モブ紹介 第八十五話〜
・ウィリギアス・レムル・ノーストライア
司法科。裁判官。正しく裁く為に諜報員の様な真似事もする様になった少年。代々最高裁に値する機関の長を世襲する家の一つであるノーストライア家の嫡男。
本来は成人まで裁判長になる予定は無かったが、同じく世襲していた同格の貴族家が汚職の発覚により複数没落、裁判長となり得る家格のものが極端に人材不足となった為に、十歳に満たない頃からお飾りの裁判長として実務に触れる様になる。
更にその後、同様の混乱で法務大臣に父がなった為、圧倒的歴代最年少で三権の長となる。そんな中で、半ば必然的に極刑妥当の極悪人の裁判に携わる様になる。
本来、極刑に処す場合、裁判官である彼に経験値は入らなかったが、極刑となる要因の多くが彼となる事で罪人を処分した時の経験値を得る様になり、力を付け、最終的には罪人を捕まえ処罰するところまでするようになった少年。
処刑を行う場合、執行人は戦闘とは異なる為、職業行為としての経験値は手に入っても、魔物を倒す様な経験値は得られなく、捕まえた衛兵も捕まえただけなので経験値は得ていなかった為、彼がその罪人の経験値を全て受け取るようになった。そしてレベルを急速に上げた。
大量の経験値を得た結果として戦闘能力も増しており、捜査から制圧、逮捕に裁判、そして処断まで一人で行えるようになった万能裁判官。
彼が主人公の物語に題名を付けるならば、【裁判無双(物理)】である。
・ロメスティア・ヒィルモナス・イル・アスモロゼスタ
王侯科。千年箱入り娘。生まれた当時、流行病が蔓延していた事により人類統一国家皇女であった彼女は空間的時間的に隔絶された城の中で過ごす事となった。城を出た時、文明は一度滅び、大幅に魔法技術が衰退しており、結果的に無双するようになった少女。
尚、時空間が隔絶された中でも肉体年齢は止まっていたが精神的には千年間過ごしており、千年前の魔法知識と千年の間に磨いた魔法技能を有している。加えて主神の直系であり、身体能力も非常に高く様々な武術まで高度に修めている。
共に千年過ごした使用人や護衛、教師役も全員高位貴族の子息や御令嬢であり、流行病に大人達が対応して城には入らなかった結果、全員常識が徹底的に無い。その中でも彼女は箱入りの中の箱入りで圧倒的な常識の無さを有している。
千年後、彼女達の国が滅びた後に目覚めると自力で城を再建。その土地は強力な魔獣が跋扈していたが容易く蹂躪。調査しに来て服属と城の明け渡しを求めて来た近隣領主の軍を自分達の国として疑わない彼女達は反乱軍として蹂躪。力によってあっという間に支配下におく。そして反撃に来た国軍を撃退しそのまま王国を蹂躪した。
更には国を支配下に治めても、支配者としての実務を知らなかった彼女達は気ままに旅行したり、その先で不敬な態度をとったと別の国の領主や王を蹂躪するなど、気ままに支配地を広げる常識無き、話の通じない絶対者。
人類を統一していた国家の正当な後継者なので御一行は全員世界の支配者と信じて疑わないのでたちが悪い。
彼女が主人公の物語に題名を付けるならば、【不敬紀〜千年前に国は滅びた? 何を仰るの? ここは私の国でしてよ〜】である。
・アン・アズ
人科。超古代文明に造られたキメラ。超古代文明の終わりにして、未来への希望を託され造られた最後の人間にして始まりの人間になる予定だった存在。未完成のまま、キメラとして数万年後に起動する。
作製時は不完全な生命体であり、魂は存在しなかった。旧人類が絶滅する程の過酷な環境に耐えられる肉体であり、環境に適応し姿を変える性質を有していた為に、魂を集積しても肉体が変わりザルのように起動に必要な量まで満ちる事が無かった。
