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現代文学

BIRTHDAY CAKE

作者: 独蛇夏子

 雪でも降りそうな冬の灰白の空にちらと目をやり、藤村は長身を少し縮めて四号館の入り口の階段を駆け上った。その途端、吹いた風の身を切るような寒さに、首もとに巻いたカラメル色のマフラーが便利で、口元を埋めて少し俯いた。

 追われるように館内に入ると、寒風が吹きつける外よりかはましだが、四号館の半地下はやはり外気が伝導して空気が冷え込んでいる。リノリウムの鈍く光る廊下を進んで、いつものドアに向かう。

 文化系サークルのサークル室はキャンパス内の三号館と四号館に集合している。藤村の所属する文芸サークルにとって、そのサークル室は発行冊子やその他雑貨の置き場所であり、比較的上下関係もゆるやかで同期の仲が良いサークルなので、集まる必要がなくても駄弁(だべ)りに来る居場所になっている。小説だの詩だのを書くことは、基本的に孤独な作業だから、個人主義の者が多いはずだが、それでも群れてしまうというのが人間というものらしい。趣味が合えば話は弾むし、集まってみんなで遊びに行くこともよくある。人間の人格や行動基準によってカテゴライズされてしまう、大学内でおいて、藤村にとっても居心地の良いところとなっている。文学部に所属している学生が多いから、先輩からあれこれ授業のアドバイスがもらえるのもメリットだ。

 試験週間は終わった。レポートも提出し終った。今年卒業する先輩たちの、追い出しコンパの打ち合わせをしなければ。貸した本も返してもらおう。サークル室に行けば、誰かいる。必然、授業のない二月になっても、大学の学生課や図書館に用をこじつけては、藤村の足はサークル室に向かう。次の春には三年生、自分たちの代がサークルの中心を仕切るようになる。

 誰か駄弁っているだろう。そう思ってガチャリとサークル室のドアを開ける。暖房に暖められた空気が身を包んだ。

 案の定、見慣れた四人の同期の顔ぶれが椅子に座ってテーブルを囲んでいて、ふっと会話を止めて「おはよう」と声を掛けてくれた。

 が、席を空けてもらいながら、藤村はどこか空気が重たいのに気付いた。みんな難しい顔をしている。

 奥に座っていた青山が、「そうだ、本ありがとう」と自分が抱いているザックをがさごそと漁って、文庫本を取り出す。

 受け取りながら、藤村はみんなが何の話をしていたのか訊ねた。

 「どうしたの」

 「うーん、それがね」

 一同、顔を見合わせる。

 桜井が椅子の背もたれに寄りかかって、困ったように言う。

 「黒崎さんの誕生日会ってことで、カラオケ行ったじゃん」

 「ああ、この間の」

 「緑川さん、あの日が誕生日だったんだって」

 「えっ」

 ぎょっとして目を見開く。一同は困ったような表情をして、藤村に共感を示して頷いた。

 黒崎というのは一つ上の女の可愛らしい先輩で、特定の漫画のことを語らせたら右に出るものはいないと言われているごじんだ。彼女の誕生日は一月の終わりであり、その時はみんな試験期間だったので、試験期間の鬱憤を打ち上げするがてら、誕生日を祝おうということになった。

 サークルに所属しているのは二十人かそこらだが、そのほとんどが来たし、それぞれ自由に歌って楽しいカラオケだった。カラオケ店に予約を入れて、バースデーケーキをプレゼントしたりもした。

 無論、そこに彼女もいた。

 「教職で俺、緑川さんと一緒になる授業があったんだけど、つい昨日、レポートの提出があって。レポートの提出で学生証を見せなくちゃならなかったんだけど、たまたま緑川さんとかち合って。学生証に生年月日書いてあるじゃん。それちらっと見たら、その日だったんだよね」

 と、青山が気まずそうな顔をして、ザックを抱えなおした。なるほど、と頷くが、藤村もまずったな、という心境になる。

 つまり、彼女は自分の誕生日に、別の人の誕生日を祝っていたことになる。しかも別に黒崎がその日、ジャストで誕生日だったわけではない。みんな、誕生日当日の人間を丸無視して、他の人間の誕生日を祝ったわけだ。

 しかし

 「誰も知らなかったから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど」

 金子が少し怒ったように言った。

 「言えば良いのに。何で言ってくれなかったんだろう」

 「まあ、他の人の誕生日祝うっていうのに、わたし実は今日誕生日なんですぅーなんて言えないのは分かる」

 「んーそれもそうなんだけどさ。緑川ちゃんの誕生日だって祝うよ。祝いたいよ」

 「キャラがなぁ。気を遣うよなーきっと」

 一同、そうだなぁと頷く。

 緑川はいつも一歩引いている印象がある。穏やかで、にこにこしているし、何気なくそこにいるので、みんななんとなく、それで良いんだろうなと思っている。控えめで何気ないのが、緑川のキャラクターなのだ。

