(^ω^)
あれから、幾許かの時が過ぎた。
森の深奥は変わらぬ闇と湿気に満ちていた。土は泥濘み、靴底が粘つく音を立てる。雨は止んだものの、木々の葉から滴る水が首筋を伝い、肌を震わせる。
名を持たぬというだけで、追い払われた。
世間は冷たく、容赦ない。
しかし、思い返せば俺はこれまで「俺」としか名乗らずに生きてきた。かつての家族や友たちも、俺を「お前」や「おい」と呼んでいた。
此れに違和感を抱かなかったことこそが、俺が操り人形だったことの証左にほかならないのだと、思い⋯⋯俺は⋯⋯
はぁ。
胸に虚無が広がる。
腹が減り、喉が渇き、冷えが骨まで染みる。疲れで全身が痛み、眠気が誘う。
だが、このまま眠りに落ちれば、死が訪れるやもしれぬ。
木の根元にしゃがみ、膝を抱え込んでいると、再び声が響いた。
「オイ」
その男はいつの間にか目の前に立っていた。驚いて顔を上げると、そこには(^ω^)←完全にこれと同じ顔があった。
( ^ω^)オイゆーてんねんけど
返事をする気力もなかった。
( ^ω^)おいテメェ、オレ様のこと無視する気か?
「すまない⋯⋯力が出ないんだ」
絞り出した声は、自分でも驚くほど弱々しいものだった。
( ^ω^)そか! じゃあな!
男は去っていった。
なんだったんだ。
あんな顔の人間が存在するなんて⋯⋯




