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偉人達のセカンドライフ  作者: ジャック
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第一章 信長

初投稿なので、よろしくお願いします!

第1章 ―信長―


  「うわぁー、大きな家だなぁー」

 そう言って屋敷の門の前に立つのは『岡崎京花』彼女が何故この状況にあるのか、それは昨日四時の事だ。




「さてと、君達がこの学園に入学して約一ヶ月が過ぎようとしているが」

 そう言って教卓に立つのは一年一組の担任の『神藤弘太郎』である。

 「来月六月十七日はこの学校の三代イベントのうちの一つ、魔法体育祭だ」

 ここ『私立鈴奏学園』では通常の学校より徹底した魔法教育に特化した教育を行っている。

 それにより、体育祭などのイベントも魔法などが絡むものとなる。

「それで、今回のホームルームではその魔法体育祭の事についてだ」

 実は来月に控えた魔法体育祭には各業界の人間が観戦しに来るので、クラスが全員揃っていないと開催が延期されるという無駄な条件がある。

「クラスの全員参加、しかしこのクラスその条件クリアしてねぇんだよなぁ」

 そう、このクラスは本来四〇人いるはずなのだ。しかし、今この教室に居るのは三九人、そしてそのいない一人はただ今日休んでいるだけではなく、

「なんでうちのクラスで不登校出るんだよ」

 このクラスには理由は定かではないが不登校の生徒がいる。彼の事を知る人間はこのクラスにおらず、唯一分かっているのは

「俺その生徒の事顔と名前、それから住所しかわからないから明日誰かにそいつの家まで行って貰いたい」

「えぇ?先生行けばいいじゃないですか?なんで私達なんですか?」

 そう思うのは当然だ、普通に考えて担任である弘太郎が行くべきなのであるのだが

「俺明日は用事があるんだよ、それに教師より同年代の生徒の方が馴染みやすいだろ、自薦でも他薦でも構わんから誰かいねえのか?」

 そう申し訳なさそうに弘太郎が言うと

「はーい、ここはクラス委員の岡崎さんが良いと思いまーす」

 クラスの中で魔法の適性度の高いグループに属する女子がそう言った。

 この魔法が存在する世界では、魔法適性度の高い人間は学校等では上位の存在となる。彼女たちのグループはそれをいいことに、クラス内で自分たちの立場を上位に置いている。『スクールカースト』の様な物である。

「・・・え?」

 京花は状況が飲み込めず間抜けな声を出した。

「ん?あぁ、確かにそうだな」

「いや、ちょっと」

「頼む!多分そんなに嫌な奴ではないからさ!」

 そう言いながら弘太郎は頭を下げた

「えぇーーーーーー?!」

 そう、これが事の始まり、そして時は現在へ戻る。




 ピンポーンッ

「あれ?誰もいないのかな?」

 そう言いながらもう一度インターホンを押そうとした時

「はい、どちら様?」

(うわぁー、なんかすごく面倒くさそう・・・それとこの声って大人の人かな?)

「あっあの、私鈴奏学園一年一組のクラス委員の岡崎京花って言います!あの、織田信長さん居ましゅか?」

(か、噛んじゃったーー!)

 京花は初対面の人間に自分から話しかけるのが大の苦手である。

「あぁ?鈴奏学園?ちょっと待ってろ、今から出る」

 それを最後にインターホンから流れる音が途切れた。

「最後なんか普通に喋ってたな、ん?もしかして今の人が」

 ガラガラガラッという音をたてながら、屋敷の扉が開いた。

「そこそこ遠いのによく来たな、何の用だ?」

(やっぱりこの人だったーー!)