 桜井が溜め息をつく。面倒見が良くて要領の良い桜井は、先輩たちから見込まれて、幹事などを引き受けることがよくある。当然、誕生日会の件も桜井が企画したことだった。緑川がどう思っているか知らないが、少なからず責任を感じるところがあるのだろう。

 「まあ、もうやっちゃったから、どうしようもないけどさ」

 その言葉に、尽きる。

 藤村は背もたれに体重を預けながら、うーん、と考えた。藤村は、金子の「言えば良いのに」と同意見だ。後々、こんな風にみんなの気を病ませているのだから、誕生日だとはっきり言えばいいのだ。

 それを、厚かましく他人の誕生会で主張できないのが、緑川の善良さなのだろうし、そんなところを理解できるから、尚更みんな気に病んでいるのだが。

 「黙っていたの、本人なんだし、承知の上だろ?だったらいいんじゃね?もうやっちゃったんだし、誰も知らなかったんだから、仕方ねぇよ」

 赤城がばっさりと切り捨てた。赤城は即物的なところがあり、いつもはっきり物を言う。作品の批評会のときは、一番活躍するし、彼が言うから議論が活発化する。

 言わなかったのは、緑川自身だ。それでいて、緑川は黒崎の誕生日会に参加していた。緑川自身が選んだことなのだろうから、なんとも言えない。それでいいと思ったから、緑川は黙って、そこにいたのだろう。

 現実的に、周りが気遣ってどうなったものではない。

 分かってはいても、どこか気まずい思いがする。一同が黙り込んだときに、ガチャリとサークル室のドアが開いた。

 当の緑川がそこにいた。みんなを見てにこりとする。

 「おはよう」

 おはよう、とみんなが返したが、金子が甲高い声で言った。

 「緑川さん、この間誕生日だったんだって?」

 「この間?」

 目をぱちくりとさせる緑川に、みんな少し呆れた。

 「カラオケ行った日だよ」

 「あー・・・うん、そう」

 目を泳がせた緑川に、緑川自身も気まずいのだと一同は理解した。

 青山が事情を話す。

 「この間レポート提出の時会ったじゃん。その時、学生証の誕生日の見て」

 「なるほど。そうなの、ハタチになりました」

 「おめでとうっ」

 「ありがとう」

 「何で言ってくれなかったの」

 「何でって、黒崎さんの誕生日会なんだから、黒崎さんを全力で祝わなければならないじゃない」

 拳を作って、明るく言い切った緑川に、一同は虚を突かれたようになって、それから苦笑してそっかと呟いた。緑川は先輩たちを一様に慕っているのだ。

 藤村は頬杖をついて、ふーんとそれを眺める。

 金子が直接、気まずい話題を振ったお陰で、憂鬱が少し解けた。緑川は構わず、部屋の奥にある棚に近寄って、数冊小説を引き出す。試験が終わったら読みたいと言っていたものだ。

 「でもさ、言ってくれれば良かったのに。緑川さんの誕生日なんだから」

 「ありがとう、そう言ってもらえるだけで嬉しいよ」

 金子と緑川が近寄って抱きつく。女同士は抱きつくことで互いの思いを補完し合うところがある。

 緑川も、承知の上で黒崎の誕生日を祝っていたことが確認できた。黒崎の誕生日を祝っていた、それ自体は悪いことではない。みんな知らなかったのだから仕方ない。緑川の気遣いは、むしろ好意として、その場の空気をぶち壊さないための配慮として、受け取るべきなのだろう。

 丸無視してしまっていたことは、やはり気がかりだけれど、もう過ぎたことだ。

 緑川はサークル室の隅にリュックサックの荷物を置き、手提げと本を手に「学食でアイス食べながら読むんだ」と言った。サークル室は荷物仮置き場としても便利だ。

 「緑川ちゃんの誕生日会来年やろうねー」

 「うん、ありがとう。またねー」

 にこりとして、緑川はサークル室を出て行った。

 一同はそれを見送ってから、溜め息をついた。

 「なんにせよ、緑川さんにはちょっと悪いことしたね」

 藤村はうーん、と少し考えてから、立ち上がった。

 「あれ?帰るの?」

 「ん、青山から本返してもらいに来ただけだし」



 四号館の外に飛び出ると、尖った黒い枝を空に広げた、背の高いしっかりとした木々が目に入る。キャンパスの正門から、中庭にかけて、木々は植わっていて、路を作り出している。その間を足早に歩き、一直線に正門に向かった。

