EP3 プレハブ
いやー宇宙開発か……。まさかこっちの世界でもやることになるとは……。まあ、命がかかっているので、真剣にやりますか。
まずは、現在の状況を確認しに行くか。
黒ずくめの男に、宇宙開発の研究をしている施設に行きたいと伝える。
「御意、すぐに準備いたします。」
「ああ、よろしく頼んだ。」
さてと、じゃあ行きますか、この世界でも宙を目指して。
自分の考えにうぬぼれていると黒ずくめの男たちが、
「天羽様、お車の準備ができました。」
「わかった、すぐ行く。」
宇宙センターに、移動する流れになった、いや移動することになったので、車に乗り込む。
未舗装路に1時間程度揺られ、ついたのは、何の変哲のないプレハブ小屋と、後ろにある巨大なビル。巨大なビルはあれなんなんだろうか。
もしかして、このプレハブ小屋か施設?だとしたら粗末すぎだろ。ふつうもうちょっと事務所っぽい建物に本部置かないか。
「設立されてから数年しかたっていないので、まだ仮設置なんですよ、1回ロケットの弾道飛行に成功したらいいって言われたんですけど……。」
そうか、なら仕方がない。それにしても早く、正式な建物を建ててほしいものだ。いつ、本当の事務所が完成するか聞くと、明日と返ってきた。いや、今日でこの施設終わりだったんかい。
俺がつけばいいポストはどこなんだ?
そうだ、今組織の名前をまだ聞いていなかった。
「この組織の名前は、UASAです。」
今のところ、UASAの人員は10名、俺含め11名だ。
人員は少ないがどうせ、数年後には、数千人規模にはなっているだろう。その時にはもう有人宇宙飛行をしているころだろうか。
いまのUANAの実力で作れるロケットは、2段式の固体燃料ロケット。しかも結構大型のやつ。しかし慣性誘導だ。最高到達点は、1728キロメートル。その後はすごい速度で海面に激突。王都から、100キロメートルほど離れあ地点に落下したのにもかかわらず、すごい音が王都で観測されたそうだ。まあ、皆さんお分かりの通り弾道飛行だ。
まずは軌道飛行をしなければ……。まあ、頑張ろう。
ということで、まずはUANAの皆さんに挨拶をしなければ。
技術者の、マーキュリー・ブラウン氏、打ち上げ単とのサン・ブラウン氏。あと雑用の方が5人と、事務仕事担当が将来のことを見越して、3人ほどいる。
ちなみにマーキュリー氏とサン氏は夫婦だそうだ。
ゴーンゴーン
遠くから教会の鐘の音が聞こえる。ブラウン夫妻曰く教会の鐘の音が聞こえたら定時の合図らしい。ここはホワイトでいいな。まあ、衛星打ち上げの時はめっちゃブラックになるが。それを秘密にしておかないとこのホワイトっぷりに慣れた人間は離れてしまう。
「今日は短い時間だったがありがとう。」
といい、現場を後にする。車に乗り込み、明日のことを想像する。
車で連れていかれたのはただの一軒家。中に入ると日本人と思われる人が数人。
あれ、なんか見覚えのあるやつが一人いるな。やっぱりだ。大漆じゃないか。
大漆は
高校時代の同級生で、日本で医師として勤務していたらしい。
いやとんでもないエリートだな大漆。本当にすごいやつが同級生にいる。
「おお、天羽。お前もこっち側に来たか。まあ、こっちに来るのはしょうがない。で、王からの命令は何だ?」
「3年以内に、一種の動物を宇宙に送り出せだってよ。」
「これはまた難しいものを押し付けられたな。」
「そういやさ、あの王まだ、子供だけど摂政はつけないのか?」
「実はね、ついてるんだ。ここだけの話なんだけど。月に魔力が超絶あって、それを各国が血眼になって取り合ってる状態なの今。」
「あっ、なんか、俺が宇宙開発しなきゃ処刑される理由わかったわ。」
「宇宙関連の話……。あっ。私実は、宇宙飛行士選抜試験、最終選考まで残ってたのよね。そこで落ちちゃったけれど、まだ、宇宙飛行士への夢をあきらめきれてないの。」
「よかったら、UANA入る?」
「是非!入れてくれるのかい?」
もちろん!大歓迎さ。人員は増えれば増えるだけいいからね。
しかも、宇宙飛行士になっている実績で結構上の方にいる職業の医師が入ってくれるだけでも、すごいありがたい。
UKAいや、この世界で初めての宇宙飛行士は誰か決まったな。
日本では宇宙飛行士になれなかった、女が、異世界で宇宙飛行士になる。こんなアツイドラマほかにあるだろうか。いや、ない。
たった今、その物語が動き出したばかりなのだから。