数万年後に新たな人類が付近で大規模な戦争を行い、死者の魂が十分に集まった為に起動する。
元々造られた目的は、滅びる人類の保存であり、大魔法の失敗で人の住めぬ世界となった地での文明の継承。死者の魂から記録を集積し、未来へと届けるのが目的であった。それを実現させる能力として魂を集積出来た為に、起動と共に記録を寄せ集めた自我が発生した。
しかしそれ故にアンは誰ものでも無かった。無数の人々の自我の欠片を寄せ集めた意思しか持たなかったから。記憶はあるのに自分が誰かは分からず、戦場で戦った者同士の対の記憶もある為に誰でもないと分かる。そして何時しか、自分が何者かの答えを求める様になる。
自我と共に手に入れた人の姿でその答えを得るために、そして人そのものを知るために遺跡を出て、旅をするようになった。魂の記録を頼りに、死者の思い残しをかき集めながら。誰かの願いを叶えながら。
彼もしくは彼女が主人公の物語に題名を付けるならば、【旅の果てのアン】である。
・セレンティア
ガングロギャルババア。不老スキルを持って生まれた少女(?)。御歳約千二百歳。薬学科。
千年近く故郷近辺の森に引き篭もって薬作りをしていたが、千年の発展でその森が近々開墾される事が決まり、千年振りに人里に出る事になる。
その出た先が流行の最先端を行く街であり、この時代に合わせようとガングロギャルな見かけになった。以来、二百年近くこの姿でいる。見かけはガングロギャル、頭脳はしっかりお婆ちゃんな外見詐欺師。口調は二百年間ギャルを意識しているが、頻繁にお婆ちゃんが出る。
千年を越える薬作りで薬師としての力は世界最高であり、魔獣も薬の材料として狩り続けたので戦闘能力も若者(ざっと五百歳以下)と比べて桁違いである。ただ、全力を出す時は美白魔法を改良したガングロ魔法を解いているので、あの英雄は誰だと探し回っても誰も見つけ出せないでおり、本人も普通の事をしただけで探されているとは思ってもいないので正体が露見する気配すらない。
そんな実力を誰に憚る訳でもなく遺憾なく発揮し無双しているのに見つけられず、自由気ままに過ごすガングロギャルババア薬師。
彼女が主人公の物語に題名を付けるならば、【ガングロギャルババアちょ〜さいきょー〜不老薬師の自由気ままお気楽のんびり旅??〜】である。
・ナナー・セト・セルギス
護衛科。護衛メイド。メイドの面接に行ったつもりが間違って隣会場の護衛試験の会場に行き合格。しかしまさか試験会場を間違ったとは思っておらず、メイドのつもりで勤務。戦闘への恐怖心が皆無な為に、いつの間にか強者へと成り上がった。
配属先が偶々姫騎士と呼ばれる王女が団長を務める騎士団であり、女性隊員が一人しかいなかった事で、本当にメイドの様に身の回りのお世話も担当する事になる。そして余計に誤解が解けなくなる。
護衛試験を合格した一番の決めて、能力が自身の周囲の動きを背後であろうと見ていたかのように知覚できる能力であり、細かい事を見逃さないのでメイドとしても優秀。自身の動きも完璧に知覚できる為、訓練では周りの動きを完全に正しい形で再現でき、武術を瞬く間に習得した。
そして仕える主人が第一王女であるが、騎士になりたいが為に王位継承を拒否している為に、出来の悪い兄弟達による王位争奪戦が勃発、常々狙われていた為にとんでもない実戦経験を積む事になる。
元々うっかり受けた護衛試験に合格するだけの知覚能力などの才能と、実戦を勘違いしている為に全く恐れない度胸が重なり、A級冒険者レベルの暗殺者がいない彼女の国ではもはや裏の戦力ではどうにもならない程の力を身に着けた。
彼女が主人公の物語に題名を付けるならば、【気配り上手なメイドさんは誰に憚る事もなく無双する】である。
・ぜアスト・アストラ・デル・ヴォーディアク
