07話 連れて行かれたホテルにて 2
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不定期な更新で恐縮ですが、絶対完結させますのでどうぞ気長にお付き合いください。
今回は少々糖度が高め(この作者にしては)かもしれません…
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「ここでお会いできてとても嬉しいです」
これって、ハグっていうのですか?身動きできないんですけど、あいさつ?あいさつですよね!?
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜,〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「昼間とは少し違いますが、やはり貴女は良い匂いがしますね」
匂い?荷物運んだり走ったりしたから汗かいたんじゃ・・・汗臭いってことですか?
『〜〜〜〜〜〜〜〜,〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「抱き心地も良くて、二度と腕の中から離したくなくなりますね」
これ以上締めつけられると本当に息が出来なくなっちゃうんですけど・・・
ただでさえ腕がぐるっと体に回されて、顔がスーツの胸のところ――――身長差のせいで公子サマの顎が私の頭の真上にある――――に押し付けられて息がしづらい。酸素不足と男性(美形)に抱きしめられている相乗効果で、今私の顔は真っ赤なはず。
いいかげん振りほどかないと、締め殺されて棺桶に入って帰宅とか怖いことに……
『〜,〜〜〜〜〜〜〜』
「ああ、また味見がしたくなりました」
ようやく巻きついていた腕が緩んだ。ぷはーっと息継ぎをしてそのまま一歩下がろうとしたが、それより早く、今度は腰の辺りに腕が回ってきて――――
ぐいっと持ち上げられました。
へ!?
公子サマのお顔が真ん前にあります。
あ、ほんとに睫毛も髪と同じ色なんだ、しかも長〜い。
なんて思っていたら、今度は(またも?)マウス・トゥ・マウスで口を塞がれた。
後になって考えたら「あたしってホントに学習能力が無い」ってのた打ち回るところなのだけれど、いかんせんこの時は軽い酸欠で頭もぼんやり。まぁ、もともと反応が遅いと言われますけど。あぅ〜。
だけど、この時は頑張って抵抗した。床から浮いている脚をバタバタさせて(ジーパンで良かった)、今度は自由な両腕を振り回して。
だって……
いぃやぁーー!!なになに、なんですか!!何か入ってきてるーー!!!!
息継ぎをしようと大きく口を開けていたのが災いし、公子サマのし、し、した、舌がーーーっっ!!!!
とっさに噛まなかった私を褒めてください。
まあ、正直なところを言えば、この時の私はほんっとに息が苦しくて、溺れた時みたいにバタバタもがいていた状態だったのだが……。
そのおかげか、意識がブラックアウトする寸前で口は解放された。
解放されてまずしたことは、当然ながら酸素の補給。ぜー、はー、ぜー、はー。
それから抗議のために相手を睨みつける。が。
うっ、近い。
まだ抱き上げられている状態なので、当然と言えば当然ながら、公子サマの顔が目の前にある。苦しさから目に涙が滲んでいたが、それでも構わず睨みつけたのに、どうやら通じなかったよう。
ふっと口の両端を上げてまた顔を近づけてきたので、とっさに左手を自分の顔の前に差し込んだ。
『u……』
公子サマの顔の下半分を押さえ込んだ形になった。ぐっじょぶ、左手!
「何をするんですか!」
あれ?公子サマ喋ってないのに声が……?
ここでようやく、さっきから感じていた違和感に思い当たる。
恐る恐る顔を右下に向けると、私たちのすぐ傍に立って見上げてくる通訳少年と視線が合う。
………………ということは、つまり………さっきの公子サマの訳ワカメな発言とかを訳してたのはこの少年ということで……
さっきのキスも見られてたって事ですね。
「きゃーーーーーーー、いやぁーーーーーー!!」
悲鳴と同時に左手を突き出すと、ぐきっという音がして私を抱えていた手が緩んで床に足がついた。
すぐに逃げ出そうとするが、廊下に続く扉の前には変わらず黒服の人。
やむなく反対側を見てまたぎょっとする。
そちらでは執事さんが白いハンカチを両手に持って、‘だーっ’という擬音が聞こえそうなくらい涙を流しながら『----,----』と何事かつぶやいていたのだ。
もぉ、泣きたいのはこっちですよー。いったい何なんですかー。
仕方ないので応接セットの大きなソファの向こうに逃げ込んだ。
我ながらいろいろとつっこみどころが……orz
少しはラブコメ風になっていると良いのですが……