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BAR ウィスキーキャット  作者: マスカルポーネ
3/3

一杯目 温かいカクテル 後編

 

「カシスオレンジお好きなんですか?」


「あ、まあ。甘くて飲みやすいので……」

 いや単純にカシオレ以外、思い浮かばなかっただけだ


「甘いものがお好きなんですね、でも雨で身体が冷えてると思いますから、宜しければ温かいカクテルはいかがですか?」


「え、あ。はい、お願いします」


「かしこまりました」

 そう言うと、笑顔でカウンター奥に引っ込む



「ふう……」

 ビビったぜ、何頼めばいいかわかんないし

 値段もわかんねえ

 まあ雨に濡れて寒いのは確かだし、一杯呑んでさっさと帰ろう




 しばらく待っただろうか、奥からグラスを持って戻ってくる


「お待たせしました、どうぞ」


 彼女の手には、見た目はオレンジジュース、シナモンの香りと柑橘系の香りを漂わすカクテルがあった

【ホットイタリアン】

 アマレット 40㎖

 フレッシュ・オレンジジュース 160㎖

 シナモン・スティック 1本


「ど、どうも」


 グラスを受け取ると、温かさが冷えた手にじんわりと伝わる

 息で少し冷ましながら、口に含むと杏仁豆腐のようなまろやかな甘さとオレンジのスッキリとした、2つが複雑に絡んだデザートのような味わいが優しく口に広がる


「あ、これ美味しい」

 なんだろう? この味、例えるなら

 温かいマンゴープリン、いや違うか

 杏仁豆腐にオレンジソースかな?

 うーん、わからん


「お口に合ったみたいでよかったです」

 にっこりと微笑む


「飲みやすいですね、コレ。温かさと甘さで身体の内側からなんだか、不思議と疲れが取れる感覚になります」

 この身体の温かさなら雨の中でも平気そうだ

 一杯呑んだし会計して、帰るか


「ごちそうさまでした、すみません。お会計お願いします」


「ありがとうございました、800円になります」


「え、800円ですか……」

 タオル貸してくれたし、店の雰囲気も高そうなのに意外と普通だな


 会計を済ました帰り際、ママさんは濡れないようにと傘を貸してくれた

 ありがたく借りて次来た時に返そう

 傘を借りたお礼返しもしたいので、名刺を貰った


『BAR ウィスキーキャット

 オーナーバーテンダー 佐藤(さとう) 玲子(れいこ)






 相変わらず、仕事はしんどい

 営業成績は低空飛行、毎日怒られる日々の連続だ……

 ただ最近、休日は楽しみがある

 BAR ウィスキーキャット に行くからだ



 こういう事を

『やるせねえ人生が、ちょうどいい苦さの肴になる』

 ーーなんてな!



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