覇者科。爵位を剥奪された事を知らずに高位貴族だと思い続けている少年。爵位が無いにも関わらず、高位貴族として命令。従わねば処断。変わらずに税を徴収し、支配し続けた蛮王。
力に傾倒し過ぎ禁忌にも迷わず手を出し続けた為に爵位を剥奪された経緯があり、その集大成とも言える彼は単純に強かった。複数の悪魔をその身に縛り付け、天使の血に邪神の血に龍の血が流れる超人。そして誰よりも尊大。
先代当主が恐怖支配を行っていた事もあり、使用人達や一般人な元領民は意見すら言う事が出来ず、爵位が没収されたと真実を言われても臣下が何も言えない為に戯言と切り捨て、高位貴族として、そして領主として君臨し続ける。
強大な武力、高位貴族の領軍に匹敵する力を一人で有していた為に、彼を倒しどさくさに紛れて領地を我が物にしようとした周辺諸侯を制圧。そのままその領地まで奪う。
彼は傲慢であり邪悪な儀式の果に生まれた力を持つが、貴族の義務を全うしようとする君主であった。単に欲望に染まった周辺諸侯を許せなかった。故に彼なりの正義を信じ続け、省みる事なく進み続けた結果、周辺を制圧し支配し続ける覇王となった。
加えて王都のパーティーなどにも呼ばれてもいないにも関わらず強引に出席、立ち塞がる者は薙ぎ払い、自らを貴族と認めないものには正面から戦争を吹っかけ、遂に王のいる場では堕落し悪徳貴族の讒言を聞く王に値しない者として正面から排除するまで至った。
彼が主人公の物語に題名を付けるならば、【覇王の傲慢なる義務】である。
・ウィーラ・ゼフィライド
魔術科。才能があまりにも無い炎の大魔術師。反面氷属性に絶大な才能を持つ氷の女王。地元の魔法学園で才能がマイナスに大きく振れる火属性を専攻し、落ちこぼれと呼ばれながらも努力し続けた。
氷属性は希少属性である為に、その才能に気が付く以前に存在も知らないまま、相性の良い氷属性の魔力を纏い放出しながら火属性魔法の練習を続ける。それが負荷となり、強大な魔力と緻密な魔力操作技術を身に着けるに至った。
生来の才としてはそこまで氷属性の力は強くなかったが、その氷属性の魔力操作等を苦手としていた為、常に氷属性の力を使いながら火属性魔術を行使しようと続けた為に強者へと至った努力の天才。
しかし、自らの才に気が付かないでいた事がある日災いする。魔法学園を襲った悪魔による襲撃事件、そこで命の危機に瀕した彼女は氷属性魔術を暴走させた。悪魔を凍り付かせ、そして魔法学園を街ごと凍り付けにする。
その日から、凍り付けになった人々を救い出す為に、更に火属性魔法の修練を続け、更に力を高める事になった。
彼女が主人公の物語に題名を付けるならば、【不可判定の不火反帝】である。
・アザイエ
予言科。自分で未来を変える予言者。運命を見通す事が出来る能力を持つが、予言の精度を高める為にその能力には他者に伝える事が出来ないという性質がセットになっており、話したとしても誰にも真実だと思われない。加えて自分の未来を見る事も出来ない。そんな強力だが、結果としては意味がない能力を有する。
無意味な能力だと思っていた彼であるが、ある時魔王の復活を予知してしまう。だが、誰も信じてくれず、着実に滅びが迫る一方になってしまった。
そこで、自ら行動するようになる。未来の勇者が動いてくれないから自分で聖剣を回収し、未来の勇者が聖剣を握ってくれないから自分で弱い内に魔族を討伐し、そんな事を繰り返す内に魔王の討伐すらも果たした。だが魔王を討伐したという事実すらも誰も信じてはくれなかった。
それでも人々に危機が迫る度に自分一人で動き続けた。そんなお人好しの予言者。
彼が主人公の物語に題名を付けるならば、【陰の英雄は人知れず世界を救う……隠れる気、一切無いんですけど……?】である。




