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女湯の暖簾をくぐると、そこにはとんでもない大きさの浴場が広がっており、めちゃくちゃ手前に人間サイズのカブトムシ(♀)がいた。そして、そのカブトムシには包丁が刺さっていた⋯⋯
「なにこれ」
「神様です」
「女の子のお風呂覗くとか言ってたじゃないですか」
「女の子ですよ」
「いやまあ、見れば分かるんですけど⋯⋯カブトムシじゃないですか」
「はい」
「カブトムシのメスって虫の中でもメスの中でも最もワクワクしないんですよ」
「なんてこと言うんだ。本人聞いてるのに」
「ほんとだ、死んだフリだったね」
「神様、生きてるの分かってますから、はやく立ってください」
「チッ⋯⋯」
神様は舌打ちをすると、1番尻側の2本の足で立ち上がり、図鑑に載ってるアングルになった。向き合うなら裏側になると思ってたから助かった。あんなキモいの見たくないからな。
「なにやってんですか」
「死んだフリしてサボってただけだよ」
「にしても長すぎますよ」
「心配して見に来るかなと思って待ってたら9億年経ってたんだよ」
「すいません」
「で、最近どう?」
「何がですか?」
普通に上司と部下みたいな感じなんだね。パシらせてるからタメ口使うのかと思ってた。
「何がって、いつものアレだよ」
「いつものアレとは⋯⋯」
久しぶり過ぎて忘れてるのか? でもトーク履歴見れば近いところにあるはずだよな?
「君、よく人間操って遊んでたじゃん」
え?
「ちょっと神様! ダメですよ!」
「え? なんで?」
「ダメなものはダメですよ! おバカ!」ゴチン
神が神様を殴った。
「痛た!!!!!!!!」
普通に神の拳が負けた。カブトムシだもんね。そりゃ負けるわ。
って解説してる場合じゃなくね!?
「どういうことだよ! あんたが俺を操ってたっていうのかよ!」
「いう」
「いうのか⋯⋯」
マジかよ⋯⋯味方だと思ってたのに。
でも、そう考えると辻褄が合うっちゃ合う。合うよな? 今までの展開全部覚えてるわけじゃないから自信ないけど、合うよな?
そもそも人間にあんなこと出来るわけないし、神が俺のことにだけ異様に詳しいのもおかしかったんだ。全人類見てたんだとしたら俺にだけ構いすぎだし、知りすぎだもんな。
とはいえ、今はもう自由だ。それに転生だってさせてもらえる。捨てる神あれば拾う神あり。操る神あれば転生⋯⋯うん、上手いこと言おうとするのはやめておこう。
「許すから、次の転生先へ送っておくれよ」
「めんどくせー」
「えっ」
「あなたの面倒見るの飽きちゃいました」
「そんな⋯⋯」
「なので悪いけど地獄に行ってください」
「なんで!? 俺なんも悪いことしてないのに! あんたに操られてただけじゃないか!」
「じゃあ天国行きますか?」
「えっ行きます、いいんすか?」
「いいっすよ」
「マジか⋯⋯」
「いてらー」