 そして青年は京花の立っていた場所にある門を開け

「話があるんだろう、入れよ」

 そう言って扉へと歩いて行く。

「え?!あぁ、ちょっと待ってぇ!」

 その青年の後を追ってトコトコと京花も走り出した。




 チリンッチリンッと風鈴の音だけが響いている。

「すまない、こんな物しか用意できないが許せよ」

 そう言って麦茶を出した。

「いや、私も急に押し掛けちゃって、その・・・ごめんなさい!」

 そう言って京花は頭を下げた。

「いや、そもそも俺が不登校なのが原因だ、悪かった。それと要件はなんだ?」

 そう言いながら茶を飲む彼の言葉を聞き、思い出した様に

「あ、そうだった。来月にある魔法体育祭の為に学校に来て下さい!」

 前のめりになりながら京花はそう言った。

「あぁ、いいぞ」

「そう言うと思っ・・・え?」

 想像とは百八十度違う返答に、京花は昨日から連日で間抜けな声を出した。そして数秒ほどぽかんとした後に

「え?なんで?!なんでここに来てOKなの?!」

 と机を叩きながら怒鳴り気味になりながら言った。その京花に対して青年は落ち着いた態度で

「まあ落ち着け、別に学校に行かない理由なんて一つしかないからな」

 そう言いながらもう一度茶を飲んだ。

 その反応に対して依然ぽかんとしてゆっくりと椅子に深く座り直した。

「もしかして、いじめとか?」

 そして恐る恐るそう聞きながら、ようやく用意されていた麦茶を飲みだした。

「そんなに下らない事じゃない、単純に面白くねぇからだ。」

「お、面白くない?え?それだけ?」

「あぁ、それだけだ」

 目をぱちくりしながら聞く京花に、青年は当たり前の様にそう答えた。

「とりあえず、お前昼は食べたか?」

 席を立ちながらそう言った。

「いや、食べてないけど」

「そうか、なら丁度いい。そろそろ昼にするつもりだったんだ、食べていけよ、大した物は作れねぇがな」

 そう言い青年は厨房に歩いて行く

「いや、そんなの悪いよ!」

「遠慮するな、それに最近一人の食卓に飽きてきたんだ。すまねぇが付き合ってくれねぇか?」

 そう喋りながら、てきぱきと料理を進めていく青年の言葉に、京花は少しの違和感を感じた。

「一人って、家族は?」

 そして、京花はその言葉を口にしたことを一瞬のうちに後悔した。

(こういう場合って大抵の場合・・・何聞いちゃってんの、私の馬鹿!)

「親はどっちも死んだ、妹も居たけど今どこで何してるか分からねぇ」

 そう淡々と語った青年に京花は喋り終わった瞬間に

「ごめんなさい無神経な事聞いて!」

 と、机に頭をぶつける様な勢いで頭を下げた。

「気にするな、別に謝罪するような事でもないだろ、それと机を叩くな、麦茶がこぼれる」

 声をもとの声色に戻し、青年はそう答えながらてきぱきと料理の支度を進めた。

「あの、明日の学校に出てくれる?」

 少し弱々しい声色で京花は一番聞きたいと思っていた事を聞いた。

「あぁ、いいぞ。えーと・・・そういえば名前を聞いていなかったな、お前名前は?」

 完成した料理を手にもって、運びながら青年はそう聞いた。

「え?あっ、そういえば言ってなかった。ええと、私は岡崎京花です。」

「そうか京花か、いい名だな。一応知ってはいるだろうが、俺も自己紹介しておこう」


「俺は信長、『織田信長』だ」


 そう言って料理を机に置いた。

 ちなみに信長の料理は高級レストランに匹敵するほど旨かったという。




―翌日―


 京花は朝早くから信長の家の前にいた。

 実は昨日帰宅の前に「明日久しぶりの学校だし、私ここに迎えに来るよ!」と勢いで言ってしまったのだ。

(約束破るのはあれだけど、流石にちょっと早すぎたかな?)

 そんな事を考えながらスマホの画面を見ていると玄関の方から信長が歩いてきた。

「ん?随分と早いな、少し門の所で待とうかと思ってたんだが」

 そう声が聞こえて門の方を向くとそこには信長が制服を身に纏い出てきていた。

(わあ、昨日のあの浴衣もそうだったけど制服姿も凛々しいなぁ)

