蒼穹のエターナルブレイク- side イクトス-【短編版】
お約束の異世界転生ものに挑戦しました(^ ^)
みなさん、はじめまして。 俺の名前はイクト。 どこにでもいる普通の高校生だ。
でも俺にはちょっとした秘密がある。
それは……。
「おいっ危ないぞ!」
そう声をかけられた時にはもう俺の意識は飛んでいて、永い眠りについていた。
「おにーちゃん、起きてよぉ!もう朝だよ!」
いかにもアニオタが喜びそうな萌えボイスで起こされると俺は知らない部屋の西洋風のベッドにいた。
目の前にはツインテピンク髪のロリっぽい美少女と黒髪ロングの清楚系の美少女がいる。
「ふふっ。 起きたんですね。 朝食、出来てますよ」
いかにも清楚系ヒロインっぽい方が、俺のことを甲斐甲斐しく世話し始めた。
ここはどこだ。
俺はどうしてこんなところにいる?
「あの、あなた達は俺と知り合いじゃないですよね?どうして俺の世話をするんです?それにここはどこ……?」
2人は顔を見合わせた。
「もしかして覚えていらっしゃらないんですか? 勇者様……」
「おにーちゃん、あたし達をモンスターから助けてくれて…気絶しちゃったからこうやってマリアおねーちゃんと看病しているんだよ」
ピンク髪の方はちょっと涙目だ。
勇者様……? なんの話だ……?
「これも魔王グランディアの仕業なのかもしれませんね……アースプラネットはもうダメなのかしら?」
アースプラネット……魔王グランディア……俺は友人に無理やり渡された美少女ハーレムRPGを思い出した。
この女達はそのゲームに出てくるヒロイン達にそっくりだ。
《異世界転生》
というものだろうか?
魔王の呪いにより、街から男達が消えた。
女達は神に勇者の復活を願う。
やがて異世界から選ばれし若者がやって来て、アースプラネットを救うのだ。
まぁなんていうか勇者もてまくりの美少女ハーレムRPGというものである。
だが、俺はそんなハーレム異世界にまったく興味がない。
むしろ苦痛だ。
俺は女アレルギーだ。
どういう訳か女と接近すると気絶したりジンマシンが出たりする。
さっきピンク髪が話していたオレが気絶したというのも女アレルギーの発作が起きたんだろう。
その後、強制イベントなのか勇者復活の宴が開かれ、露出度の高い踊り子や可愛らしい衣装に身を包んだ美少女達に俺は囲まれていた。
「俺、魔王を倒してきます」
こんな美少女だらけのハーレム空間に長居するなんてゴメンだ。
早く街を出て魔王とやらを倒し、現実世界に戻るんだ。
すると一族の族長が俺を引き止めてきた。
「お待ちくだされ。勇者どの。 この世界で男はお主ひとり……せめてこの街の若い娘達と
子供を作ってから魔王討伐に行って欲しいのじゃ……でなければわしら一族は滅んでしまう」
やたら露出した美少女達が頬を赤らめながら見つめてくる。
冗談じゃない!
女と子供を作るなんて!
そんなことしたら発作を起こしすぎて大変なことになってしまう!
街を出ようとしてもハーレムイベントが強制的に起こるせいでなかなか街を出ることができない。
くっこうなったら口から出任せで切り抜けてやる。
「族長……俺は勇者であり聖職者でもあります。 異性とそういう関係になってしまうと魔王を倒す聖なる力も失われてしまうのです。 ご理解下さい。 必ずやこの世界の男達を再びこの地に連れ戻してまいりましょう」
女達は皆驚いている。
そして何故か涙を流し始めた。
「なんという強い心の持ち主、なんて清いお方なの! ?」
「勇者様よ! この汚れない魂、このお方は本物の勇者様だわ!」
ただ単に女アレルギーなだけなんだけど……まぁいいや。
すると空が暗くなり超美形の姿が上空に映し出された。
「我は魔王グランディア……異世界より現れし勇者よ、我を倒したければ冥界に来い……辿り着ければ……な」
なんだか女みたいな見た目の魔王だな、苦手なタイプだ。
格闘家のツインテピンク髪ロリ美少女アイラと白魔法の使い手である黒髪ロング清楚系美少女マリアをお供に俺は冥界を目指すことになった。
この2人はシナリオ上、強制メンバーで外すことは出来ないらしい。 仕方ないのでマントやローブを羽織らせ極力露出度を下げてもらい女アレルギーの発作を起こりにくくしてもらった。
(表向きは俺の聖なる力を保つため露出を抑えるように頼んだ)
本来は5人ヒロインが登場するらしいので、かなり女の割合を下げた方だ。
冥界への旅路はあっさりモンスターを倒せるもののハーレムイベントが乱立するせいで俺は何度も女アレルギーの発作を起こし、そのせいで幾度となくピンチに陥った。
「当ててんのよ」
「お風呂でバッタリ」
「不可抗力でタッチやチラっ」
など思い出すだけでもおそろしいハーレムイベントの連発だった……。
そして紆余曲折を経て必死の思いで魔王城に辿り着いた。
「ついに来たんですね。私達……」
「おにーちゃん……3人で頑張れば
大丈夫だよね?」
バトル自体はモンスターが超弱いので大丈夫だろう。
問題は美少女ハーレムゲーム特有のハーレムイベントである。
魔王を討伐することでどんなハーレムエンディングが待ち受けているのやら。
超弱いモンスター達を倒し魔王の玉座に入るとそこには銀髪ロングヘア超美少女がウエディングドレスを着て潤んだ瞳で俺を見つめていた。
よく見るとその女は魔王本人だった……魔王は女だったのだ!
「どうして思い出してくれないの? 私が魔族だから? 魔王だから? 結婚しようって言ってくれたよね? イクト君……思い出して……」
その時俺の頭に記憶が蘇ってきた。
俺は子供の頃、魔王に会ったことがある。
隣の家に住んでいた銀髪の美少女……《アースプラネット》という世界からやってきたと俺にこっそり教えてくれた。
「大きくなったら結婚しようね、約束だよ。
浮気しちゃダメだよ! 指切りしたよ!」
あの頃はまだ女アレルギーではなかった。
あの指切り以降俺は魔王以外の女に接触するとアレルギーを起こす体質になったんだ。
そんなわけで、女アレルギーを治すには魔王と結婚するしかなく、俺は世界平和の名目で魔王を嫁にしたのである。
だがとっても幸せなので問題ない。
魔王いわく指切りに魔族の呪いの力はないそうだ。 なので女アレルギーの原因は不明である。
でも本来呪いというのは約束を破ったりすると起こるらしいのだ。
みなさんも女の子と約束をしていたならきちんと守るように!
俺みたいに不思議なアレルギーになるかもしれないよ!