34話 翌日お見送り 1
道路交通法に抵触している表現がありますが、話の流れということでご容赦ください。
真似なさらないようにお願いします。
またも涙目になりつつあるセパシウスさんをベリッと音がしそうな勢いで、でも優雅に引き剥がしたのは公子サマ。
…これが‘首根っこを引っ掴む’ということでしょうか。
『~~~~』
「それでは用も済んだことですので、私たちは失礼いたします」
公子サマのお言葉に何か言おうとするセパシウスさん。しかし公子サマが耳元で何か囁くと大人しく頷く。
……せっかく元に戻った顔色がすこし青ざめたように見えるのは気のせいでしょうか?
気がつけば時間はもう12時をとっくに過ぎていました。
まぁ、なんやかやとありましたしね。
本当は何かお昼を召し上がりませんかとお誘いすべきところなのたけれど、いかんせん昨日まで数日間留守にしていて、しかも買い物にまだ出ていないとなればロクな食材が無いという有様で。とてもお誘いできる状況では無かったりいたします。
そんな私の悩ましい思いを読みとったわけではないのでしょうが
『~~~~~~~~~~~~~~.~~~~~~~~~~』
「慌ただしくて申し訳ございません。午後にも予定がありまして」
『~~~~~~~~~~~~~~~~~,~~~~~~~~~~~~~~~~』
「急にこちらへ来ることにしたものですから、ゆっくりお邪魔する余裕が無いのです」
『~~~~~~~~~~~~』
「重ね重ね失礼をお許しください」
とご丁寧に言われてしまいました。
「いえいえ、こちらこそ、何のおもてなしもできませんで申し訳ございません」
思わず深々とお辞儀を返してしまいます。
お見送りのために外に出てはたと気付きました。
そう言えば皆さん、祥くんの車(軽トラック)に公子サマ以外ドナドナ状態で来たんでした。と言う事はですよ、このままでは帰りも同じドナドナ状態ではないですか!
さすがにそんな状態で帰らせるわけにはいきません!おばあちゃんが云々以前にダメです!!
「私も車を出しますから、乗っていってください!」
叫んで、免許証や鍵、お財布など一式入った手提げ鞄を取りに家に駆け込む。自分の部屋に置いていたそれを手に持ってすぐさま再び外へ。
誰がどの車に乗るか――そもそも祥くんの軽トラックと私の軽自動車(4人乗り)だといずれにしても1人乗れないことが分かった――で少しもめたものの、公子サマの鶴の一声で結局、公子サマとユーリくんが祥くんの軽トラックに、セパシウスさんとSPのお二人が私の軽自動車に乗ることになった。
セパシウスさんは公子サマを私の隣に乗せることに最後までこだわったけれど、これで何とか荷台に乗る人はいない――ユーリくんが無理矢理祥くんと公子サマの間に収まることになった(ホントはいけないんですけど!)――ワケで、まぁ次善の策です。
祥くん、そんな露骨に嫌そうな顔しないで!狭いのはわかるけど、ちょっとの間だから我慢してください!!
あと、こんな時に限ってお巡りさん立ってませんように……南無南無。
そんなこんなで公子サマの車が停めてあるゲートボール場までやってきた私たち。
幸いなことに――いつものとおりと言えばそうなんですけど――途中お巡りさんに止められることもなく到着です。
田圃に囲まれたこのゲートボール場の駐車場はかなり広い――なんてったって、来る人皆車ですから!
そんな駐車場に只今で~んと停まっているのが――ああ、やっぱり昨日の大きな黒塗り車でした。
車内で待っていた運転手さんが、こちらを見て降りてこられるのが見えます。
目立つことこの上ない車から少し離れて自分たちの車を停める祥くんと私。
……コワくてあんまり近くに停めたくありません。
お見送りのために車を降りたものの、公子サマたちの車を直視するのもはばかられ思わず遠くを見渡せば、田圃数枚を隔てたところ――100mほど向こう――に建っている3階建ての農協の建物が目に入る。
そう言えば今日は平日だから、慶くんや美弥ちゃんいるんだろうなぁ……なんて頭に浮かんでくる。……まさか、向こうから今こっちを見てるなんてこと…無いです…よね…?
見られていた日には電話ないしは本人が自宅に押し寄せ事情をあれこれ聞かれること間違い無しです。農協の中からもですが、今更ながら自宅のご近所さんに公子サマご一行が見られてないことを切に願います。
――と、脳内で頭を抱えていると。
『~~~~~~~~~~~~~~~~』
「送っていただいてありがとうございました」
振り返ると、すぐ後ろに公子サマが立ってらっしゃいました。
やはりと申しましょうか‘公子サマの逆襲’までたどり着けませんでした(orz)
しかし、ポジションにはつきましたので、次回こそは公子サマやってくださることでしょう。………たぶん。(←殴