「ん?どうした?行かないのか?」

「ふぇ?あっあぁ、うん!行くよ!?」

 急に声をかけられ、慌てて返事をした。それが可笑しかったのか、信長はクスりと笑いながら京花の方を向いて声を発した。

「お前は一々反応が面白いな」

 京花はその言葉で顔を赤く染めた。

「あぁ、もう!早く行くよ!」

 そう言って一人大股で距離を取ろうとした。しかし、信長は身長も高く体格も良いため、普通に追い付いた。

「やめとけ、お前は小さいんだから大股で歩いても距離はとれねぇぞ」

 そう言って頭をぽんぽんと叩いた。

「小さくないもん!信長君がでかいだけだもん!」

 京花はふてくされた顔をしてそう言った。さりげなく信長が頭を撫でたのだが、ふてくされていて忘れている京花である。

そんなこんなで歩くこと二十分。

「っと、やっと着いたか」

 信長の前に、まるで中世ヨーロッパの城を思わせる様な外観の建物が、そこにはあった。

「製作者の趣味が窺えるな」

「あはは・・・」

 京花は信長の第一声に苦笑を漏らした。そして二人で門を通り、教室へとたどり着いた。

「なんだろう、ここまで来るだけで凄く疲れた・・・」

「体力ねぇな、ここまでで坂なんか一個も無かっただろ」

 京花は思った、どの口が言うか、と。信長は途中で急に居なくなったり八百屋によったりホトトギスを見つけ眺めていたり、この状況を表す四字熟語を答えよと言われれば京花は直ぐにこう答えるだろう。疲労困憊、と。

 何はともあれ、この場に留まっても仕方ないので、京花は教室の扉を開き室内へと入った。そして信長もそれに続いて教室へと入った。

「おぉ~、委員長じゃん、ん?何ソイツ?あ、もしかして不登校だった奴?えぇー、一緒に登校とかマジウケる」

そう言って近づいて来たのはこの学年で四番目の魔法適性度を持つ少女であった。

魔法適性度とは、生まれた時点で検査して全世界での基準とされる魔力の高さ等を数値化して、それの平均で出す数値だ。

社会や学校等でも、これの高さで立場が決まったりもする。

「えぇ?何々、どうしたの?」

 そして彼女の声を聞き、もう一人制服のボタンを全開にしている男子が近づいて来た。ちなみに彼は学年で三番目の魔法適性度を持つ。

 そして二人を中心に彼らの取り巻きが集まって来た。

「あぁ、コイツ?うちのクラスの不登校生は」

「そうだよ、とりあえず通してくれないかな?」

 京花はそう言って信長の手を引き前に進もうとしたが。

「おいおい、何?俺らの事無視すんの?治癒魔法だけが取り柄の癖に?」

 先程の男子と取り巻きが進路を塞いで、京花が気にしていることを言ってきた。彼らの言うとおり、京花は戦闘系の魔法は苦手で、主に治癒魔法を練習していた為に治癒魔法『だけが』上達して、他は平均にギリギリ満たないレベルしかないのである。

 それを言われ、暗い顔をして俯いてしまった京花を見兼ねて信長が京花の前に出た。

「お前らは日本語をしっかりと習ったのか?」

 そして、喧嘩を売った。

「は?何お前俺らの事嘗めてんの?」

「あぁ、嘗めているが何か問題あったか?」

 そう即答し、尚も言葉を続けた。

「こういう場合、コイツがしているのは無視ではなく、ただ怯えているだけだ。お前らはこんな風にして、クラスの王を気取っているつもりだろうが、恐怖でしか支配できない王はただの愚王でしかないぞ?」

 この言葉に完全にキレたのか、彼女達はあからさまに機嫌が悪いというような顔をした。そして、先程京花を罵倒したリーダー格の男子が前に出て信長の胸ぐらを掴んだ。

「お前ちょっと表出ろよ。俺がぶっ殺す」

 彼がそう言うと、信長はニヤリと笑い、挑発するような口調でクラスの誰もが予想しなかった言葉を発した。

「あぁ、いいぞ。『お前ら全員』でかかってこい。おい、この学校には魔法戦闘の出来る施設があったよな?」

 急に話を振られ、少し動揺してから困惑したように信長の事を見ながら答えた。

「あるけど、でも学年でも魔法適性度の高い人が二人もいるんだよ?他も含めて十人もいるのに、一人じゃ敵わないよ!今からでも謝ろ?ね?」

 必死に訴えかける京花に、信長は優しい表情に戻り、穏やかな声で京花に語りかけた。

「安心しろ、お前が心配するような事にはならない。それと、最初に言っとくが、俺は負けねぇぞ?」

 信長の声を聞き、京花は心の不安が全て消えた様な感覚をおぼえた。

 それと同時に、クラスの担任の弘太郎が教室に入って来た。

「お?なんだなんだ喧嘩か?っと、初めましてか、織田信長」

 信長を見てそう言い、そして思い出した様に今日の連絡を告げた。

「そういえば、今日の一時間目は急遽予定が変更になって魔法戦闘の授業になった。そこで誰かに実演してもらおうかと思っていたが、丁度いい、お前ら揉めてんならそこで決着つけろ」

