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BAR ウィスキーキャット  作者: マスカルポーネ
2/3

一杯目 温かいカクテル 前編

 

 人生というものは、なかなか順風満帆とはいかないものだ


 地元の県ではそれなりの有名大学を出て、新卒枠で念願の会社に就職したはいいが、配属されたのは規模した総務部ではなく、営業部


 新規の顧客を取りに歩き回され、上司の嫌味を聴かされる毎日


「はあ、会社辞めちまおうかな……」

 今日も会社まわりして、とれた新規はゼロ

 帰ったら上司にどやされんだろなぁ


 案の定会社に帰社すると、ありがたいお言葉をいただき、明日は休みで早く帰りたいのに資料作りを命じられる



 日付も変わった午前2時

 手当ても付かないサービス残業を終え、電車も終わり2駅分歩いて家に帰る


「ちくしょう」

 途中で雨が急に降ってきやがった

 傘なんて持ってねえし、コンビニもねえ、本当に嫌になる

 軒下でふてくされ、雨宿りしている俺にほんのり灯る看板が目に映る


【BAR ウィスキーキャット】


 バーなんて、大学でたまに合コンで使った程度。ま、明日は休みだし、雨宿りついでに憂さ晴らしに酔い潰れてやるか!


 ずぶ濡れのまま店に入る



 ーーいらっしゃいませ



 少し声が高い女の声に、出迎えられ安心する


「なんだ、ガールズバーか」

 キャバクラみたいなもんだ


「あら嬉しい、そんなに若くはないですが。どうぞ、こちらをお使いください」


 黒のミディアムヘアを後ろで縛り、飾り気のない地味な化粧。恐らく、30歳台前半のカウンターに凛と立つ女性は笑いながら、厚手で大きいスポーツタオルを手渡す



「あ、どうも」

 やべ、聞こえてたか。でも、ガールズバーも気が効いてんな、タオル貸してくれるなんて


 髪とスーツにたっぷり染み込んだ雨をタオルに吸い込ませ、カウンター席に座る

 一息つき落ち着いて店内を見渡すと、キャンドルの炎で、少し薄暗い店内、カウンター後ろの棚に並ぶボトルの数に圧倒される


「うん」

 しまったな、高級ガールズバーか?

 地味だけど、よく見りゃ綺麗なママさんだしどっかの社長のパパさんご愛用店か



「何かお作りしますか?」



 会計の値段やらこういう店で最初に、何を頼めばいいのかわからず、その声に俺は固まってしまった


「えっと、カ、カシスオレンジ……」


 消え入るような声でつぶやくのがやっとだった

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