屋に向かうのに三時間も彷徨う羽目になったわ」

「断るわ! こんなに良い素材を増築をしないないんて、建築家にとってあり得ない!」

「奇遇だな。実験室でないからと実験をしない者は研究者の恥だ。だから俺も好きなように好きな場所で実験をする」


二人が睨み合うと、その意思に呼応した魔力がぶつかり合い空間を軋ませた。

行き場を失った魔力が大気を支配し、空を二分する。


「ふんっ、今日のところは止めておこう。貴重な時間が無くなる」

「私も、研究者馬鹿に使う時間なんて無いわ」


戦意を鞘に収め、捨て台詞を吐くと二人同時に真反対の方向に歩き出した。




エイガルスは転移などを使わずに、自分の足で目的地へと向かう。

何故ならば、アンミール学園の生徒達が開く店舗や露店で掘り出し物がよく見つかるからだ。


「むっ、それは何だ? アースドラゴンの肝に見えるが何かが違う」

「よく分かったっすね。エイガルス先輩。実は、後で食おうと思って保存していたらすっかり忘れて腐り始めてたんすよ。だから特別大特価っす」


普通ならば腐りかけのものを販売して御用される、いやアースドラゴンと言う希少な物を露店で売っている事に驚愕され、かつそんな希少なものを腐らせた事に非難の目を向けられる事になるだろうが、エイガルスは好奇の目を向けた。


「ほう、アースドラゴンの肉、それも肝を腐らせたか。それは面白い。ドラゴンとは生命力の象徴、しかもその肝となるとまず腐らない筈だ。いや、そう思われていただけで希少だからと誰も試していないだけの可能性もあるな。なんにしても面白い。言い値で買い取ろう」

「毎度あり!」


お互いにホクホク顔で取引が終わっても、エイガルスの好奇センサーが鈍ることは無い。


隣の露店で再びエイガルスは足を止めた。


「強固な所有者固定付きの装備一式か。ここまでのものは珍しい」

「でしょう? 所有者が死んでも外れないなんて、僕も初めて見ましたよ。で、どうします? 夢に出て来たりするけどこれを逃したら二度とお目にかかれないかも知れませんよ?」

「幾らだ?」


そう言ってエイガルスが値段交渉を開始した対象は豪華な鎧を身に纏った屍だった。

しかもそこそこ新鮮そうな……。

普通なら興味を持つ持たない以前に衛兵さん達を呼ぶべき一品だが、エイガルスは研究者としての視線のみを向けていた。


そして最終的に購入。


同じ様に大量のガラクタ、半分は職質案件、もう半分は任意同行案件、そのうち更に半分は逮捕案件なそれ等を買い取りアイテムボックスに放り込みながら辿り着いたのは第8危険薬学部の部室棟。


しっかり周囲の建物に距離を置かれ、何かあったら焼却してやろうと善意の市民の手で全面を兵器で囲われた、管と配管だらけの空中庭園。

その上に同じく配管などで覆われたピラミッドやら石舞台やらオベリスクやらが乱立し、管の刺さる巨木や草花が生い茂る異様な建物。


まるで自然や遺跡が科学によって調べ尽くされ利用され尽くされる、冒涜される様をギュッと濃縮したようなその場所こそが第8危険薬学部の部室棟、第8危険薬局、略して通称【破局(はっきょく)】だった。


扉を開けると、紫色の液体が噴き出す。

薄らと光るその液体は外気に触れた途端、凄まじい煙を出して空気の侵食を始めた。

空気が溶かされ、自然現象ではあり得ない勢いで風が引き寄せられ、暴風は液体の中に呑まれてゆく。

液体の体積は変わらず、空気の侵食域が肥大し、それよって暴風の勢いは加速的に進む。


が、エイガルスの前でそれはピタリと止まった。


エネルギー凍結魔法。

時間停止にも等しい魔法を一瞬で編み込み全てを停めたのだ。


「アルカが作っていた無呼吸薬か。膨大な量の空気を溶かすという発想は良いが、やはり試験容器まで溶かしたか。そもそも、今の吸収量と変位量、体積の変化からして吸える気体の量は1ゼタリットル程度、有限だ。まだまだ改良の余地がある」


本来魔力も吸収し、術式を掻き乱すそれを緻密かつ正確な術によって簡単に停めたエイガルスは、何事も無かったかの様のに部室棟の奥へと進む。

1ゼタリットル、地球の大気の2割を呑み込める特級の危険物を処理や封印する事なく、ただ停止させたまま。


奥に進むと紫色の炎で先が塞がれていた。


「誰だ。フルオロスライムの溶解液をガラス容器に容れたのは。フルオロスライムの皮膜かマジックテフロンが無ければ保管できぬのは常識であろうに」


分厚いマジックステンレスの壁を腐食し、更に室内に有った様々な材料の入った容器を溶かし混じり合い凶悪度の増したソレ、揮発成分の霧が街一つを溶かしてしまったという逸話のあるフルオロスライムの溶解液プラスアルファが目の前で漏洩していても、ただ文句だけを述べて歩みを止めない。