 その言葉を聞いて、先程の十人と信長は不敵に笑い、そのまま互いに背を向け支度を始めた。


 時は流れ一時間目が始まり、学校に設備されている魔法戦闘用闘技場の戦闘場に立っていた。

 そして弘太郎が、観客席から十一人にルールをまとめた用紙を見ながら全員に聞こえるようにルールを告げた。

「ルールは一対多を想定した公式ルールだ、一側は相手全員を戦闘不能にすれば勝利、多側はそれに対して戦闘用魔法を二発まで撃てる。そして制限時間は10分間。尚、時間切れになればその時点で一側の勝利となる。これでいいな?」

 それに対し、信長は手を挙げた。

「いや、一つ訂正だ。時間は無制限だ。タイムアウトなんてつまらねぇ。まあ、あっても無くても変わらないけどな」

「オッケー、じゃあそういう事で。試合開始三十秒前」

「謝るなら手加減してやるけど?」

「二十秒前」

「アホか、下らねぇ事いってんじゃねぇよ」

「十秒前」

「じゃあさ、死ねよ」

「試合、開始!」

その掛け声と共に十人は信長を四方八方から囲みこんだ。

「お前ら、撃て!」

 そしてその掛け声で、全員が信長に向けて魔方陣を出現させて一斉に放った。

「信長君!避けて!」

 京花は咄嗟に叫んだ。その直後に彼らの放った魔法が信長に直撃し、爆発が起こった。

「はっ、俺達に歯向かうからこうなるんだよ、ハッハッハッ!」

 客席にいた生徒は、この後に見ることになるであろう光景を想像して、顔を背けたり、手で顔を覆ったりしている者が多くいた。そして京花もそのうちの一人であった。

 だが、弘太郎だけは砂煙のたつその場を見てニヤリと笑い京花の肩に手を置いた。

「岡崎、アイツの言葉を忘れたか?」

「え?」

 砂煙が少しずつ晴れ、そこには一つの人影があった。

 そして、砂煙は人影から発せられた波動により消え去った。

「全く、お前は心配しすぎだろ。負けねぇって言っただろ」

 そこには、紫色の霧のような物を纏った信長がいた。

「嘘だろ?!今のは俺達の最大出力だぞ?!それに、その魔力波の色って闇属性だろ!なんで…なんでお前がS級の力を持ってんだ!」

 そう言って後退りをした。他の者も信長の使う力を見て驚愕していた。

「なんで持ってるかだ?そんなもん普通に考えてわかるだろ」



「俺がS級だからだよ」



 そう言って信長は右手を振り上げ、もう一度先程放った波動を放ち、ニヤリと笑いながら言った。

「ぶっ飛べ」


―放課後―


「疲れた」

「あはは・・・」

 門をくぐり、校舎外に出た瞬間に信長が発した言葉にまたもや苦笑した。一時間目の試合の事で、信長は様々な質問をされ、試合よりそちらの疲労の方が大きいだろう。

「でも知らなかったよ、信長君がS級魔法使いだったなんて」

 この世界では、魔法使いの実力を一定の基準でランクを付けている。

 下から順に、C、B、A、そしてSという風にアルファベットで表される。

 CからAは学校や県などで定期的に行われる試験に合格すれば上へと昇格できる。

 しかしS級に関しては特殊で、条件が幾つかある。

「まあ、そもそも言ってないしな」

「それもそうだね。あ、私の家此処だから、また明日ね」

「なんだ、学園と俺の家の中間なのか、なら明日から俺がここに来るまで待っててくれないか?」

「え?なんで?」

「一緒に学校に行くためだろ」

 信長は当然の様に言ったが、京花はそれを聞いて少し驚いた。

「良いの?明日も一緒に行っても」

「あぁ、というよりはお前といると面白いからな」

 信長は不敵に笑い、京花に背を向けて歩きだした。

「もう!何よそれ!あぁ、もう!待ってればいいんでしょ!」

「あぁ、頼むぞ。京花」

そう言うといつの間にか信長の背中は見えなくなっていた。

「もう、全く・・・ってあれ?今私の事名前で呼んだ?気のせいだよね?」

 そう言いつつも、京花の頬が赤く染まっていることは、京花自信も気づいていなかった。


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