大量の死体
『シュッ』
という音が聞こえた時には、すでにジジイの首が飛んでいた。
森に入った瞬間にこんな⋯⋯
周りを見渡すも、誰もいない。
「よぉ」
後ろからの声に振り返る。
「勇者くん、これな〜んだ?」
その男はそう言いながらジジイの生首を見せてきた。
「は? それってクイズ? ジジイの生首以外何に見えるっての? 俺のことバカだと思ってんの? バカにしてんの? は? バカにしてんじゃねーよクソが!」
「めちゃくちゃ怒ってんじゃん」
「当たり前だろ。俺は他人のことおちょくる奴が1番嫌いなんだよ」
「仲間が殺されたことは怒ってないの?」
「怒ってないよ」
「えっ」
「なに?」
「仲間なんだろ?」
「そうだけど?」
「朝定奢ってくれた仲間が殺されたんだぞ?」
「なんで知ってんだよ」
「こっそり見てたから」
「やば」
「敵としてね? 覗きとかじゃなくて、偵察的な感じね?」
「ジジイの食べ方どう思った?」
「え? 普通じゃね?」
「マジで?」
「勇者くんの方が変だったけどな⋯⋯なんかモグモグしててキモかった」
「マジ!?」
こっちの世界ではあの食べ方が普通だっていうのか? キモい世界と覚悟はしてたけど、ここまでキモいのか⋯⋯
「んでジジイ殺したけど怒んないの?」
「怒んないよ」
「え? なんで? 怖いんだけど、なんで?」
「まぁ苦しむ間もなく死んだっぽいし、混み具合からして俺が元いた世界に行くかまたこっちに戻ってくるかだと思うから」
「は? 何言ってんのお前」
「ほかの世界満車らしいから」
「マジで何?」
「いや、まぁ、俺もそんな知らんけど」
「大丈夫? 本当に勇者?」
「一応勇者らしいです。なんか神様に、あっ間違えた、神に言われたんで」
「神様じゃダメなの? 呼び捨てにこだわってんの怖いんだけど」
「なんか神様はずっと風呂でサボってるらしいから」
「クスリやってる?」
「え? パブロンは飲んでるけど⋯⋯」
「今回の勇者はちょっとおかしいみたいだな」
「今回の勇者? 他にもいるの?」
「ああ居たさ、全部俺が殺したがな。お前でめでたく1万人目だ!」
「殺しすぎだろ。あと『1万人目だ!』のところで飛びかかってこいよ」
「なんなのお前、怖⋯⋯グフ!?」
男の胸から刃物のようなものが出てきた。というか、後ろから刺された?
「お前は⋯⋯さっき殺したジジイ!? なぜ生きている⋯⋯」
マジで? 後ろにジジイいるの?
「神というのに転生させられたんじゃが、全く同じ場所に同じ姿で転生したようじゃ」
「キモい世界toキモい世界だ」
「キモい世界⋯⋯? ここのことをそう呼んでいるのか⋯⋯? ぐはっ⋯⋯ではお前の世界はなんなんだ⋯⋯」
「普通の世界、かな」
「傲慢すぎんか⋯⋯?」
「いや、神がそう言ってたから。俺が勝手にキモいキモい言ってるわけじゃないからね」
「さっきはよくも殺してくれたの。お返しじゃ、ふん!」
ジジイはそのまま刃物を振り下ろした。男の身体は真っ二つおぇぉろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ
おごおっ
おげぇろれろれろれろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろぺっぺ!
ビックリした、俺ってグロ死体見るとゲボ出るんだ。そう考えるとこいつの斬首は綺麗だったんだな。げぴょっ、おぅっ、ああ⋯⋯。すき家全部出しちゃったよ⋯⋯
「さぁ、悪党も死んだことじゃし、先へ進もうかの」
すごいなジジイ。自分の死体が転がってるのにそのまま行くんだ。
「どうした勇者、はよこっちに⋯⋯グフ!」
ジジイの胸から血だらけの手が出てきた。その手は心臓を掴んでいるようだった。
「き⋯⋯さま⋯⋯なぜ⋯⋯」
「ククク、お前と同じく転生したのさ。同世界転生ってやつだな」
さっきも思ったけどこれ転生じゃなくて復活だと思うんだよな。死体はあるけど。
「ぐ⋯⋯無念⋯⋯」
ジジイはその場に倒れた。
「さぁ勇者、思う存分殺し合おうぜ!」
「いや⋯⋯」
「ん? どうした?」
「うしろ」
「後ろ? ぐはっ!」
男はまた刺された。後ろにはもちろんジジイ。こりゃ俺がいた世界も満車っぽいな。
「これでよし。勇者よ、今度こそ先へ進もうぞグフっ!」
これ、どっかの世界が空車にならない限り終わらない感じ?
『っス』
脳内にあの神の声が響いた。いたのね。見てたのね。
ていうか、『っス』て。チャラめの後輩かよ。
『チャウ』
もしかしてこの世に干渉する時はあんまり喋れない感じ?
『っス(笑)っス(笑)』
チャラめの後輩だ。
「死ねー!」
「ぐはー!」
「死ねー!」
「ぐはー!」
「死ねー!」
「ぐはー!」
いつまで続くんだこれ。
「おらー!」
「ぐっ」
「死ねオラー!」
「がふっ!」
「うおー!」
「がっ!」
周り死体だらけなんですけど⋯⋯
「うぃっ」
「うっ」
「ツィっ」
「あいっ」
「オィっ」
「うぉ」
なんか軽くなってきてない? 作業みたいになってるよね? 餅つきの掛け声?
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
ついに喋らなくなった。黙々と順番に刺しあってる。
埒が明かないので彼らを置いて次に行くことにした。次があるのか分かんないけど。




