孤独
なぜか気を失っていた俺は目を覚ますと、ジジイの膝枕の上にいた。モモ毛がところどころ白い⋯⋯
「勇者よ、目を覚ましたか」
「ジジイ! 俺はいったい⋯⋯」
思い出せない。
「やはり覚えとらんか」
「なにがあったんだ⋯⋯?」
「お前は数時間前、シン・ドラゴンが来ているというのに自分だけ『眠い! 寝る! おやちゅみ!』とか言って寝たんじゃ」
「そうだった。ごめん、めっちゃ眠くて」
「そのせいでワシがひとりで倒す羽目になったんじゃ」
「ジジイ、強いんだね」
「まあの。そいじゃ、起きたことじゃし、魔王殺しにゆくぞ」
「それなんだけどさ」
「どうした?」
「魔王って良い奴なんだよな?」
「まあの」
「なのに『魔王は倒すもの』とかいう固定観念にとらわれて、今殺そうとしてる⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「良い魔王は倒さなくてもいいんじゃないか? 確かにうどん屋はうどんのお店だけど、ネギトロ丼を食べる人だっているし、ゲーム屋でレジ横のぷっちょだけ買う人もいるし、掃除機で肩叩きする人もいるかもしれない。魔王だっていうだけで倒すなんて価値観は、古いんじゃないかな? 変化せぬものに未来はないって、誰の言葉だったかな? もしかして忘れちゃった? さっき自分で言ったことも忘れちゃうなんて、やっぱり歳のせいなのかな? ちゃんと自分の言ったことに責任持とうねおじいチャン。ね?」
「確かにの⋯⋯ワシが間違っておった⋯⋯けど、後半の煽りは何なの? なんであんなに言うの?」
「あれぐらい言わんと分からんかなと思って」
「すき家で牛たまかけ朝食を奢ってビデオデッキの処理代肩代わりしてガリ太郎に殺されかけてるのを助けてあげてスヤスヤ寝てる間にシン・ドラゴンも倒しといてあげたのに、なんであんなに言うの?」
「⋯⋯ごめんぴ」
「魔王を倒す目的が無くなった今、ワシがお前をどうするのか、気にならんのかの」
「どうするの?」
「ここは殺人に躊躇のない人々の住む世界なのじゃ⋯⋯」
「いやどうするのか聞いてるのに関係ない話するのやめろよ」
「関係なくない!」
「?」
「お前を殺すんじゃあ!!!!!!!!」
「えぇなんで!?!?」
「出でよ! ペニードラゴン!」
「くそー! じゃあ俺もだ! 出でよ、ヘルカイザーデスブラックデストロイハイパーアルティメットゴッドデビルペニードラゴン!」
「フン、そんなデタラメな名前⋯⋯はっ!」
ジジイは何かに気付いたような顔で空を見上げた。ぽつぽつと雨が降っている。
「パンティー干してるのにィイ!!!」
そう言ってどこかへ走っていった。
――独りだ。
空を見る。
ああ⋯⋯
俺は、孤独だ。