ただ魔術を振るってゆく。


軽く腕を振るうと炎は収まり、凶悪な液体の中から溶けていた金属成分が析出し、元の壁の形に戻ってゆく。

次々と溶けていていた成分が分離され、元の形に戻っていった。


そして最後に残ったフルオロスライムの溶解液に封印を施し、そのまま部屋の前を通り過ぎる。


本来、同じ事故が発生した場合は処理をするどころか街ごと、その周辺の土地ごと放棄し、その腐食力が中和されるまで数百年の時を待ち、それでも近く変動などで地形が変わらない限りは広大な毒沼までにしか戻らないそれを、たかが数秒で再生させたが、息を切らす事すら無かった。


その後も、暴走し続ければ広大な砂漠を生み出す多孔質魔結晶を隔離し、いずれ世界すらも霧化してしまう焦魔体を減衰させ、存在するだけで周囲の生命の魂を引き抜き広範囲の生命を短命化する魂分離触媒を不活化させたりしながら、実質災害を幾つも鎮圧しながら自室へと辿り着く。


尚、入り口からまだ5分と経っていないが、その間に少なくとも大陸規模の災害が散りばめられていた事も、足を止めることも無く抑え込んだ事にもエイガルスは何とも思っていなかった。

恐ろしい事に、これが彼の日常である。


そして、これが第8危険薬学部の日常でもあった。


周囲に隙あらば世のため人のために焼却しようと善意の人々の兵器が配置されているのも無理はない。


尚、更に恐ろしい事に危険薬学部は全部で13存在している。

どこも似た様なものであり、ここよりも危険とされている通称第死危険薬学部、第4危険薬学部も存在していた。

尚、第8はエイガルスが所属してからというもの、2番目に危険になったと評判だ。


そんな人類すら崩壊に導く絶望がそこら中にに転がっており、それをうっかり踏んづけてもそのまま踏み潰してしまうのがここ、アンミール学園である。



天災を蹂躙してエイガルスが辿り着いたのは多くの管が引き込まれた部屋であった。

常人には開けない城壁の正門の様な大きく分厚い扉であったが、あまりに多くの管が伸びている為に完全に開け放たれている。

にも関わらず、人二人がギリギリ通れる程度の隙間しか残っていない。


扉の上部に取り付けられたプレートに書かれているのは副部長室という文字。

ここがエイガルスの研究室であった。


内部は床も天井も真っ白。

果ての壁は遠すぎてよく判別出来ないがこれも白い、部室棟よりも遥かに広大な空間。

そこに謎の液体が入った容器やら、ジャングルジムの様に入り組んだガラス器具やらが無造作に置かれている。


空間魔法で小国ならすっぽり入る程に広げられた部屋であったが、それでも物に溢れ散らかっていた。


そしてそこで作業しているのは影。

人を影で塗り潰した様なそれは、エイガルスが分身魔法を改良し余計な部分を削ぎ落とし、作業能力のみを残した彼の分身であった。


ただ、流石のエイガルスも次々に創薬のアイデアが浮かぶ訳ではないので、基本的に大部分は倉庫だ。

この部屋に来るまでに買った物と同じ様な物を大量に保管している。


「む、また失敗か」


突如部屋の端の方が光り、大地を揺らす様な轟音が轟く。

一角で大爆発が起こったのだ。


この部屋が広大な理由はこの様な失敗が日常的に発生するからでもあった。


そして起こるのは爆発だけでは無い。


『ぐろぉぉぉ………』


溶けた化け物、それを練り合わせた様な複数の顔を持つ怪物が爆発と共に内部から飛び出して来る。

しかも一体では無い。

大小シルエットすら揃わない無数の化け物が深緑色の炎を出す泥から次々と生まれていた。


「ふむ、新しい長命薬を造るために生命力そのものを濃縮してみたが、形になる前に素材に命を与えてしまったか。復活薬の参考にはなるが、このままでは有効成分のみを抽出するのが困難だな。しかし、これは紛れもない進歩だ!! ふはははははっっ!! 面白い、面白いぞこれは!!」


狂気の笑い声を上げて、しかし偉業の塊ではあるその異形に、嬉々として更に手を加える。


化け物を重力で捕らえ、雑巾のように絞った。


『ぐろぉぉぉぉぉっっっ!!!』


鍋状した結界の中にドス黒い蠢く液体が注がれる。


「潰してもまだ動くか!! それだけ強引に命を与えるのだな!! これは注いだ生命力の効能か、それとも受け皿にした素材の影響か!! 確かめねばなるまい!!」


次々と化け物が捕らえられる。

ある化け物は焼かれ、ある化け物は凍らされ、ある化け物は乾燥し、ある化け物は更に生命力を注がれる。

ありとあらゆる実験が、化け物であっても仮にも生命であるその存在に対して行われる。

それは正しく生命への冒涜。

あまりに悍ましき所業。


目的の為には手段を選ばぬ生粋のマッドサイエンティスト。


が、それはまだ序の口。


彼は天災と呼ばれる天才。

人呼んで【狂天災(マッドディザスター)】。

そして彼は幼少よりアンミール学園で育った生粋のアンミール学園生。この学園へ来る前にその称号を得た訳ではない。

通常の世界であるならば、幾らでも同じ称号を手に入れられるだろう。しかし彼は、アンミール学園生からそう呼ばれ、その称号を手にした。


即ち、超奇英雄の多いアンミール学園においても天災と称されるだけの人物。


この程度のことで、天災とは呼ばれない。


これはまだ彼以外からしても日常であった。



その2:日常の午前を後日投稿予定です。

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〈モブ達の物語〉あるいは〈真性の英雄譚〉もしくは〈世界解説〉
これです。

本編
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