 キャンパスから駅の方に向かうと、繁華街がある。横断歩道をいくつか渡って、道を何回か曲がると、徐々に人や車の往来や高いビルや色とりどりの看板が増えてくる。家族連れや、ぷらぷら歩く大学生らしき奴や、集団で歩いている鬱陶しい奴らや、寄り添って歩いている恋人などをすり抜けて、藤村は黙々と歩いた。くすんだ赤と黄色の組み合わせのタイルの歩道を踏みしめて、進む。口元から白い息が流れた。

 緑川は、文学部の人間ばかりが多い、文芸サークルには珍しい、経済学部の学生だ。だから、授業カリキュラムが基本的にみんなと違うし、みんなと足並みが揃わないことがよくある。一年生の時に、サークルに所属した時も、みんなより一ヶ月遅れて入部した。どういう事情があったのかは知らないが、いつの間にか馴染んでいたので大してみんな気に留めていいない。

 ただ、サークルの一員として、仲間として、みんなに認められているし、緑川は好ましく思われているのだから、もう少し主張しても良いのに、と思うことがある。

 話し合いをしている時や、遊びに出かける時、緑川も参加していることがある。緑川はいつも穏やかに、にこにこして、そこにいることが多い。大概、みんなの話を聞いて、微笑んでいる。悪口も言わないし、意見を言う時は言う。控え目なのはキャラクター。それも確かなのだろうし、どこか遠慮気味なのが緑川なのだろうとみんな思っている。どこにでも“周りと少し違う奴”はいるものだ。

 藤村にとって緑川という女の子は、わけの分からない人間だった。何気なく気遣いができるし、しっかりした意見も言うと思う。みんなの会話を聞きながら、にこにこしているのも、その空間が居心地が良いのだろうと思う。その一方で、緑川はどうなの?と思うこともある。

 何故、いつも言ってくれないのだろう。金子とか、さっきはいなかった白木は好きなアイスクリームの味なんかを話して盛り上がっているから、金子がストロベリーが好きで、白木はバニラが好きだなんて、何でもないことを知っている。

 例えばそんな下らない会話の中でも、緑川はにこにこして話を聞いているだけなのだ。緑川は?と訊かないと、何が好きなのか分からない。緑川が、どんなアイスクリームの味を好きなのか、藤村は知らない。

 そうしているのは、好きで黙っているからだろう。とも思えるが、藤村はいつも緑川が仮面を被って、仮面の切れ込みのような目を通してこちらを見ているように感じる。本心のいつも見えない、わけの分からない奴、というように。


 桜井を中心に、サークル室に集まっている時に、黒崎の誕生会をやることを決めた。試験週間が終わった直後に丁度みんなが集まれる日があったので、その日にカラオケに行こうということになった。

 緑川には決定後報告だったと思う。試験週間にサークル室に来なかったから、メールで知らせたのだ。

 その後サークル室にいた時も、緑川は何か言いたげな顔なんてしなかったし、いつも通りだった。

 当日もいつも通りだった。にこにこ笑って、黒崎を祝って、楽しく過ごしているように見えた。


 言えばいいのに。

 腹立ちまぎれに、息を吐くと、冷たい風に白い蒸気が流れていった。

 気持ちが急かされるままに、足を動かす。前を歩く人の肩を避けて、色とりどりの見慣れた看板が並ぶ店通りを進む。

 緑川と偶に話すと、ぽかんとした顔をされる。そんな反応が、拍子抜けした感じがして、空掴むように味気ない。経済学部ってどんな授業があるの、とか、ゼミはどんな感じ、とか、好きな小説家は、とか、ごく普通のことを訊ねているだけなのだが。緑川は戸惑ったように、いつもたどたどしく答える。批評会の時のような、筋の通った物言いとは違う。

 何故だろう。やはり、よく分からない奴だ。

 みんな好ましく思っているのだから、もう少し厚かましく主張してみればいいのに。黒崎だって、緑川のことを気に入っているのだから、一緒になってアニソン歌うことぐらいするだろう。むしろ率先してケーキを献上しそうだ。みんな、ああいう気まずい思いをしなかっただろう。仲間の誕生日丸無視なんて、祝われた黒崎だって後味が悪いに決まっている。

 しかし、それが緑川なのだろう。

 わけが分からない。

 キャラクターの人形の隣を抜けて、自動ドアの店に入ると、暖房はそれほどガンガンにかかっていなかった。

 臙脂色の頭巾を被った女性店員が、ショーケースの向こうでいらっしゃいませと微笑んだ。

 ショーケースをじっくり、眺めた。

 わけが分からない。イライラする。

 望んでいないかも知れない。しかし、そんなことを言ったら、何もできない。

 こういうことはすぐの方がいいのだ。

 「これください」

 憎からず思っているのだから。



 

 学食はキャンパス内に二カ所ある。

 二号館の半地下の方にいるのだろうと、すぐ見当がついた。アイスが買える売店があるし、群れている連中が席を占拠していても、必ず空いている端っこの席がある。

 窓越しに彼女を見かけるようになったのはいつだったろうか。本を積んで、読み耽っていたり、課題をやっているのか、ノートに何か書き綴っていたり、音楽を聴きながら、レジュメを見ていたり。そんな姿を度々見つけた。

