ケツ割れ
俺は走る。足音が軽快なリズムを刻む。
スピードが上がるたびに浴びる風が心地いい。
ゴールまであと少し。俺は足に違和感を感じた。
ゴールを通過した瞬間、
「グワー!」
激痛が走る。俺は前のめりに倒れた。仲間たちが駆け寄る。
仲間の一人が俺のケツを触った。指が俺のケツにめり込んで行く。
「ヤバい、ケツ割れだ!」
俺のランニングパンツがめくられた。ケツが縮む感じがする。
痛みが増してきた。仲間たちが騒ぎ始める。
「4つに割れてきたぞ……。なんとかしないと」
俺のケツは十字型の溝を形成しているはずだ。このままほっとけば、6つ、8つとどんどんケツが割れてきてしまう。
周囲はあたふたしている。
「ケツ割れってどうやって治すんだっけ?」
「呪文だよ、呪文」
「呪文ってどんなだよ?」
「ケ……ケツ伸びろろろ、シワなくせ!」
ケツの痛みは引かない。むしろ痛みが増してきた。
ケツの左上から右下が縮む感じである。
「うわっ!6つに割れた!」
「おいどうするよ?」
なす術もないまま、俺は悶える。すると、ざわめきの中、落ち着いた女性の声が聞こえてきた。
「あら、安田くんケツ割れ?」
うつ伏せの俺は顔が赤くなった。この声の主は陸上部のアイドル、小橋先輩だ。先輩に痴態を晒すとは……。
「ケツ割れはこうすればいいのよ」
バシッ!
ケツに鋭い痛みが走る。しかし、次の瞬間痛みが引いてきた。
周りからどよめきが起きる。
「6つから4つ……。4つから2つ……」
「おお、叩いたらケツが2つに割れた!」
拍手が沸き起こった。俺はゆっくりと立ち上がる。
俺は後ろを振り向き、頭を下げた。
「小橋先輩、ありがとうございます」
「キャーッ!」
頬に強烈な衝撃を受けた。小橋先輩は走り去っていく。
俺はふと股間のあたりを眺める。ずり落ちていたランニングパンツを急いで上げた。