02話 フェア会場にて 2
『 』の中は日本語以外の言語です。ちゃんと英文とか入れられればカッコいいのでしょうが、いかんせん赤点すれすれでしたので……ご勘弁のほどほどを。
会場の入口の方から少しずつざわめきが近づいてくる。最初は気づかずお喋りしていた私たちも、そのざわめきが近づくにつれキャーという歓声も混じってくるとさすがに気になって会話が止んだ。
何だろうね?なんて三人で首を傾げつつもわざわざ立ち上がって確認しに行く気も起きず、かといってお喋りも中断してしまったので、ピッチャーに残っているローズウォーターをコップにつごうかとバックヤード側のテーブルに手を伸ばしたところ。
綾ちゃんと恭子さんが「ぽか〜ん」と口をあけて私の後ろ――通路側を見ていた。
わ〜、こういうのを「ぽか〜ん」ていうんだ〜。なんて感心して、思わずまじまじと見つめちゃいました。
少し間抜けに見えるかも、なんて思っちゃったのは二人には内緒ね。
でもさすがに「可愛い」系の綾ちゃんと「美人」系の恭子さん。ちょっとくらい間抜けて見えてもやっぱり可愛いしやっぱり美人。ちなみに私は「普通」系です。
・・・なんてぼおっとしちゃった私の耳に
『〜〜〜〜』
柔らかな声が届いてハッと引き戻された。
振り返ると、商品を置いてあるテーブルの向こうから淡い金の髪に縁取られた美形サマがにっこり微笑んで立ってらっしゃった。
う、わー。
綾ちゃんと恭子さんの「ぽか〜ん」の原因ってこれですかー。
思わず私も「ぽか〜ん」の仲間入りしてしまいました。
身長は優に185cm越えていると思います(160cmの私がけっこう角度をつけて見上げちゃうので)。彫りの深さとすっと通った鼻筋は明らかに西洋人の顔立ちなのに、どこか東洋人っぽさも滲んでいるかな。紺のスーツを着て立っている姿に、どこかキラキラしいもの(オーラっていうの?)を感じているのは、きっと私だけではないはず。
リアル王子サマだー。
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「驚かせたみたいで申し訳ありません。」
柔らかなテナーに続いて耳に飛び込んできたボーイ・ソプラノの日本語に「ぽか〜ん」から引き戻されました。
ボーイ・ソプラノの主を見ると、金髪美形サマの左に黒いスーツを身につけた12〜13歳くらいの少年が。こちらは日本人と同じ黒髪に黒目。日本人なのかな?でもちょっと深い顔立ちで、ハーフっぽい。
やっぱり整った顔立ちをしているけれど、なんか無表情でもったいないなって思ってしまう。
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
金髪美形さんが何か――英語じゃないと思う――を喋ると黒髪の少年が日本語で話す。
「おくつろぎのところをお邪魔してしまったようですね。」
通訳さんなのかな。まだ小さいのに偉いね。
つい、にっこりしちゃいました。
「うぉっほん!」
今度は咳払いで引き戻されました。
咳払いの主は金髪美形サマの右側に立ってた方。
こちらは白に近い灰色の髪をぴったり後ろになでつけて、きれいに整えた髭を蓄えた、50代後半の男性で。
きゃ〜、なんかもう、いかにも「執事さん」ていう格好の人。着ているスーツもビジネススーツとは違ってて、テレビで見た執事服そっくり!もし名前が「セバスチャン」だったらどうしよう?(いえ、別にだからどうというわけでもないんですけど。)
『------』
仮称・執事さんが英語で喋っているのはわかるんだけど、流暢すぎて聞き取れません。ひ〜ん。英語って辞書を引きながら読むのと書くのは(単語を並べるだけだけど)何とかなるのだけれど、聞き取るのと話すのはさっぱりなのです。
ついでに言うと、漢方への興味があったので第二外国語は中国語や韓国語でした。まぁ、日常会話も微妙な程度だけれど。
冷や汗をたらす私に、またも小さな通訳君が日本語に変換してくれる。
「お嬢さん、こちらのお方はクロウシェン公国の第三公子、クラウス・シェルツェン・フォン・クロウシェン様です。」
王子サマじゃなくてコーシサマ・・・
講師?公使?
とっさに字が浮かばなくて(ボケたわけじゃありません)首を傾げる私に
「貴族の‘公子’です」
通訳の少年がぼそっと教えてくれた。
へぇー・・・って。
えええええええぇぇぇーーー!!
慌てて正面プラス仰角に顔を向けると、金髪美形サマもとい公子サマはにっこりとオーラ全開の微笑みをくださいました。
ううっ、眩しいです。
人物の容姿の描写が難しいです……。
主人公はぱっと見は「普通」ですが、「よく見るとけっこう可愛い」のだと思います。
フェア会場はあと1~2話で終わる予定です。