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荷物を届ける

作者: WAIai
掲載日:2026/08/28

今日は朝から天気が良くないと思っていたら、にわか雨が降ってきた。

小田はワイバーを動かしながら、荷物を届ける家を目指す。

小田は宅急便の従業員であり、これから行く家はたまに荷物を届けることがあった。

初めての客ではないので、あまり緊張しないでいると、雨が止まり、膨らんだ綿のような黒い雲が少しどけられる。

光が差し込み、小田は浮かんできた虹に、見惚れる。

ーいいことかもあるかも。

虹を見つつ、運転していくと、目的の家に着いた。

降りようとすると、黒猫がのっしのっしと、ゆったりした足取りで歩いていく。

ー何か貫禄があるな。

じっと眺め続けても、黒猫はどこ吹く風で、全然怖がっていない。

小田は30代前半だが、これでも強面として見られることが多いのだが、猫には関係ないようだった。

ー海外だと、黒猫に会うと幸運なんだよな。

そう思いつつ、小田は車から荷物を取り出す。

1つは衣類の会社で、もう1つは食品のようだった。

「よいしょ」

2つ持っても軽いもので、車のドアを閉めると、小田は家の階段をのぼる。

それからチャイムを押すと、インターフォンで、「はい」と声がする。

「小田急便です。荷物を届けに来ました」

「ちょっと待ってください」

そう言うと、中からバタバタと音がする。

こちらにやって来る足音が聞こえてきて、「どうぞ」と言われる。

「失礼します」

小田の言葉が少し驚いたものになったのは、出て来たのが高校生くらいの女の子だったからである。

初めて見る顔に、小田は見惚れる。

若い肌に、オシャレな格好。

学校でも、もてるんじゃないだろうかと思い、頬を赤く染める。

ーこれがいいことか。

なるほど思い、そういえば今日は土曜日だったなと頭を巡らせ、何故女の子が出て来たのが推測する。

「ハンコですよね?」

オルゴールのような美しい声に、小田は押され気味になり、「はい」と小さく答える。

いかん、いかん、しっかりしろと鼓舞すると、平然を装う。

「はい、こことここにお願いします」

荷物を玄関におろし、指さすと、女の子は言われたとおりにハンコを押してくる。

すれ違いさまにふわりといい香りがし、小田はまたつられそうになり、慌てて自制する、

「ありがとうございます。またのご利用をお願いいたします」

頭を深く下げると、女の子が「はい」としっかりした声で答えてくる。

ー本当はお近づきになりたいんだけどな。

仕事上、色んな人間と会うが、女の子は丁寧だった。

小田は惜しむように玄関から出ると、中から「宅急便屋さんが来たよ!!」と聞こえてくる。

どうやら元気な子らしい。

「また会いたいな」

ぼそりと呟くと、小田は運転席に回ろうとし、黒猫が待っているのに気づく。

「お前、どこの家の猫だ?」

つい話しかけてしまったが、黒猫はふいっと顔をそらすと、毛づくろいを始める。

おい、道路の真ん中でやるなと注意しようかと思っていると、女の子が追いかけてくる。

「宅急便屋さん!!」

「え…。な、何でしょうか?」

「その、あの、失礼なんですけど…」

女の子は言いにくそうに、口を開く。

「もう1つ荷物がありませんか?」

「え? もう1つ…? どうして」

「その、注文したものが届くと、メールがきたので、もしかしたらと思って」

「ちょっと待ってくださいね」

小田は不思議に思いつつ、車を開ける。

もう1つ荷物なんてあったっけと思いながらも、女の子とまた話せて嬉しかった。

早速、荷物を探してみると、女の子が心配そうに手を合わせる。

「えっと…ないですね。もしかしたら明日かもしれません」

「そうですか…。申し訳ありません。邪魔してしまって」

「いいんですよ。何でも言ってください」

年下相手だが、敬語を使うのは客だからで、今がチャンスだが、やめておくことにした。

ー本当は連絡先とか知りたいんだけど…。

客を相手にするわけにもいかず、車を閉じると、少女が言ってくる。

「気をつけてください。まだまだ暑いので」

「はい、ありがとうございます」

「どういたしまして」

女の子は笑顔を浮かべると、彼女を包み込むオーラが黄金色となった。

ああ、いい子だと小田は目を細めると、またこの家に来ようと決める。

「じゃあ、俺はこれで」

「はい、さようなら」

小田は車に乗り込むと、黒猫が女の子に近づくのが見えた。

顔見知りなのか、女の子が猫を撫で始める。

くそ、いいなと思いつつ、小田はエンジンをかける。

1度あることは2度とあると信じ、次の配達先へ向かったのだった。


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