35話 翌日お見送り 2
目の前に広がるのは一面の青空。高く高くどこまでも澄み切った雲一つ無い快晴。文字通り五月晴れの今日皆様いかがお過ごしでしょうか?
私はこのとおり、空を見上げています。がっちり空です。ええ、空しか見えません。
……あ、いま小さな雲が一つ、ゆっくりと視界を横切っていきます。
そう言えば、空の何割以上が雲だったら‘曇り’で、何割以下(未満?)だったら‘快晴’でしたっけ?むか~し昔、理科の時に習った気がしますが、もう憶えていませんねぇ。
……
…………
………………
それにしても、この見上げた体勢って続けているとけっこうキツイものですね。たとえ顎の下に支えがあっても、体がしっかり(がっつり?)固定されていても。
3分以上は確実に経っていると思います。ひょっとしたら5分以上かも?さすがに10分は経ってないと思うんですけどね~。
……そうそう、皆さんご存知でした?‘ハグ’って羽交い絞め(HAGAIJIME)の‘HAG’だったんですね~。(←正しくは‘HUG’です。)
――――って、私はいったい誰に向かって話してるんでしょう?
すみません、ちょっと現実逃避していました。
まったく、どうしてこういうことになってるんだか…??
* ** *** ** *
祥くんと一緒に公子サマご一行をお車のところまでお送り(移送)して。農協の方をぼ~っと見ていたところに声をかけられて振り向けば、そこには公子サマとその傍らにはユーリくん。セパシウスさんとSPの皆さんはちょっと離れて車の側。
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
「わざわざお見送りいただいてありがとうございます」
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~.~~~~~~~~~~~~』
「これから長いお付き合いになると思います。どうぞよろしくお願いします」
テレビでも滅多にお目にかからないような整った(しかも気品?のある!)顔に、目の前でキラキラニッコリな挨拶をされると。
……一般庶民としては落ち着かないことこの上ありません。
「人と話す時にはちゃんと相手の方を見なさい」というおばあちゃんの教えがなかったら回れ右したいくらいです。
それでも綺麗なお顔を直視できずに視線をウロウロとさせてしまった私に、公子サマは不審な表情一つせず、これからは名前を呼んで欲しいと仰った。
「クラウス殿下とお呼びした方がよろしいでしょうか?」
と確認してみると、
『~~~~~~~~~~~~~~』
「どうぞクラウスと呼んでください」
とのこと。
すみません、日本人としてはいきなりのお名前呼び捨てはハードルが高いです。しかも相手は一国の公子サマ。
……無理です。
「では、クラウス様とお呼びいたしますね」
百歩譲った案を出したのだけれど、
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
「そんなにクラウスと呼ぶのはお嫌でしょうか?」
と、ものすご~くショボンとした顔をされました。またもや大型犬耳と尻尾が出現して、これでもかというくらい垂れ下がって見えます。
うっ、だからそれをされると弱いんですってば~!!
それでも救援を求めて周りを見回すと、私の右斜め後方に腕組みして立つ祥くんを発見!
……きっと縋るような視線になっていたんだと思います。
「…日本人に初対面同然の相手をいきなり呼び捨てにしろってのは――特にこいつのような性格のヤツは絶対に無理だから」
援護射撃をしてくれました。ありがとう、祥くん。今日は本当に頼りになりますね。またまた見直しましたよ!
そんなこんなで結局、公子サマのことを‘クラウスさん’と呼ばせてもらうことになりました。
早速呼んでみてほしいと言われ、気恥ずかしく思いつつ
「それでは、至らないところがたくさんあると思いますけれど、これからどうぞよろしくお願いします、クラウスさん」
と、改めてご挨拶――お辞儀つきで――をすると、想定していた「こちらこそよろしく」ではなく
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
「お別れの挨拶に、ハグをしてもよろしいでしょうか?」
というセリフが返ってきた。
……はぐ??
逆襲の公子サマ・その1、ジャブ編。
ホントはこの一話でまとめときたかったんですが…orz
先々週から残業続きで更新が遅れており、申し訳ございません。
次の週末も遠出するので、また少し遅れるかと…(涙)
どんどん暑くなってますが、皆様も熱中症等にお気をつけ下さいませ。