 雑然としていて、騒がしくお喋りしている集団ばかりが、だだっ広い学食のフロアを占めていようと、関係ないというような態度が、いつも不思議でならない。藤村は学食のそんな雰囲気が苦手で、便所飯したくなる奴の気持ちも分かるなぁと思う。いつも友達がいないとならないような気持にさせられる。

 緑川は平気な顔をして、そんな中で一人で座っている。

 緑川は、藤村が話しかけた時みたいに目をぱちくりとさせて、藤村の来訪に応じた。サークル室から持ち出した本を積んで、その中の一冊を音楽を聴きながら読んでいるところだった。

 学食で一人でいるところを、サークルのメンバーに初めて声をかけられたからだろう。緑川は慌ててイヤホンを外す。藤村は緑川が食べ終わったアイスカップを認めて、ふむ、と納得した。

 「ラムレーズンだ」

 「うん、ラムレーズン」

 戸惑ったように、緑川は頷く。

 ふーんと言って、藤村はテーブルに紙の箱をぽんと置いた。

 「はい」

 緑川は目を軽く見開いて、洋菓子店のロゴマークが入った箱を見つめる。

 「あげる」

 「えっ」

 緑川は藤村と箱を交互に見て、おずおずとその箱を引き寄せる。

 「開けていい?」

 「どうぞ」

 緑川は箱を開けて、中身を見つめて固まった。

 藤村は反応を窺う。

 「ケーキ好き?」

 「うん」

 頷いた緑川の目に、みるみる涙が盛り上がって、一粒頬にぽろっと流れた。

 思わず藤村はほっとして、微笑んだ。

 「泣かないで。誕生日おめでとう」

 緑川はうん、と何度も頷いた。その度、ぽろっと涙が落ちる。

 思わず手を伸ばしたい気持ちを押さえて、藤村はケーキを心持抱えるようにして泣いている緑川を見守った。

 良かった。寂しい思いをした緑川のことは、無視しないで済んだだろうか。

 黒崎のことを祝いながら、黒崎のためのカラオケに参加しながら、何を思っていたのだろう。祝いたいのも、楽しんだのも、嘘ではないだろう。それでも、緑川の特別な日を、祝うためではなかったのだ。

 本人の中で諦めをつけていたとしても、だからといって寂しくないわけではないのだ。にこにこ笑っていて、何でもなさそうにしていたって。言わなかったのは、本人が選んだことだとして、それで傷付いていなかったとは言い切れない。

 黒崎のことを考えて、周りのことを考えて、言わなかったんだな。だけど、寂しかったんだな。

 わけの分からない緑川のことが、ようやく見えた気がした。

 涙を手で拭きながら、緑川は藤村のことを真っ直ぐ見つめる。

 「藤村くんありがとう。こんな良いのもらっちゃって、高かったよね」

 「いや」

 Sサイズのホールケーキだ。生クリームと苺の。それなりに値段はするが、こういう時は吝嗇してはならない、というのが藤村の持論だ。

 来年は緑川の誕生日会やろうね、と言っていたけれど、一年後なんて遠い。気まずいことから発して誕生会するなんぞ、むしろ、緑川は気にしてしまうのではないか。一年後、もし忘れられてしまっていたら、それこそ緑川は傷付くのではないか。

 緑川のことを考えてあげたかったよと、伝えたかったなら、すぐに行動するのが正しいと思った。

 サークルのメンバーに知られたら、どんな目で見られるかと思うと面倒臭い。しかし、緑川のことを少し分かったと思えたこの状態を、みすみす逃すつもりもない。

 どう思っているの。何が好きなの。

 ずっと、わけが分からないと思いながら、彼女の心の感触を探してきたのだから。

 涙を拭いた緑川が、目をキラキラさせてにっこり笑った。

 「藤村くん」

 「ん?」

 「一緒に食べよう」

 一瞬固まって、頷くと、緑川は嬉しそうに立ち上がった。

 「時間大丈夫?」

 「うん」

 「フォーク借りてくる」

 「俺行くよ、待ってて」

 藤村は自分の鞄とマフラーとコートを手早く緑川の前の席に置くと、学食のフォークを取りに行った。

 戻ってくる時に、緑川のいる席が視界に入ると、緑川は嬉しそうに箱を破いてケーキを取り出している。その目の前には、カラメル色のマフラーがかかっている。

 藤村は舞い上がっていることを自覚した。緑川のことをまだ掴み切れていないけれど、少しは分かるようになるだろうか。

 平常心、と心の中で呟きながら、席に向かった。

このお話を更新日に誕生日の友人に捧げます。2012.8.13

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